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朋也「軽音部? うんたん?」#4 【クロス】


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朋也「軽音部? うんたん?」#index




243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:37:39.51 ID:1qYNd8dxO

4/11 日

目が覚める。寝起きは悪く、けだるい。
時計を確認すると、まだ午前中だった。

朋也(寝直すか…)

どうせ、この時間に起きて寮に行っても、春原の奴もまだ夢の中に違いなかった。
寝ているあいつにいたずらするもの一興だが、それ以上に睡眠欲求が強い。
俺は二度寝するため、目をつぶって枕に頭を預けた。

―――――――――――――――――――――

………。

―――――――――――――――――――――

朋也(ふぁ…だる…)

結局、起きたのは午後一時半。
深夜に寝ついたとはいえ、眠りすぎだった。
加え、二度寝もしているから、いつも以上に体も頭も重い。

そして、そんな時は食欲も湧いてこないので、まだなにも食べていなかった。
なにか食べたくなるのは決まって時間が経ってからだ。
それも一気にくるから、こってりしたものが欲しくなる。

なので、時間を潰し、かつそんな食事もできるよう、俺は繁華街へ出てきていた。
当面はCDショップを巡るつもりだ。
お目当ては、芳野祐介のCD。
昨日、いつか探しに出ようと決めたが、そのいつかがこんなに早く来るとは…。
我ながら、本当にいきあたりばったりだと思う。



244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:38:06.75 ID:cUBlBpOS0

―――――――――――――――――――――

朋也(ないな…)

大手CDショップの中古コーナーを回ったり、
中古専門の店に入ってもまったく見つからなかった。
すでに数件巡っているのにだ。

朋也(もう、出るか…)

朋也(ん? あれは…)

懐かしいものを発見した。それは、ひっそりと棚の隅にあった。
だんご大家族のCDだった。
誰かが出しかけたまま放置していったのだろう。
他のCDにくらべて少し飛び出していた。
だからこそ俺の目に入ったのだが。
手に取ってみる。

朋也(平沢の奴、これのシャーペン持ってたよな、確か…)

あいつから聞いていなければ、見つけても素通りしていただろう。

朋也(買って、500円くらい上乗せして売りつけてやろうか)

朋也(いや…好きなら、CDくらい持ってるか…)

よこしまな考えをすぐに改め、CDを棚に戻し、店を後にした。

―――――――――――――――――――――



245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:39:28.57 ID:1qYNd8dxO

朋也(あれ…この辺だったよな…)

俺は無性にハンバーガーが食べたくなり、店を探していた。
以前何度か利用したことがあったのだが…見つからない。
最近、来ていないうちに潰れてしまったんだろうか。
だとすると、駅前の方にするしかない。
だが、ここからは少し距離があった。

朋也(まぁいいか…行こう)

そう決めて、踵を返す。

朋也(ん…?)

すると、小さい女の子が、さっと柱に身を隠した。
挙動がおかしかったので、なんとなく気になった。
歩き、近づいていく。
そして、横についたとき、ちらっと横目でその子を見てみた。
柱に顔を押しつけ、手で覆い隠すようにしている。

朋也(なんだ、こいつ…)

ちょっとおかしい奴なのか…。
あまり見すぎていて、突然振り返られでもしたら怖い。
俺はスルーして先へ進んだ。

―――――――――――――――――――――

朋也(さっきの奴どうなったかな…)



246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:40:29.28 ID:cUBlBpOS0

ちょっと歩いたところで、好奇心から振り返ってみた。

女の子「!」

先程と同じく、柱に隠れる。

朋也(…俺、尾けられてないよな)

俺が振り返ると隠れるし、同じタイミングで方向変えたし…。
しかしそれにしては下手な尾行だった。

朋也(まさかな…)

またしばらく歩く。そして突然…

ばっ

勢いよく振り返った。

女の子「!!」

また、隠れた…。

朋也(なんなんだよ…くそ)

俺は歩を進めて近づいていく。
付近までやってくると、柱の両端から髪がはみ出ていた。
さっき見て確認した時、ツインテールだったので、その部分だ。
俺はその子の後ろに回った。



