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澪「恐怖、ヤッテヤルデス」#後編 【ホラー】


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澪「恐怖、ヤッテヤルデス」#前編
澪「恐怖、ヤッテヤルデス」#中編
澪「恐怖、ヤッテヤルデス」#後編




292 名前:ちくしょう:2010/09/16(木) 22:45:38.68 ID:jVx/fvqU0


― むぎ!


時は少しさかのぼって2階の廊下。

澪の崩壊は今まで頑張り続けていた紬にも大きな影響を与えていた。

思い切り突きつけられた友人の「死」は

今まで張り詰めていた紬の精神状態を一気にギリギリまで追い詰める。

止まらない涙。そして止まらない震え。

廊下をふらふらと進むムギは無意識のうちに見慣れた自分の教室のドアを開けて中に踏み入った。

そこで目にしたのは唯と憂の姿だった。

「唯ちゃん!憂ちゃん!」

紬は思わず2人に駆け寄った。

2人は仲睦まじく抱き合っていた。

眠っているのだろうか、全く紬に気づく様子はない。

その光景は射し込むうららかな光に照らし出されて、美しい光景に感じられてくる。



293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 22:46:15.47 ID:jVx/fvqU0

「仲よしっていいわね・・・」

紬も二人の横に並んで座ろうと屈みこむ。

地面に紬のお尻がついた瞬間だった。冷たい感触、そして全身に走る悪寒。

「あら?」

思わず床に触れると指先には赤黒い液体が付着していた。

太陽が雲に隠れたのか急に差し込む日は弱まり室内は薄暗くなる。

紬は唯と憂の方をもう一度見た。

そこには仲睦まじく抱き合って眠っている2人ではなく、

恐怖の果てに死という永遠の眠りについた2人がいた。

紬は思わず飛びのくように立ち上がる。

改めて見た2人の周りにはまるで絨毯のように赤黒い血溜りが広がっていた。

「いやああああああっ!唯ちゃん!憂ちゃん!」

紬の悲鳴が校内に響き渡った。



294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 22:46:55.47 ID:jVx/fvqU0

― あずさ!
 

紬が澪に出会った頃、完全に壊れた澪の姿に泣きそうになりながら梓は西側階段をゆっくりと下っていた。

西側の昇降口から一気に外へ脱出し、外部に異常を知らせた方がどこから襲いかかってくるかわからない

ヤッテヤルデスに怯えながら、電話機を捜すより遥かに安全かつ確実と踏んだのである。


梓は例えヤッテヤルデスが飛び掛ってこようとも避ける気概で臨んでいたが、

恐怖感は進むにつれて増大していった。



295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 22:47:47.86 ID:jVx/fvqU0

しかし1階に辿り付くと、渡り廊下の向こう、ちょうど出入り口辺りで何事かしている白い顔を捉えた。

ヤッテヤルデスだ!

梓は思わず階段脇にあったロッカーの中に駆け込んだ。

ヤッテヤルデスは気づかない、そんな感じの根拠のない自信が薄っすらとあった。

ロッカーの扉を鍵の部分を掴んで内側から閉める

使い古しの黄色いモップが数本ぶら下がるロッカーの中は非常に狭く、臭かった。

未知の暗闇を引き金に湧き上がった恐怖心で心臓はバクバクバクと鳴り、息が詰まりそうになる。

息を潜めひたすら待ち続けると、ヤッテヤルデスの足音は2階に進んでいって聞こえなくなった。

そして代わりに聞こえてきたのはサイレンの音だった。


梓がロッカーに飛び込んだ行動はどちらかと言えば直感的ではあった。

しかし今の梓にはヤッテヤルデスの思考が薄っすらながら予測できた気がしていた。

事実ヤッテヤルデスは階段を登って行き、脇にあったロッカーは見逃したのである。

しかし梓はため息をついてからそれよりも重大かつ恐ろしい事実に愕然とした。

2階にはまだぶっ壊れた澪先輩がいるのである。



296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 22:48:37.04 ID:jVx/fvqU0

― みお!


「りつ、今日のお昼は何食べようか・・・オムライスかな・・・?」

梓がいなくなり1人になっても相変わらず澪はもう物言わぬ律とのおしゃべりに夢中だった。

それは恐怖心や見殺しにした事への強い悔恨、そして律の死が一気に澪に押しかけた末の結果だった。

もはや澪の頭の中にヤッテヤルデスの事はなく、ただ、目の前の律と遊ぶ事だけを考えていた。

「タノシイ」

澪がその声に気づいて顔を上げると目の前にはヤッテヤルデスがいた。



297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 22:50:28.68 ID:jVx/fvqU0

澪にとってそれは単に律を自分の手から奪いに来た敵としてのみ感じられた。

「く、来るな!」

澪は慌てて立ち上がり、律をかばう様に背中へ隠して後ずさりして行く。

ヤッテヤルデスは澪の行動に不可解なものを感じつつ、その間合いを詰める。

「律は私のものだ!お前なんかにやんない!」

澪は叫びながら威嚇するように腕を振りつつ後ずさりしていく。



298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 22:51:01.60 ID:jVx/fvqU0

ヤッテヤルデスはそんな澪に飛び掛り、その鋭利な犬歯で一気に澪の頚を食いちぎった。

ちぎられた頚動脈からは赤い血がごぼごぼと噴き出し血溜りを作っていく。

やがて膝をついた澪の手からは律の頭が離れて静かに赤い床に転がる。

その直後、澪もまるで律と見つめ合うようにその横に静かに倒れこんだ。

ヤッテヤルデスはその光景をしばらく見つめた後、血の海を踏みしめながら再びどこかへ去っていった。



303 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 23:37:06.39 ID:jVx/fvqU0

― あずさ!


「み・・・澪センパイ・・・」

全力疾走で駆け上がった梓はそのまま血溜りの中に座り込んだ。

その横たわる澪と律。澪の頚にはぼっかりと裂け目が出来ていた。

どうすればいいのかわからない。梓はそれを最後にそのまま呆然とし、思考がストップした。


しばらくの間あまりのショックで停滞していた感覚の処理は急に回復し、

梓の耳にはいきなりサイレンの音が耳に流れ込んできた。

梓はそれをきっかけに血まみれのまま立ち上がると、ふらふらと窓の外を覗き込んだ。

広場にはパトカーが集結し、回転灯のリフレクターはきらきらと輝いている。

警察官があわただしく走り回る光景を梓はぼんやりと見つめる内、梓の思考は唐突に回復した。



304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 23:38:08.83 ID:jVx/fvqU0

警察・・・!?助かる!生き残れるかも知れない!

その事実が梓に再び活を入れる。

しかし、足元に倒れる澪と律を目にすると、

梓の不安定な精神状態に行方もわからない紬と唯、憂の存在が一気にのしかかった。

「探さなきゃ…」

それは一度は回復しかけた梓の思考を再び鈍らせ、

梓はうわ言のようにつぶやくと血溜まりを踏み越え、

夢遊病者のように唯の教室である3年2組へと向かっていった。



305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 23:40:07.89 ID:jVx/fvqU0

― むぎ!