248 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:42:47.88 ID:1qYNd8dxO

朋也「おい」

びく、と体が跳ねる。

朋也「おまえさ…」

いいながら、肩に手を置く。

女の子「す、すみません、私…」

俺がこちらを向かせる前に、自ら振り返った。

朋也「あれ…おまえ」

確か軽音部の…中野という子だったはずだ。

梓「あの、私…CDショップのところから先輩を尾行してました」

そんなとこから…気づかなかった…。

梓「失礼ですよね…やっぱり…」

朋也「いや、なんでまた…」

梓「それは…」

言いよどみ、顔を伏せる。
きゅっとこぶしを作ると、俺を見上げた。

梓「唯先輩の件で、気になることがあったからです」



249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:43:23.26 ID:cUBlBpOS0

朋也「平沢の? それで、なんで俺なんだよ」

平沢のことで尾行されるような心当たりがない。

梓「きのう、聞いたんです。唯先輩が遅刻してきたって」

梓「それで、その原因が岡崎先輩と一緒に登校するためだったっていうのも…」

朋也(うげ…)

あの部長、話題にあげたのか…。

梓「だから、岡崎先輩が普段どういう人なのか気になって…」

梓「ていうか、唯先輩にふさわしい人かどうか…」

ふさわしい、とは…やっぱり、そういう意味なんだろうか。
あの部長、いったいどういうふうに話したんだろう。
おもしろおかしく盛り上げて、あることないこと喋ったんじゃないだろうな…。
曲解されてしまっているじゃないか。

梓「あ、す、すみません、私…また失礼なことを…」

朋也「いや、つーか、まず俺と平沢はそんな関係じゃないからな」

梓「え? だって、手をつないで登校したりしてるんですよね?」

朋也「してない」

やはり話が盛られていた。



251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:44:36.29 ID:1qYNd8dxO

梓「じゃあ、休み時間にラブトークしてるっていうのは…」

朋也「するわけない…」

梓「そうですか…」

安堵した表情で、胸をなでおろすような仕草。

梓「じゃあ、律先輩のいつもの冗談だったんだ…」

朋也「なに言ったか知らないけど、九割嘘だ」

梓「え? じゃあ、残りの一割…あれは本当だったんですか…」

朋也「なんだよ、それ」

少し気になった。
だが、残り一割なら、そうたいしたことはなさそうだ。
もしかしたら、事実かもしれない。
よく話しているとか、そんな程度のこと。

梓「焼きそばパンを両端から食べあって真ん中でキスするっていう…」

めちゃヤバイのが残っていた!

朋也「それより軽いの否定してんのに、ありえないだろ…」

梓「ですよね…ちょっとテンパッちゃってました」

だろうな…。



252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:44:55.85 ID:cUBlBpOS0

朋也「あー…まぁ、誤解も解けたし、もういいよな。それじゃ」

言って、もと来た道を引き返し始める俺。

梓「あ、まってください!」

後ろから声。
振り返る。

朋也「なんだよ」

梓「あの…失礼なことしたお詫びに、なにかしたいんですけど…」

梓「私にできることならします。なんでもいってください」

朋也「なんでも?」

梓「はい。できる範囲でですけど…」

朋也(そうだな…)

朋也「じゃ、昼おごってくれ。飯まだなんだ」

梓「それくらいなら、まかせてください」

もともとハンバーガーを食べるつもりだったのだ。
それくらいなら、そう負担にもならないだろう。

―――――――――――――――――――――



253 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:46:23.96 ID:1qYNd8dxO

店に入る。昼時は少し過ぎたとはいえ、人が多い。
とりあえず並んで順番を待つ。

―――――――――――――――――――――

店員「いらっしゃいませ~」

朋也「あ」
 梓「あ」

店員「あら…」

その店員も、一瞬接客を忘れて素の反応が出てしまっていた。
俺たちも、向こうも、相手のことを知っていたからだ。
つまりは知り合いだ。

紬「店内でお召し上がりになりますか?」

琴吹だった。
もう店員としての顔を取り戻している。

朋也「ええと、そうだな…」

梓「私も頼むんで、店内でお願いします」

横から、そう俺に伝えてくる。

朋也「ああ、じゃ、店内で」

紬「かしこまりました。ご注文をどうぞ」



254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:46:50.29 ID:cUBlBpOS0

朋也「チーズバーガー3つと、水」

紬「はい」

ピッピッ、とレジに打ち込んでいく。

紬「お会計は、おふたりご一緒でよろしいでしょうか」

梓「あ、はい」

紬「かしこまりました。では、ご注文をどうぞ」

梓「えっと…このネコマタタビセットをひとつ」

紬「はい」

同じように、またレジに入力する。
会計が出ると、中野が支払いを済ませた。

紬「では、この番号札でお待ちください」

札を受け取り、空席を探しに出た。

―――――――――――――――――――――

朋也「琴吹ってお嬢様なんだろ」

梓「そう聞いてます」

朋也「なんでバイトなんてしてるんだろうな」



255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:48:03.71 ID:1qYNd8dxO

梓「それは…多分あこがれがあったんだと思います」

朋也「あこがれ?」

梓「はい。なんていうか、庶民的なことに」

朋也「ふぅん…」

梓「インスタントコーヒーとか、カップラーメンにも感動してました」

朋也「へぇ…」

反動というやつだろうか。俺にはよくわからなかった。
いや…まてよ…庶民的なことに心動かされるということは…
春原とは相性がいいかもしれない。
あいつは典型的な庶民だからな…。
俺も人のことはいえないが。

梓「あの…チーズバーガー3つで本当によかったんですか?」

梓「飲み物も水ですし…」

朋也「ああ、俺小食だから」

いくらおごりといっても、腹いっぱいになる量を頼めるほど図太くなれない。
あとで適当な定食屋にでも寄ればいい。

梓「そうですか。うらやましいです」

朋也「おまえが頼んでたネコマタタビセットって、なに」



256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:48:23.00 ID:cUBlBpOS0

なんとなく気になっていたので、訊いてみる。

梓「あれはですね、マタタビ味のするハンバーガーとジュース、ポテトがついてきます」

朋也(マタタビ味…)

どんな味がするんだろう…。

梓「そして、なんと、電動ねこじゃらしもついてくるんです」

つまり、よくある玩具がついてくるセットのようなものなのか。

朋也「ふぅん。それで、バーガーの肉は猫なのか」

梓「そんなわけないじゃないですか。怖すぎますよ」

きわめて冷静に返されてしまった。
冗談で言ったのに、俺がバカに見えて、ちょっと恥ずかしくなってしまう。

紬「お待たせしました」

そこへ、注文の品を持った琴吹が現れた。

朋也「あれ、おまえレジじゃなかったのか」

紬「ちょっとわがまま言ってかわってもらったの」

朋也「なんで」

紬「私が持ってきたかったから」



257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:49:30.49 ID:1qYNd8dxO

その理由を訊いたつもりなのだが…。

紬「どうぞ、梓ちゃん」

梓「ありがとうございます」

紬「岡崎くんも」

朋也「ああ、サンキュ」

盆を受け取る。

紬「ところで…」

俺の耳にそっと顔を寄せる。

紬「唯ちゃんはいいの?」

ばっと勢いよく振り返り、顔を見合わせる。

朋也「おまえまで、俺と平沢がそんなだと思ってんのか」

紬「あれ、ちがった?」

朋也「違うに決まってるだろ」

紬「そうなの? なぁんだ…」

にこやかに微笑む。
悪びれた様子はまったくない。



258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:49:49.98 ID:cUBlBpOS0

無垢な子供のようだった。
これでは強く言うこともできなくなる。

朋也(はぁ…なんつーか、人徳ってやつなのかな)

冷静になったところで、思い出したように気づく。
琴吹と顔を間近に突き合わせてしまっていることに。
そういえば、さっきから、ふわりといい匂いが鼻腔をかすめていた。
俺は思わず視線を外してしまう。
琴吹は、ふふと笑い、俺から離れた。
そして、ごゆっくり、と店員然としたセリフを言い残し、カウンターへ戻っていった。

朋也(なんだかなぁ…)