目が覚めると、ムギは教室の血溜まりの中に倒れていた。

ゆっくりと起き上がると目の前には唯と憂の姿があった。

外からはサイレンの音や喧騒が聞こえてくる。

この失神というインターバルは限界だった紬にワンクッション与え、紬の思考を完全に回復させた。

「夢じゃなかった…」

紬は呟くと背中に冷たさと所々の生乾きのゴワゴワした感触を感じながら立ち上がる。

恐らく血の臭いがこの部屋には充満しているのだろうが、完全に匂いに慣れた今、何も感じることはなかった。

そして沸き上がってくるのはあの生物への憎悪だけになっていた。全ての悲しみは今だけ封印する。

そう紬は決め、気合を入れるように自分の頬を叩いた。



306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/16(木) 23:41:00.17 ID:jVx/fvqU0

ならばやることはただ一つ。ヤッテヤルデスの存在を世間に知らしめ、ヤッテヤルデスを追い詰め、葬り去る。

もう十分手遅れだという自覚はあった。

しかしこうなった今、紬は自身が果たせる責任がこれしかないと考えていた。

素早い脱出方法は何か、紬は改めて廊下側から死角になるよう廊下窓の真下に座り込み、それを考え始める。

当然ながら教室の窓から飛び降りるというのが真っ先に浮かぶ。

だが下手をすれば無意味な自殺になるかも知れない。

しかし廊下は昨日とは比べものにならないほど凶暴なヤッテヤルデスが闊歩し、

その目を掻い潜って脱出することは一種の賭けだった。

他に手段がないのか考えようとした時だった。

黒板側のドアがガチャリと開いた。

この瞬間紬は詰んだと悟った。

刺し違えるくらいしてやろうという覚悟を決め、

どういう悪あがきをしてやろうかと必死に考え始めた。

「あ…むぎせんぱい…」

しかしそのムギの気合に反して現れたのはスカートまで血まみれの梓だった。



309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 00:09:41.87 ID:IQ9Q2RK/0

「あ…梓ちゃん…」

紬は思わず立ち上がりそうになるが、はやる気持ちを押さえ、

ジャスチャーで梓に姿勢を低くさせ、ドアを閉めさせた。

「紬先輩…生きてたんですか…」

「梓ちゃんも…よかった…」

梓の精神状態はこれを契機に平静へ戻りつつあった。

「どうやって外に出ようかしら」

「もう警察が来てます。そのまま玄関からじゃ無理ですか?」

「とにかく生存を知らせたいわね…」

「電気点けるとか…」

「ダメよ。ここにいるのがヤッテヤルデスにもバレちゃうかも」

二人は頭を抱え込んだ。



310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 00:11:30.68 ID:IQ9Q2RK/0

― けいさつ!

話は梓がふらふらと歩いていた数分前に遡る。

校舎の向かいに建つ民家のベランダには

双眼鏡で遠距離監視を担った所轄の刑事課員が二人陣取っていた。

その警察官の双眼鏡は二階を歩く梓の姿をはっきりと捉え、

警察官は大慌てで隊内無線のハンドマイクを取った。


その一報は多重通信指揮車に伝えられ、

県警本部からようやく辿り着いた警備部長を筆頭に担当幹部達を沸かせた。

しかし県警は人質救出部隊を有しておらず、

4人しか在籍ぜず看板倒れしかけている特殊班と

人質救出対処要員として指定されてあった機動捜査隊員が組み込まれ、

臨時編成で人質救出部隊を編成することとなった。

装備は覆面パトカーに積みっぱなしの灰色の県警型防弾ヘルメット、突入型防弾衣、

耐刃グローブに肘と膝にパッドとを装備しただけの急ごしらえとはいえ、

警棒で撃退される生物相手ならば充分な能力を持ちうるだろうと判断した。

腰が引けるということは熟練された警察官でも有り得ない話ではない。

実際に訓練時は好成績をたたき出し、いざ実戦になると全く身動きが取れなくなる者は存在する。

人間は必ず潜在意識に恐怖心というものを持ち合わせており、

襲撃に立ち向かったさわ子や律、ムギは非常に勇敢だと言っても過言ではなかった。



313 名前:>>311 お?:2010/09/17(金) 00:54:47.36 ID:IQ9Q2RK/0


一階を徘徊していたヤッテヤルデスはガラス窓越しに慌しく動きまわる警察の動きを見て、

再び闖入者たちの襲撃が行われることを察知すると、

待ち伏せにてそれを迎え撃つべくヒョコヒョコと昇降口へ向かった。

前回の屈辱を晴らす事に燃えていたヤッテヤルデスは

己が敗北を喫した奇襲攻撃を選び、それに伴う準備を整えて救出部隊を待ち受けた。



ほとんど図面確認と異生物の容姿が人の頭そっくりであるという事実を確認するだけのブリーフィングが終わると

広場には12人の救出部隊員達が整列した。隊長を務めることになった機動捜査隊の班長が号令をかける。

「安全外せ!」

一斉に自動けん銃P230のセーフティを解除する。

それを確認した隊長はハンドマイクのプレストークを押しこみ最終確認を取った。

「救出イチ、準備完了」

『了解、受傷事故に注意し速やかに行動せよ!』

警備部長自らのお返事を受けると、隊長はハンドマイクを引っ掛けた。

「行くぞ!」

この号令一下、救出部隊は昇降口に入っていった。



315 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 00:55:42.43 ID:IQ9Q2RK/0


ヤッテヤルデスが息を潜めて陣取る中、救出部隊は遂に昇降口へ足を踏み入れた。

先鋒を担った機動捜査隊の巡査がドアを背にしたまま中に右足から入っていく。

その後ろで隊員達は中へ銃口を向ける。

いざ入ってみるとアイボリーの下駄箱が並ぶ昇降口は思ったよりも薄暗く感じられ、

下駄箱もその上に並べられた物も不気味に感じられた。

隊員達は構えの射撃即応体制を取ったまま、小刻みに全身で銃口を上下左右へ向けながら一歩一歩進んでいく。

ひとりの隊員が下駄箱上で蠢いたものに気づいたのは部隊が全員昇降口に足を踏み入れた時だった。

下駄箱上に並べられた段ボールやバケツが一斉に落下する。

真上から襲いかかってくるガラクタに混じってヤッテヤルデスも一緒に飛び降り、

ヤッテヤルデスはまず真下の隊員の頸をその髪腕にて挟み折った。

首の防護はさすがにされておらず、一撃で隊員がヤッテヤルデスの前に倒れる。



317 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 01:01:30.67 ID:IQ9Q2RK/0