俺より余裕があって、負けた気分になる。
お嬢様なのに、もう大人の風格を身につけているというか…。

梓「なに話してたんですか」

朋也「いや、ささくれの処理の仕方についてだよ」

梓「はぁ…そんなのひそひそやらなくてもいいと思いますけど」

朋也「ちょっとエグイ部分もあったから、店員のモラル的にまずかったんだよ」

梓「そうですか…よくわかりませんけど」

―――――――――――――――――――――

食事を終え、店を出る。



261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:50:57.97 ID:1qYNd8dxO

朋也「昼飯、ありがとな」

梓「いえ、そんな」

朋也「そんじゃ」

梓「はい」

―――――――――――――――――――――

朋也(ここでいいか)

中野と別れてからしばらく飯屋を探し回っていたのだが…
ショーウインドウのモデルメニューに惹かれ、ようやっと店を決めた。
中に入る。

―――――――――――――――――――――

ガー

腹を満たし、自動ドアをくぐって店を後にする。

朋也(けっこううまかったな…)

朋也(…ん?)

道に沿うようにして広がる花壇の淵、そのコンクリート部分。
そこに腰掛け、一匹の猫と戯れる女の子がいた。
手には、うぃんうぃん動くねこじゃらし。



262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:51:25.73 ID:cUBlBpOS0

梓「…あれ」

こっちを見て、そう口が動いた気がした。
次に、俺の後ろにある飯屋に目をやった。
そして、立ち上がると、こちらに近づいてくる。
猫はちょこんとその場に座り続けていた。

梓「あの…岡崎先輩、今ここから出てきませんでしたか?」

俺がさっきまでいた店を指さす。

朋也「ん、まぁ…」

梓「やっぱり、あれだけじゃ足りなかったんですね」

梓「私に遠慮してくれてたんですか」

朋也「いや、急に小腹がすいたんだよ」

梓「そんなレベルのお店じゃないと思うんですけど」

ショーウィンドウを見ながらいう。
デザート類はあったが、それ以外はしっかりしたものばかりだった。

梓「お詫びできたことになってないです…」

朋也「いや、十分だって」

梓「でも…」



263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:52:49.28 ID:1qYNd8dxO

食い下がってくる。

朋也(どうするかな…)

朋也「…じゃあさ、あれでいいよ」

俺は猫を指さした。

梓「え?」

猫のいる方に歩き出し、その隣に座る。
顎下をなでると、にゃ~、と鳴き、体をすり寄せてきた。
遅れて中野もついてくる。

梓「あの…」

朋也「こいつとじゃれるのでチャラな」

梓「でも、私の猫ってわけじゃないですし」

言ながら、俺とその間に猫を挟むような位置に座る。

朋也「じゃ、その猫じゃらし貸してくれ」

梓「あ、はい、どうぞ」

受け取る。
みてみると、弱、中、強と強さ調節があった。
強にしてみる。



264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:53:09.49 ID:cUBlBpOS0

うぃんっうぃんっ!

激しく左右に振れだした。
………。
駆動音といい、挙動といい…ひわいなアレを連想してしまう…。

朋也(いかんいかん…)

気を取り直し、猫の前に持っていく。
猫もその早い動きに対して、高速で対応していた。
バシバシバシ、と猫パンチが繰り出される。
その様子がおもしろかわいかった。
一通り遊ぶと、俺は満足してスイッチをオフにした。

朋也「ほら」

梓「あ、はい」

猫じゃらしを返す。
その折、猫の頭をなでた。
しっぽをぴんと立て、体をよせてくる。

梓「なつかれてますね」

朋也「こいつが人に慣れてるんだろ」

野生という感じはあまりしない。
人から食べ物でもよくもらっているんだろうか。
媚びれば、餌にありつけるという計算があるのかもしれない。



265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:54:28.87 ID:1qYNd8dxO

朋也「そういえば、俺たち、反対方向に別れたよな」

朋也「なんでここにいるんだ」

梓「それは…」

恥ずかしそうに目をそらせた。

梓「…この子をみつけて、追いかけてたからです」

朋也「逃げられたのか」

梓「はい…」

朋也「おまえ、マタタビなんとかっての食ってたし、寄ってきそうなもんだけどな」

梓「逆に避けられました…それで、ここでやっと止まってくれたんです」

朋也「気まぐれだよな、猫って」

梓「ほんと、そうですよ」

優しい笑みを浮かべ、猫をなでた。
すると、甘えたように中野のひざの上で寝転び始めた。

梓「かわいいなぁ…」

中野がなでるたび、ごろごろと鳴いて、心地よさそうだった。

朋也(いくか…)



266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:54:53.79 ID:cUBlBpOS0

立ち上がる。

朋也「それじゃな」

今日二回目の別れ。

梓「あ、あの、お詫びの件は…」

朋也「だから、猫じゃらしでチャラだって」

そう告げて、反論される前に歩き出す。
ひざの上には猫がいる。それをどけてまで追ってはこないだろう。
これから俺が向かう先は、当然坂下にある学生寮。
もういい加減春原の奴も起きている頃だろう。
まだ寝ているようなら、俺のいたずらの餌食になるだけだが。
その時はなにをしてやろうか…などと、そんなことを考えながら足を運んだ。

―――――――――――――――――――――



268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:57:27.28 ID:1qYNd8dxO

4/12 月

朋也(……朝か)

カーテンの向こう側から朝日が透過して届いてくる。
その光が目に痛い。頭も擦り切れたように思考の巡りが悪い。
先日は起きる時間が遅れていたので、うまく寝つくことができなかったのだ。
俺は今の今まで、小刻みに浅い眠りと覚醒を繰り返していた。

朋也(今日はもうだめだ…サボろう…)

混濁する意識の中、そう思った。
まぶたを下ろす。
………。
そういえば…

朋也(今日も待ってんのかな、あいつ…)

あの日、待つことにした、とそう言っていた。
俺が今日サボれば、あいつも欠席になってしまうんだろうか。
まさか、そこまでしないだろうとは思うが…。
きっと、適当なところで切り上げるだろう。

朋也(関係ないか、俺には…)

頭の中から振り払うように、寝返りをうつ。

朋也(だいたい、俺が風邪引いて休むことになった時はどうするつもりだったんだよ…)

朋也(………)



269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:57:54.25 ID:cUBlBpOS0

朋也(……ああ、くそっ)

考え出してしまうと、気になってしょうがなかった。
俺は布団から出た。
学校へいく準備をするために。

―――――――――――――――――――――

唯「おはようっ」

やっぱり、いた。

朋也「…おはよ」

唯「今日は早いんだねっ。これならまだ間に合うよっ」

朋也「ああ、そう…」

唯「なんか、すごく眠そうだね。やっぱり、体が慣れてない?」

朋也「ああ…」

唯「これから徐々になれていこう。ね?」

朋也「ああ…」



270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:59:08.63 ID:1qYNd8dxO

唯「じゃ、いこっ」

朋也「ああ…」

―――――――――――――――――――――

唯「岡崎くんさ、今日早かったのって、もしかして…私のため?」

朋也「ああ…」

唯「そ、そうなんだ…うれしいよ。やっぱり、岡崎くんはいい人だったよっ」

朋也「ああ…」

唯「岡崎くん?」

朋也「ああ…」

唯「さっきからリアクションが全部 ああ… なのはなんで?」



271 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 15:59:29.50 ID:cUBlBpOS0

朋也「ああ…?」

唯「微妙な変化つけないでよ…もう、真剣に聞いてなかったんだね…」

ざわ…
     ざわ…

朋也「ああっ…!」

ざわ…
    ざわ…

唯「某賭博黙示録みたいになってるよっ…!」

―――――――――――――――――――――

学校の近くまでやってくる。
うちの生徒もまだ多く登校していた。
こんな風景を見るのはいつぶりだろうか。
もう、長く見ていなかった。

朋也(にしても…)

こんな中をふたり、こいつと一緒に歩くのか…。
周りからはどう見られてしまうんだろう。
みんな、そんなの気にも留めないのかもしれないけど…
万が一、軽音部の連中のように、勘違いする奴らが出てきたらたまらない。