救出部隊は頭上からの落下物と共にやってきたいきなりの洗礼に大混乱に陥った。

思い込みや油断は禁物とはいえ、

まさか昇降口から本格的な襲撃が起きるとは思っていなかった隊員達は右往左往する。

事前に遭遇した先発の地域課員達から情報を得た上でブリーフィングを行なってはいたものの、

隊員達が思い描いていた標的はもっと大きいものであり、

人の頭大の物体が縦横無尽に襲いかかってくるとは夢にも思ってはいなかった。

その隊員達の首を片っ端から髪腕で一気に左下に捻って屠っていく。

そして4人目の隊員の頚椎を叩き折った際、

ヤッテヤルデスはさすがにジャンプを繰り返せなくなり咄嗟に床へ着地した。

そこにようやく何人かのP230が火を噴いた。

その9ミリパラベラム弾はそれは凄まじい速度で避ける間もなくヤッテヤルデスの頬を貫いた。

初めて受けた攻撃。ヤッテヤルデスは今までとは別種の武器を持った敵でもあることを認識した。

今までの相手とは敏捷性も攻撃力も違う、

そう悟ったヤッテヤルデスは直接攻撃をやめ、ステップを踏むように後退を始める。

隊員達は追い打ちをかけようと更に中へと踏み込もうとするがそれを隊長は制した。


救出部隊はわずか5分弱で4名の殉職者を出して撤退し、結果的にヤッテヤルデスの勝利となった。

しかし、ヤッテヤルデスによるワンサイドゲームはこの瞬間、終焉を迎えたのである。



350 名前:ながら:2010/09/17(金) 11:08:46.64 ID:EhE1ifGx0

― あずさとむぎ!

教室で頭を抱えていた二人は立て続けに響いた銃声で慌てて床に伏せた。

「な、なんですか!?」

「じゅ、銃声よ!」

この時の二人は銃への恐怖感や流れ弾への恐怖など全く感じず、

逆に銃声が福音か何かのように聞こえ、二人は警察が突入したという事実に嬉しさを覚えていた。

もうすぐ助かる。そんな思いでいっぱいになった。

しかし、待ちわびる二人のもとに警察官が現れる様子は一向になく、外側の騒々しさのみが拡大していった。



351 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 11:10:30.36 ID:EhE1ifGx0

― けいさつ!


救出部隊の勇姿を固唾を飲んで見守っていた幹部たちは昇降口へ消えていって間もなくの発砲音に

多重通信指揮車のスモーク張りの窓へへばりついた。

外周ではジュラルミン盾片手に校舎の周りを固める警察官達が大慌てで身を低くして走りまわる。

警棒程度で撃退できる相手のはずが、拳銃使用にまで追い込まれた事態に幹部は大混乱に陥った。

『至急至急!救出イチよりゲンポン!救出イチ、村田、杉田、高島、片山が死亡!後退する!』

そこにほとんど絶叫に近い隊長の声が飛び込み、死亡というワードにいよいよ幹部たちは血色を失った。


ぞろぞろと後退してくる救出部隊を盾を構えた同僚たちが周りを取り囲むように固め、

正門前に待機した救急車へ運びこむと、サイレンを高らかに救急車が4台、桜高前を出発した。


幹部たちは早々と錯綜していた情報を根拠に

現地本部へノコノコと出て来るのをあと2時間遅らせればよかったと後悔しながら

それでものろい思考で前代未聞の重大事案だということをようやく理解しつつあった。


カラーコーンから防弾警備車の果てまで

全てかき集められるだけかき集めた県警機動隊が到着したのはそれから50分後のことで、

ガス漏れを口実に100メートル件の住人を極力追い払うべく、桜高の周辺に機動隊員による阻止線が張られた。



352 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 11:11:40.89 ID:EhE1ifGx0

― あずさとむぎ!

警察が失敗について責任のなすり合いを繰返しているころ

救出という一瞬見えた希望をあっさり裏切られた二人は限界に近づいていた。

時間の感覚は徐々に狂っていき、

ずっと壁にもたれまま息を殺して続ける圧迫は正常な思考を少しずつ削いで行く。

外でサイレンと怒号は飛び交っているものの、一向に二人の元へ助けが来る様子もない。

「もう四時半ですね」

梓はすっかり忘れていた壁掛け時計を見てから紬に話しかけた。

「ねぇ…梓ちゃん」

「…はい」



353 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 11:12:11.53 ID:EhE1ifGx0

「あれからどの位経ったのかしら…?」

「わかりません…」

梓がかすれた声で答えた。

二人は逃げ惑っていた間時計を気にする余裕などなく、今初めて時間というものを意識した。

しかしその意識の有無に関わらず、刻々と時間は冷たい床に座る梓と紬の行動力も減らしていた。

「もう…そこから飛び降りようか」

紬は呟いた。梓もそうすればいいのではないかと思った。

窓の外の空は大分秋らしく赤く染まってきていた。



354 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 11:14:48.59 ID:EhE1ifGx0

― ヤッテヤルデス


その頃、死屍累々の1階廊下を歩き回っていたヤッテヤルデスは

頬に受けた銃弾が自分に回復しがたいダメージを受けたことを知り、

初めて「恐怖」という感情が芽生えかけていた。

触れた頬には穴が空いている。

しかもスティックを刺された時と同じ感覚が全身に走ったことを感じ取っていた。

今までの攻撃はすべて殴打であり、

ヤッテヤルデスの強靭な表皮においてはそれらは深いダメージを与えていなかった。

初日にはまだ不完全だったその表皮へは律がスティックを突き立てることも出来たが、

今のヤッテヤルデスにとってヒッコリー材ごときは問題なくなっていた。

そんな所に現れたその武器。

ヤッテヤルデスの自信は新しく現れた敵によってゆっくりと揺らぎ始めていた。



355 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 11:16:28.77 ID:EhE1ifGx0

― じゅうろくじごじゅっぷん!


暗くなっていく空の中、二人はさっきから強烈な睡魔に襲われ始めていた。

連続した緊張状態を維持させる事は精神力をザクザクと削り、

もう今や積極的に動こうとする気力は二人から失せかけていた。

時計をみる気力もなく、ただ暗くなっていく教室で黙っている。

おまけに隅には憂と唯の姿があり、どうしても視界に入るそれが死への恐怖も倍増させていく。

それでも少しくらい眠っても…という思いと

眠ったまま死にたくはないという思いの狭間を二人は揺れながらも耐えていた。

梓と紬はお互いに身を寄せ合って冷たさを少しでも和らげつつ、

手を握り合いその感触で何とか気力を確保しようと必死だった。



358 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 11:18:34.45 ID:EhE1ifGx0

『クセノン、照射!』

暗くなっていく空の下、赤色回転灯の光は綺麗に映える。

そんな中指揮車のラウドスピーカーが叫ぶと、

並んだクセノン投光車によって校舎が白く浮き上がった。

その白い光は廊下にも一斉に射し込み、暗い廊下は昼間のように照らし出された。

『こちらは○○県警察です!これから救出部隊が進入します!生存者の皆さんもう少しです!』

指揮車のバスケットによじ登っていた機動隊員は

それに加えて気を利かせたつもりで突入のお知らせも付け足した。



359 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 11:21:16.45 ID:EhE1ifGx0