朋也「おまえ先にいけ」



272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:01:21.11 ID:1qYNd8dxO

立ち止まり、そう告げた。

唯「え? なんで? ここまで来たんだから最後まで一緒にいこうよ」

朋也「いいから」

唯「ぶぅ、なんなの、もう…」

不服そうだったが、しぶしぶ先を行ってくれた。
俺も少し時間を置いて歩き出した。

―――――――――――――――――――――

教室に着き、自分の席に座る。

唯「なんであそこから別行動だったの?」

座るやいなや、すぐに訊いてきた。

朋也「おまえ、恥ずかしくないのか。俺と一緒に登校なんかして」

唯「恥ずかしい? なんで? おとといだって一緒だったじゃん」

朋也「いや、だから、それが原因で俺たちが、その…」

唯「うん?」

きょとん、としている。
そういうことに無頓着なんだろうか、こいつは。



273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:01:56.37 ID:cUBlBpOS0

朋也「…付き合ってるみたいに言われるのがだよ」

唯「あ、そ、それは…えっと…」

唯「私は別に……あ、いや…岡崎くんに迷惑だよ…ね…?」

朋也「まぁ、な…」

というか、おまえはいいのか…。

唯「あはは……だよね…気づかなかったよ、ごめんね…」

朋也「ああ、まぁ…」

唯「………」

少し驚く。あの平沢が目に見えて落ち込んでいた。
今までなら、そっけなくしても、ややあってからすぐ持ち直していたのに。
少し打ち解けてきたと思ったところで拒絶されたものだから、傷も深いんだろうか。
…でも、これでよかったのかもしれない。
これで朝、俺を待つなんて、そんな不毛なことをしなくなってくれれば。
それがお互いのためにもいいはずだ。

―――――――――――――――――――――

………。

―――――――――――――――――――――

4時間目の授業が終わり、昼休みになった。



274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:03:32.16 ID:1qYNd8dxO

朋也(はぁ…きっつ…)

朝から授業を受けて蓄積した疲労が堪える。
休憩時間も、全て机に突っ伏し、回復に当てて過ごしていたにも関わらずだ。
そもそも、俺が朝からいたことなんて、ほんとうに数えるくらいしかないのだ。
出欠を取ったとき、さわ子さんも俺がいることにたいそう驚いていた。
替え玉じゃないかと疑っていたくらいだ。
そんな、代返ならまだしも、替え玉出席なんて聞いたこともないのに。
それくらいイレギュラーな事態だったのだ。

朋也(飯、いくか…)

ふと、隣が気になった。
思えば、ずっと静かだったような気がする。
いつもなら、軽音部の誰かがやってきてふざけあっていたのに。
少し心に余裕ができた今、ようやくそのことに違和感を覚えた。
窺うようにして、隣を横目で見てみる。

唯「…ん? なに」

朋也「いや…別に」

唯「…そ」

朋也「………」

まだ、引きずっているのだろうか。
あの、たった一回の拒絶で、ここまで落ちてしまうものなのか。
…いや
回数の問題でもないか…



275 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:03:52.45 ID:cUBlBpOS0

春原「岡崎、昼いこうぜ」

そこへ、春原がやってくる。

朋也「ああ…」

席を立ち、教室を出た。

―――――――――――――――――――――

春原「なんか、おまえ、元気ないね」

朋也「いつものことだろ。俺が元気振り撒いてる時なんかあったか」

春原「まぁ、そうだけどさ…今日は一段とね」

朋也「眠いんだよ」

春原「ふぅん…」

結局、いつかはこうなっていたはずだ。
いくら平沢が歩み寄ってきてくれても、俺自身がこんな奴なのだ。
無神経に振舞って、人の好意を無下にして…
そういうことを簡単にやってしまう人間だ。
だから、再三警告していたのに。
ロクでもない不良生徒だって。

―――――――――――――――――――――

ああ…それでも…



277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:05:26.97 ID:1qYNd8dxO

ずっと関わり続けようとしてきたのが、あいつだったんだ。
そんなやつ、あいつしかいなかったんだ。
………。

―――――――――――――――――――――

春原より先に食べ終わり、一人で学食を出た。
昼休みは中盤にさしかかったころだった。
教室へ戻っても、まだ軽音部の連中が固まって食後の談笑でもしているはずだ。
そんな中へひとり入っていく気にはなれない。
どこかで時間を潰して、予鈴が鳴る頃を見計らって帰った方がいいだろう。
俺は窓によっていき、外を見た。
食堂から続く一階の廊下。俺のいるこの場所からは中庭が見渡せた。
そこに、見覚えのある後姿を見つける。

朋也(なにやってんだ、あいつ…)