二人の朦朧とした意識は真っ白い光と飛び込んできた声で一気に鮮明となった。

紬と梓は思わず立ち上がって廊下を覗き込む。

窓の向こうにはクセノン投光器が立ち並び、こちらを照らしている。

続いて飛び込んだ救出という言葉でそのまま二人は抱き合った。


その頃、音楽室の窓から外を伺っていたヤッテヤルデスは

いきなり1000カンデラを誇るクセノン投光器の光をもろに受け、その視力を大幅に低下させた。

― 敵が再び来る、そう悟ったヤッテヤルデスは

そのまま転げるように窓枠から飛び降りると、大慌てで二階へと駆け下りた。



361 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 11:21:52.21 ID:EhE1ifGx0

短く響き渡るサイレンに正門前を塞ぐように停車したパトカーが後退すると、

茂みの影からは厳つい警察車両達が現れた。

明るい水色のカラーリングに反して特型警備車と呼ばれるこの車両は耐弾耐爆性能がある程度確保され、

銃座と銃眼も設置されてあり、警察向けの軽装甲車といっても過言ではない。

続いて後衛のようにガラスを穴の空いた防護板で覆った青色の常駐警備車が現れる。

両脇から集まってくる防弾盾を掲げた機動隊員を両側に伴って赤色回転灯を消し、

車幅灯のみでじわじわと進むそれらは非日常性を不気味に強調した。

広場中央の花壇前に警備車が停車し、車両後部にある観音扉が開くと、

黒ずくめの防弾装備に身を包んだ完全武装の銃器対策部隊員たちがアルミステップを踏みしめて降車した。

配備されたばかりの真新しい「高性能機関けん銃」ことMP5Jをその手に携えて、

それぞれ別れて校舎内に進入していった。



369 名前:さるってたんだよぅ:2010/09/17(金) 12:28:38.85 ID:EhE1ifGx0

― じゅうきたいさくぶたい!


『現本より各班、これより状況を開始する』

県警発足史上初の大規模オペレーションがこの通話で幕を開けた。

その通話と同時に再びクセノン投光車へは消灯指示が飛び、

一斉に投光車が消灯して校舎は再び暗闇に沈む。

その暗転した隙に降車していた制圧第一班が講堂渡り廊下入口に小走りで向かう。

施錠されていたドアのガラスはさっきの救出部隊の生き残りからなる支援班が

ガラスクラッシャーでたたき割り、手を突っ込んで鍵を解錠する。



370 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 12:30:48.04 ID:EhE1ifGx0

ドアを押し開けて廊下に侵入すると、それぞれは壁に張りついてフラッシュライトを消し、

それぞれ真新しいナイトビジョンゴーグルを暗順応し始めていた目に当てる。

班長が手で前進の合図を送ると、一斉には渡り廊下を進みだした。

グリップを握る手は汗ばみ、心臓の鼓動は早く、目は忙しくギロギロ左右を窺う。

―生きていてくれ。

そんな思いを抱きながら銃器対策部隊制圧第一班の隊員達は廊下を踏みしめていく。

僅かな距離の昇降口までに2分近くかけて進み、ようやく昇降口側より進入した制圧第二班と合流した。



372 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 12:34:14.10 ID:EhE1ifGx0

制圧第三班は図書館側より進入し、血溜まりの異臭の中を進んでいく。

先頭の隊員が慎重に角に張りつくと様子を伺う。

ナイトビジョンゴーグルの緑色の視界には何も映ってはいない。

廊下の奥には昇降口から入ってくる制圧二班の姿があった。

安全を確認した隊員は手で前進合図を送り、制圧第三班は二階への階段を登り始めた。

二階へ上がりきると、四人が一斉に左右に銃口を向ける。

緑色の視界には無人の廊下が映し出されていた。



だが次の瞬間理科室のステンドガラスは砕け散り、そこからヤッテヤルデスが飛びだしていた。

最初にヤッテヤルデスに遭遇したのは制圧第三班となり、

ヤッテヤルデスはそのまま目の前の隊員に組み付いた。



373 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 12:38:15.56 ID:EhE1ifGx0

「うわ!」

不意を突かれた隊員はそのままよろめいて壁にぶつかった。

だが隊員の装着していた新型ボディーアーマーは予想以上に固く、

襟が首を守ってヤッテヤルデスは頚動脈に歯を突き立てることすらままならない上、

今まで相手にしてきた教員や生徒達とは比べものにならない腕力で

振り払おうとしてくる隊員に苦戦を強いられた。

「この野郎おおおおっ!」

組み付かれた隊員は叫びながら邪魔になったMP5Jを放り落とし、

レッグホルスターからS&M3913を抜くとそのままヤッテヤルデスの頭に押し当てた。

逆に組み敷かれかけたヤッテヤルデスが離れようしたときにはもう遅く、

隊員がM3913の乾いた音と手に反動を感じ取り、床で空薬莢が転がる小さな音がした時には

ヤッテヤルデスは沈黙し、廊下の床に転がり落ちていた。



374 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 12:40:02.02 ID:EhE1ifGx0

「クソ!」

ようやく自由になった隊員は吐き捨てるようにヤッテヤルデスを一瞥した。

「おい大丈夫か?」

「あ…ああ…」

隊員は恐る恐る床に転がるヤッテヤルデスをコンバットブーツのつま先でつついてみる。

「なんだよ死んでるぜ」

「おい、油断するなよ」

その発言に根拠はなかった。

そもそもヤッテヤルデスの生死の判断法など隊員達には知るすべもなかった。

判断に使える情報は動くか動かないか、それだけであった。

班長はリップマイクで現本と連絡を取り始める

「ゲンポン、こちら制圧3。生物を制圧した」



376 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 12:45:41.77 ID:EhE1ifGx0

その声は多重通信指揮車に届き、指揮車内には一気に安堵の溜息が広がった。

カサカサに渇いていた喉にそれぞれ配られたペットボトル緑茶を流しこみ始める。

ようやく余裕が生まれた幹部たちにはもはや笑みすら浮かびはじめていた。

「ゲンポンより制圧3、了解した」

銃器対策部隊の隊長はマイクに返事を吹きこむと

大きなため息を付き、そのまま硬いシートに座り込んだ。

「岡部くん。ご苦労さん」

警備部長は隊長の苦労を労う意味と感謝を込めて肩を軽く叩いた。



378 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 12:48:35.26 ID:EhE1ifGx0

ヤッテヤルデスを制圧したという名誉を担った制圧第三班の隊員達も余裕が生まれ始めていた。

銃口はまだヤッテヤルデスに向けてはいたものの

班長は片手のMP5Jのセレクターレバーをセーフティに戻すべく親指を掛けた。

だがその瞬間、押し黙り、目を見開いて転がっていたヤッテヤルデスは飛び上がり班長の頭に組み付いた。

「うわっ!」

恐るべし膂力は不意を突かれた班長の頚椎をそのまま一発で後ろにへし折り、

崩れていく班長を踏み台に隊員に跳びつく。

油断してたところへの未知の生物による反撃でパニックになった隊員はMP5の引き金を引いた。

狂った銃口は白い漆喰壁やドアには弾痕が空き、さらに周りの同僚達をも撃ちぬいていった。


その銃声は外に響き渡り、油断しきっていた指揮車の幹部たちは

口にしていたペットボトル緑茶を軒並み吹き出すか気管に流し込んだ。



379 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 12:49:27.53 ID:EhE1ifGx0

『2階東側にて制圧3にアタックあり!全班急行せよ!』

隊内通信系は大混乱に陥り、怒号が飛び交う。

西側階段前ホールに展開していた制圧第二班と第一班は中央階段と西側階段に分かれて救援に走る。

校内の美しく磨きあげられた廊下には出動靴の足音が響き渡り、白い足跡が増えていく。


硝煙の匂いが立ち込める中、中央階段下に到着した制圧第一班の班長は

発砲を最低限などという悠長なことをしていれば確実に殺られると確信し、

セレクターを三点に切り替える。

踊り場まで前進し、一旦タイミングを伺おうと壁に張り付いて覗き込もうとした隊員は我が目を疑った。

廊下に倒れこむ制圧第三班。

『制圧3がやられてます!』

押し殺すように隊員がリップマイクに吹き込む。隊員はベストからフラッシュバンを取り出していた。



381 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 12:51:31.19 ID:EhE1ifGx0

「何が何だかわからない」に陥れて

混乱させ怯ませるという状況を利用するのはヤッテヤルデスだけではなかった。


ヤッテヤルデスがその外見と戦法で相手をそう翻弄するならば、

警察は「フラッシュバン」などと呼称される閃光弾にその役割を求めた。

ヤッテヤルデスが振り返ったときには、ピンを抜かれたフラッシュバンが廊下の床に転がっていた。

間もなくその雷管が破裂してオレンジの凄まじい閃光と爆発音を立てて炸裂する。

視界が晴れた瞬間、そこに転がり込んだ4人は一斉にフルバーストモードに切り替えたMP5Jを構えた。

廊下の真ん中で驚愕したように立ち尽くしているであろうヤッテヤルデスを掃射すべく一斉に9ミリ弾を叩き込んだ。

連射音が響いてしっくい塗りの壁は砕け散り、磨きあげられた木の床は穴だらけになっていく。

弧を描いて空薬莢は宙を舞い、白い硝煙が立ち込める。



382 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 12:57:15.16 ID:EhE1ifGx0

しかし硝煙が晴れてくると、弾痕だらけになった廊下の中心にはヤッテヤルデスが立っていた。

何発かは確実に命中しているはずの敵は健在であり、その事態に驚きは隠せず、隊員達に恐怖が湧き上がる。

「!?」

思わず後ずさる隊員達。

そこへ9ミリ弾を浴びせかけられたとは思えぬような軽快なステップでヤルデスは襲いかかり、

白い壁や窓ガラスに鮮血が飛び散っていった。


『制圧1が襲撃された!各班2階へ向かえ!』

無線機ががなり立てる中、控えとして待機していた制圧第四班が校舎内に突入し、

西側階段下の踊り場で支援態勢を整えていた第一班隊員達は大慌てで2階に駆け上がっていく。

しかしヤッテヤルデスはそれを西側階段の頭上の手すりで既に待ち受け、隊員達を真上から殲滅しはじめた。



493 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 19:02:00.32 ID:nAsjYEeC0

― あずさとつむぎ!


息を潜め、じっと警察を待ち詫びる二人を驚かせたのはガラスの音だった。

日本警察が得意とするサイレントエントリーは梓と紬にその開始を悟らせなかった。

しかし、ヤッテヤルデスの襲撃でそれはあっさりと崩れた。

襲撃された隊員の怒号、そして紬達の鼓膜を揺さぶるように銃声が響き渡った。

すぐ近くでの銃声にさすがの二人も頭を抱えて床に伏せる。


やがて銃声が止み、ボソボソとした声が聞こえ始める。

「…た、助かるのかしら?」

「そ、そうみたいですね」

紬と梓が立ち上がり、廊下の方を伺おうと恐る恐るドアの方に向かった瞬間だった。

悲鳴と共に今度は激しい銃声が響き渡り、梓と紬は驚きのあまり今度は床に転げた。



494 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 19:02:55.46 ID:nAsjYEeC0

― じゅうきたいさくぶたい!


精神的な混乱は緊迫した現場で大きな影響を与える。

銃器対策部隊は制圧班を二班一気に喪った上に真上からの襲撃を受け、三個班を失いかけていた。

だが、制圧第二班が不意打ちの動揺で階段の踊り場までにも至れずに屠られ尽くされたところに、

後衛の制圧第四班が班長の号令以下果敢に突っ込んで乱戦が始まった。

隊員達は校舎が壊れようと構うまいとM3913を乱射し、

フラッシュバンを立て続けに炸裂させて閃光と轟音がホールに響き渡る。

続いて前回突入して壊滅した救出部隊の生き残りだった機動捜査隊員5人が

復讐を果すべくP230と中盾片手になだれ込み、いよいよ正面衝突となった。

ヤッテヤルデスは左右から躊躇うことなくなだれ込み集結した警察官達の一斉射撃を受けて

一気に階段まで押し込まれる。



495 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 19:04:18.66 ID:nAsjYEeC0

しっくい壁は32.ACP弾や9ミリパラベラム弾を受けて粉々に砕け、

床や手すり、ロッカーには弾痕ができ、ポスターはちぎれ飛んだ。

さすがに押されて後ずさっていくヤッテヤルデスは何発もの弾を顔面に一気に受けて、

その俊敏な動きを作り出す髪腕と髪足は何箇所も切り裂かれてヤッテヤルデスの膂力を蝕んだ。

警察官達は弾切れになるか、撤退を決め込んだヤッテヤルデスが

階段をよじ登って視界から消えることになるまで誰かが撃ち続けた。

『制圧4からゲンポン!生物は二階へ逃走!』

制圧第四班の班長はリップマイクで報告しながら

何人かの隊員がそのまま後を追いかけようとするのを制した。

今追撃すれば再びこちらは劣勢に転じる、そう踏んだのである。

だが、班長は一階を完全に制圧したという感触を得ていた。



496 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 19:04:51.06 ID:nAsjYEeC0

― むぎあず!


凄まじい銃撃音とガラスの音に怒号、しまいには爆発音。

あまりの騒ぎに紬と梓は床に張り付いたまま全く身動きが取れなかった。

だが、そんな二人の下に静寂は戻ってきた。

さらに再び投光器が一斉点灯し、廊下は白く照らし出された。

「あ…梓ちゃん…大丈夫?」

「は、はい…」

それをきっかけに恐る恐る顔を上げるて辺りを見回すが、教室の中には特に異変がなかった。

今度こそと中腰姿勢でドアを慎重に開ける。

見回した廊下は薄く硝煙の煙が残り、それは廊下にぼんやりとした白いフィルターを掛けて見せた。

「唯ちゃん…憂ちゃん…さよなら」

紬は名残惜しそうに振り返ると、そのままドアを閉めた。



497 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 19:05:36.59 ID:nAsjYEeC0


窓の外からは慌ただしい怒号が聞こえてくる。

しかし廊下にいる二人にはそれがどこか遠くの音に聞こえた。

そして床には澪や律の亡骸もそのままに、更に人が倒れている。

そこに二人はゆっくりと近づいていく。

その時、二人はヤッテヤルデスへの恐怖心が薄れつつあるのを感じていた。

感覚が麻痺してきたのかと紬は一瞬考えたがすぐにやめた。



498 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 19:06:36.38 ID:nAsjYEeC0

そこにはうつ伏せに警察官が倒れていた。

ヘルメットをかぶった物々しい姿に一瞬兵隊かと思ったものの、

背中にあるPOLICEと書かれたワッペンで警察官と解った。

紬にはどういう理由でこの警察官が倒れているのかは簡単にわかった。

そしてこの警察官はもう生きていないことも。

そばに転がった拳銃。警察官のものだろう。

ムギはそれを躊躇なく拾い上げた。

手のひらにはずっしりとした重みを感じ、

うっすら機械油のような匂いが鼻をくすぐった気がした。

「…ムギ先輩?」

「梓ちゃん…。頼みがあるの」

ムギが梓に背を向けたまま言った。



499 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 19:07:10.26 ID:nAsjYEeC0

「なんですか?」

「ここで別れましょう」

そこでようやくムギは梓は振り返った。

「い、嫌です!もう…もう…誰も…」

梓は予想外のムギの発言に動揺し、途中からその声はかすれた。

「お願いします…置いてかないで…」

梓が涙を浮かべる中、立ち上がった紬は梓の肩に手を置くと、その目を見据える。

「梓ちゃん。私は必ず戻ってくる」

「ムギ先輩―」



500 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 19:07:47.36 ID:nAsjYEeC0

梓が口を開きかけたとき、ムギと梓の目の前に再びヤッテヤルデスは現れた。

「梓ちゃん!」

紬は叫ぶやいなや、その銃口をヤッテヤルデスに向けていた。

それは全くもってヤッテヤルデスも想像だにしていない事態だった。

ヤッテヤルデスが最も今不得手とする武器を標的が手にしていたのである。

それは今まさにあの忌々しい武器でダメージを受けたヤッテヤルデスに躊躇いを覚えさせ、

梓が逃げる隙を与えた。

梓はそのまま転がるように中央階段を駆け下りていった。



504 名前:メイン不調でサブ機投入:2010/09/18(土) 20:00:07.35 ID:nAsjYEeC0


「あなたの相手は私!」

紬が今まで銃と無縁であったかといえば嘘であり、

父親が射撃場で的を撃ち抜く姿を小学生の時に確かに目にしていた。

その時のおぼろげな記憶だけを頼りに見慣れた部室への階段を駆け上がった。

紬は部室に飛び込むやいなやドアの真横に張り付き、ヤッテヤルデスが飛び込んでくるのを待ち受ける。

目の前に広がる思い出のいっぱいつまった部室はもう見る影もなく荒らされぐちゃぐちゃになっていた。

砕け散った水槽のガラスは紬の下で踏み砕かれてジャリジャリと鳴る。

次の瞬間、ヤッテヤルデスが転がり込んでくる。

そのまま器用に回転しつつムギの方に向きなおって立ち上がった。

安全装置の有無など全く考える余地もないまま、ムギは震える手で狙いをつける。



505 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 20:01:03.37 ID:nAsjYEeC0

そんなムギを嘲笑うかのようにヤッテヤルデスは声を上げた。

「ウテナイヨ!」

ヤッテヤルデスが喋ったことで紬の集中力は一瞬で途切れそうになる。

しかしその驚きより紬の執念が優っていた。

「憂ちゃんの分」

小さく呟くとムギは引き金を引いた。

乾いた音が響き、硝煙の匂いが立ち込める。

「ギギ!」

紬は問題なく弾が出て命中したことにまず驚いた。



506 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 20:01:43.03 ID:nAsjYEeC0

かたや完全に油断していたヤッテヤルデスも思わぬ反撃に目を剥いていた。

フラフラと髪腕を使ってトンちゃんの水槽が載っていた台によじ登る。

「澪ちゃんの分」

紬は再び引き金を引くが、今度は外れて後ろにあった窓ガラスを粉々にした。

ヤッテヤルデスは自分に迫る危険を感じ、机から割れた窓枠に飛び退く。

「…許さない」

再び引き金を引いて乾いた音が響き、漆喰の壁に穴を開ける。

足元では空薬莢が小さく金属の音を立てて落ちていた。



507 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 20:02:28.56 ID:nAsjYEeC0

「りっちゃんを返せ」

その気迫はヤッテヤルデスにとっても鬼気迫るものであり、

思わず気圧されてジリジリと後ずさった。

見たことはあっても銃の撃ち方を習ったわけではない。

だが、単純かつ徹底的に機能性を追求したものは

恐ろしいことに一度見ただけのムギにも容易に取り扱うことが出来るシンプルさを持ち合わせていた。

「唯ちゃんを返して!」

狙いを定めた紬の声に続いて再びパンという乾いた音が響く。今度はヤッテヤルデスの白い額に黒い穴を空けた。

その一発はヤッテヤルデスの何かを壊してその視界を一気に狭め、ヤッテヤルデスに大きな痛手を与えた。

そして脆弱で弱い標的に己が不死身でないことも悟らされた。

己の全てを揺らがされたヤッテヤルデスはまるで何が起きたかわからない、驚愕した表情でムギを見つめていた。

しかし、ようやく事態に気づいたのか、背を向けるとそのまま割れた窓から飛び出した。


「…あ…お、終わった…」

ムギは銃を落とすと、そのまま脱力したように床にへたり込んだ。



508 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 20:03:22.40 ID:nAsjYEeC0

― いっかい!


梓が階段を駆け下りたとき一階中央階段では管区機動隊員達がヤッテヤルデスを封じ込めるべく、

ジュラルミン製大盾と移動式の防弾盾を並べて階段にバリケードを構築しようとしていた。

「助けてください!」

その甲高い声で機動隊員達は一斉に見上げる。

そこには階段の踊り場から今まさにこちらへ向かってくる少女。

警戒中の機動隊員達が防弾盾を片手に、

まるでサインを求めるファンのごとく一斉にその少女目がけて集まった。



509 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 20:03:53.89 ID:nAsjYEeC0

― こうしゃしょうめん!


梓を防弾盾で囲い込んだ機動隊員達が外に飛び出したとき、いきなり銃声が響き渡った。

機動隊員達は大慌てで梓の上にも防弾盾を掲げてストップする。

「なんだ!?」

機動隊員や警察官達が右往左往する中、梓は防弾盾で見えない校舎の方を振り返った。

「…ムギ先輩」

立て続けに響いた銃声が止む。

警察官たちはハッとしたように揃って校舎を見上げた。

視線が集まる中、校舎の窓ガラスを破って破片と共に何かが飛び出して地面に転がり、

並んだ探索灯とキセノンランプは一斉にそれを照らし出した。

ヤッテヤルデスだった。



510 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 20:05:41.00 ID:nAsjYEeC0

「至急至急!防護7からゲンポン!外!出現!出現!」

その横でマイクをひっ掴み絶叫する警察官。

『撃て!止めろ!』

ラウドスピーカーの怒号で制服警察官がホルスターから一斉にけん銃を抜いて前進し、

梓を追って向かってくるヤッテヤルデスに引き金を引いた。

続いて後列の警察官はパトカーを盾代わりに一斉に発砲し

立て続けに銃声が響き渡り、白々とした硝煙が立ち込め始める。

続いてヘルメットを被った制服警察官達が両脇から挟みこむ形で防弾盾片手に一斉射撃を始める。

ヤッテヤルデスはその警官隊に跳びかかり、警察官のひとりがヤッテヤルデスの前に倒れた。

しかし倒れた警察官は特段負傷したわけでもなく再び立ち上がり、

逆に進んでいくヤッテヤルデスの後頭部に至近距離で発砲した。



512 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 20:15:19.01 ID:nAsjYEeC0

もうヤッテヤルデスからは既に最初の敏捷さはもう感じられなくなっていた。

だが、黙々と歩むことを止めず、

クセノン投光器の白い光りに照らされた凄惨な容姿からは更に鬼気迫るものが立ち込めていた。

幹部満載の多重通信指揮車は大慌てで校舎から離れ、

入れ替わりに滑り込んだ防弾警備車の三つの銃眼からは

停車するやいなやMP5A5の銃口が突き出されて火を噴いた。

スムージングされた常駐警備車は後退を始めて校舎外への脱出阻止線を構築し始める。

ヤッテヤルデスは校舎内での戦いで既に30発近くの弾を受けたこともあり、既に己に限界を感じていた。

梓はもう近くだとは感じていたが、人間の抵抗は激しさを増していく。

ヤッテヤルデスはもはや梓まで辿りつくことは叶わぬと察した。



513 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 20:16:03.42 ID:nAsjYEeC0

そこに機動隊員が立ち塞がって、ヤッテヤルデスに向け

一斉にガス筒発射器という名のグレネードランチャーを真正面から水平射撃した。

弾頭はガス弾とはいえ、過去に重大傷害を与えるとして

直接照準を禁じられたその装備はヤッテヤルデスに直撃し、炸裂したガス弾が確実にダメージを与えた。


その光景を梓は機動隊員たちの構える防弾盾の隙間から目にした。

ヤッテヤルデスはガス弾の直撃を受け、仰向けに倒れこんだ。

投光器は全てそこへ向けられ、真っ白い光の中警察官達は盾を先頭に、ヤッテヤルデスを囲み始める。



515 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 20:19:29.45 ID:nAsjYEeC0

それをきっかけに屈強な管区機動隊員達が梓を大事に取り囲む壁も崩れた。

その瞬間を見逃さなかった梓はそこを縫ってヤッテヤルデスに向かって走った。

足がもつれ、敷かれたタイルには何度も躓きそうになりつつも走っていく。

「おい!」

「駄目だ!行くな!」

警察官の絶叫が響き、一斉に機動隊員たちは自殺を始めんばかりの梓を抑えようと動き出す。

仰向けに転がったヤッテヤルデスは梓の接近にフラフラと立ち上がる。


一斉に警察官達が銃口をヤッテヤルデスに向けた音の後、月明かりに照らされた静寂が広がった。



520 名前:さるは何故ノッてくると来るんだよ:2010/09/18(土) 21:02:15.64 ID:nAsjYEeC0

目の前に立ちはだかった梓。それはヤッテヤルデスにとって狩りの対象であった。

目の前で立ち上がったヤッテヤルデス。それは梓にとって憎むべき敵であった。


ヤッテヤルデスは光のない眼で梓を見つめていたが、

やがてその血で染まる黒く小さな手を梓に向けて伸ばした。


梓はその光景を他人事のように見ながら考えていた。

この生き物は何故現れたのだろう。私の大事な人達を奪っていった。

すごく憎い…憎くて仕方ない。

なぜ…。なぜ私たちを…?

どうして?

その問いは喉元まで出かけた。

だが、それより先に梓はヤッテヤルデスの指先に触れていた。



521 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 21:07:15.12 ID:nAsjYEeC0

県警機動隊第一中隊特殊銃班の狙撃手は

向かいに建つ民家のベランダからヤッテヤルデスを特殊銃Ⅰ型の高性能スコープに捉える。

狙撃手にとって梓は身を挺して敵を誘き出した勇敢な女子高生であった。

最初で最後かも知れぬこの制圧のチャンスを逃すまいと狙撃手はリップマイクに叫ぶ。

『捉えました!』

「やれ!」

多重通信車の中で県警警備部長が顔を紅潮させてマイクに怒鳴った。

隊員は特殊銃Ⅰ型とは名ばかりなボルトアクション式ライフル、豊和ゴールデンベアの引き金を引いた。


「アズサ。ヤッテヤルデスハ―」



梓の目の前でヤッテヤルデスの頭部は半分程吹き飛び、梓にその破片と飛沫が吹きかかった。



522 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 21:13:46.21 ID:nAsjYEeC0

― いっかげつご…!


久々の高気圧が日本列島を覆い、青空に蓋をするように蔓延っていた鉛色の雲が消えた日、

県庁所在都市の中心部を走る幹線である県庁通りに建つ煉瓦色の市民会館、

その周囲の道路には朝から物々しい機動隊の姿があちこちに目についた。

黒い喪服姿や見慣れた制服姿でごった返す市民会館の入口には

「桜が丘女子高等学校爆破事件犠牲者合同追悼式」という長ったらしい看板が掲げられていた。


その市民会館が有する1500席の大ホールの客席の中では合同追悼式が執り行なわれ、

満席となった参列席の中には梓、紬、和の三人の姿もあった。



524 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 21:16:03.14 ID:nAsjYEeC0

57名の遺影はステージいっぱいに組み上げられた祭壇に白菊とともに並べられ、観客席を見つめている。

「犠牲となられた方々とそのご遺族に対し、謹んで哀悼の意を表します―」

それを背に、時の内閣総理大臣は2分25秒、文字換算にして780字の式辞を述べた。

果たしてこの57人をあの忌まわしき生物と勇敢に戦い散っていった人々だと

この中の何人が知っているのだろうか。

その真実はテロリズムの犠牲者というベールに覆われ、

時間という埃に覆い隠され、やがてその存在すら忘れられて行くに違いない。



1時間20分の追悼式が終わると、多くの参列者の流れと共に帰り道につく。

その人垣の向こうではマスコミの放列をSPが蹴散らし、

白バイが甲高いサイレンを響かせて黒塗りの車列が発進していた。

警笛が遠ざかる中、三人は無言で顔を見合わせた。



525 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 21:18:23.28 ID:nAsjYEeC0

律、澪、唯、憂、さわ子はもういない。

あの日が残していったものは「無力」という目の反らしようもない事実だけであった。

結果的に紬と梓は大いに忌々しい生物の制圧に貢献していた。

だが、それが逆に自分たちの見通しが大いに甘く、

そして純粋無垢で愚かな女子高生であることを思い知らせた。

彼女たちは自分から死という恐ろしい敵に無意味に立ち向かい、そして返り討ちにあったのである。



526 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 21:21:02.84 ID:nAsjYEeC0


すっかり葉の落ちた並木を三人は歩いていく。

ほっと吐いた息は白く、頬をひんやりと刺す寒さは冬をはっきりと感じさせた。

「寒いですね」

頬を赤くした梓が無言を破った

「うん…」

「寒いわね」

それに応じて和と紬も口を開く。

「ご飯食べに行かない?」

和が思いついたように言い出した時、梓達の前に流動警戒中の警察官が現れる。

警察官達は和達を気に止める様子もなく、そのまま生垣を確認しながらすれ違っていく。

しかしその姿は三人にあの忌ま忌ましい記憶の影を呼び覚まそうとした。

「あ、いいですね!私、この前テレビでやってたイタリアンのお店に行きたいんですが―」



527 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 21:23:54.83 ID:nAsjYEeC0

喋りながら斜めを振り返った梓はそのまま道路を挟んで向かい側、

雑居ビルの間に消えていく何かを見て釘付けになった。

「どうしたの?」

「…梓ちゃん?」

突然固まった梓に和と紬も怪訝そうにその視線の先を振り返った。


視線の先には薄暗い路地を蠢く影があった。

雑居ビルの間の細い路地、その片隅にあるゴミバケツとハイゼットの横には黒い塊がいた。

それはあの忌まわしき日の記憶を梓にフラッシュバックさせた。

梓は生垣を飛び越えて、車の途切れた道路を渡りだす。

それに気づいた塊は慌てて駆け出し、

紬と和も信号と共に現れた短い車群をやり過ごしてから慌てて走った。



528 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 21:27:11.93 ID:nAsjYEeC0

「猫…」

路地に飛び込んだ梓は拍子抜けして立ち尽くした。

太った黒猫はその鈍重そうな見かけに相反して俊敏に花壇へ飛び上がり、

枯れ枝が目立つ植え込みの中に消えていった。

「よかった…猫ね…」

「あんな太ってても俊敏なものなんだ…」

響いた足音とともに背後からは和と紬の声がした。



530 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 21:32:58.22 ID:nAsjYEeC0

遅い昼食を終えた三人は駅に向かって歩いていた。

幹線道路と幹線道路が交わる交差点。

三人が人の流れと共に横断歩道へまで差し掛かったとき、歩行者信号が点滅を始める。

「あっ、信号変わっちゃいますよ」

紬を引っ張るようにして駆け込むが、和はそれをためらって立ち止まる。

点滅を終えた歩行者信号は赤に変わって和だけをそこに遮った。

「あー!和センパイ!」

「和ちゃんエラいわぁ。渡らなかったのね」

向こう岸では紬と梓が残念そうに振り向いていた。




531 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 21:33:58.56 ID:IdI6YxMp0

ざわわ…ざわわ…



533 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 21:52:09.17 ID:lgPIU7Zu0

ざわ・・





536 名前:最後の最後でさるうううううううう:2010/09/18(土) 22:03:37.62 ID:nAsjYEeC0

そんな二人に和が視線の焦点を合わせようとしたその時、横断歩道の向こう岸で

こちらを見つめる顔の中に和は頭1つ抜きん出てこちらを見る自分の顔を見た気がした。

「…え?」

小さくつぶやきが漏れたときには無意識の瞬きが視界をリセットし、

次に戻った時にはスタートした車が一斉に流れこんでいた。

やがて、歩行者信号が青になると和の周りの人々が一斉に横断歩道へ流れ込み始める。

和がその中をいくら見回しても、そこにはもう土曜日の午後の街の姿しか残されてはいなかった。

「和ちゃん!」

雑踏の中から梓の呼ぶ声が聞こえてくる。

まさかね…。

そう思いながら和は梓達に追い付くべく、まばらになり始めた雑踏を駆け出した。




澪「恐怖、ヤッテヤルデス」 ― おわり!




537 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:05:32.23 ID:PrsUfpK60





538 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:06:15.36 ID:XM6wD+Uo0

ホラー映画風の終わり方だな




539 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:07:10.54 ID:IdI6YxMp0

こちらを見る自分の顔…



面白かった!




540 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:07:45.87 ID:Ma7C5yBW0

おつでしたこわい



541 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:08:34.72 ID:3czqC6WT0


ここまで熱中したSSは久しぶりだったww



542 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:08:44.84 ID:/K/56fig0

面白かった 最後までご苦労さん




543 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:09:37.03 ID:2S5Kj6jC0

結局ヤッテヤルデスってなんだったの?
伏線らしきもの散りばめられてるから



544 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:10:43.18 ID:f54SoLwH0

和先輩じゃなくて和ちゃんと呼ぶという事はつまり・・・ごくり



545 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:13:07.45 ID:IdI6YxMp0

>>544
やめろ、そこには触れるな…
消されるぞ…>>1



550 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:24:59.77 ID:F1AxZZIo0

乙でした



552 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 22:26:12.40 ID:lMAbXalhO

久々に怖かった



555 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 23:09:28.81 ID:jGAyS50l0

乙。
ここ数日気になって気になって仕方なかった。
でもヤッテヤルデスって結局なんだったんだよー。



556 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 23:11:27.98 ID:2S5Kj6jC0

正体は梓だろ



557 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 23:12:03.06 ID:KFklrs2y0

梓の願望?



558 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/18(土) 23:14:55.12 ID:f54SoLwH0

>>7-9を見る限り梓の人間に対する憎悪から生まれた怪物としかわかんないね
何故本人まで襲ったかはしらん



560 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/19(日) 00:18:10.23 ID:FLTQzTj20

乙 毎日張りついてみてたよ
ヤッテヤルデスは実は悪いやつじゃないんじゃないかと思ってしまう



562 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/19(日) 00:22:14.25 ID:y8UrRFuh0

いや、なかなか面白かった

>>558
創造主との決別ってのはテーマとしてはよくあるよね



565 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/19(日) 01:02:59.89 ID:BckqBywN0

軽音部がターゲットになった理由は梓にとって身近な人間だからか?



569 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/19(日) 01:36:30.58 ID:y8UrRFuh0

あずにゃんのストレスっていう強い感情に起因して産まれて
好意っていう強い感情に起因して襲っていったって解釈した






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澪「恐怖、ヤッテヤルデス」#後編
[ 2011/12/23 06:00 ] ホラー | | CM(2)

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タイトル:
NO:4818 [ 2011/12/23 11:18 ] [ 編集 ]

ついにまとめられたか
この作者やけに警察に詳しいよな

タイトル:
NO:4838 [ 2011/12/23 18:46 ] [ 編集 ]

↑思った。 めっちゃ見入ったわ。
それにしてもヤッテヤルデス怖すぎる...

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