横顔が見えたとき、同時に一筋の涙がこぼれて見えた気がした。
ここからじゃ、正確にはわからなかったが、確かにそう見えた。
顔を袖で拭う動作。
こっちの、校舎の方に振り向く。
向こうも俺に気がついた。
目が合う。
一瞬、躊躇した後…
笑顔を作っていた。
また、涙が頬を伝い、それがしずくとなって地面に落ちた。
今度は間違いなく、それが見て取れた。
………。
俺は駆け出していた。
中庭に直接出ることができる、渡り廊下へ向けて。



278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:05:53.83 ID:cUBlBpOS0

―――――――――――――――――――――

上履きのまま、夢中で外へ出てきた。
そして、辿り着く。今はもう、石段のふちに腰掛けているその女の子。
俺も隣に座り、少し息を整える。

朋也「…こんなとこでなにやってんだよ」

もっと言いたいことはあったのに、こんなセリフしか出てこない。

唯「…岡崎くんこそ、くつに履き替えもしないで、どうしたの」

朋也「急いでたんだよ」

唯「どうして」

朋也「おまえが泣いてたから」

唯「…私が泣いてたら、急いでくれるの?」

朋也「ああ」

唯「どうして」

朋也「そりゃ…」

どうしてだろう…。
自分でもよくわからない。



279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:07:12.27 ID:1qYNd8dxO

朋也「…泣いてるからだよ」

唯「…ぷっ…あはは。見たまんますぎるよ」

朋也「ああ…だな」

作ったものじゃない、素の笑顔。
ここまで出てきたその行為が報われたような気分になる。

唯「私、泣いてないよ」

朋也「あん?」

唯「あくびだよ、あ・く・び」

朋也「…マジ?」

唯「マジ」

なんてくだならいオチなんだろう…。
じゃあ、なんだ、俺が単に空回りしていただけなのか…。

唯「でも、うれしかったよ。そんなふうに思って、駆けつけてくれて」

朋也「そっかよ…」

唯「また泣いたら、今みたいに来てくれる?」

朋也「ああ、すぐ行く。借りてた1泊2日のレンタルDVD返したら、駆けつける」



280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:07:31.79 ID:cUBlBpOS0

唯「それ、私がついでみたいになってるんだけど?」

朋也「しょうがないだろ。もう三日も延滞してるんだから」

唯「そんな事情知らないっ。最初からその日数で借りなよっ」

朋也「ちょっと見栄張ったんだよ。二日あれば俺には十分だ、ってさ」

唯「意味わかんないよ、もう…」

困ったように笑う。
けど、その表情にはもうかげりがなかった。

朋也「それで、ひとりでなにしてたんだよ。こんなとこでさ」

唯「ひなたぼっこだよ。いい天気だし、気持ちいいかなって」

朋也「ほかの奴らは」

唯「誘ったんだけどね~。断れちゃった」

朋也「そっか」

唯「みんなわかってないよ、光合成のよさを」

朋也「植物か、おまえは」

唯「む、哺乳類でもできるんだよ。みてて」

はぁ~…と気合のようなものをためていく。



281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:08:45.59 ID:1qYNd8dxO

唯「ソーラー…ビーーームッ!」

ズビシッ、と俺に人差し指を突き刺した。

朋也「ビームって…ただの打撃だろ…肉弾攻撃だ」

唯「えへへ」

笑ってうやむやにしようとしていた。

朋也「がんばって光合成でもしといてくれ」

立ち上がり、校舎に引き返す。

唯「あ、私もいくっ」

声がして、後ろから元気な足音が近づいてきていた。

―――――――――――――――――――――

律「よ」

帰ってきた俺を見て、部長が声をかけてくる。
今日は俺の席ではなく、空いた平沢の席に腰掛けている。

朋也「…ああ、よぉ」

平沢が抜けたことにより散会になったとばかり思っていたのだが…
まだ三人とも残っていた。
とりあえず自分の席につく。



282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:09:02.82 ID:cUBlBpOS0

律「なぁ…」

と、また部長。

朋也「なんだ」

律「あんた、唯のことでなんか知らない?」

それは、今朝からの平沢の様子を気にして訊いてきているんだろう。
容易に想像がついた。

律「あいつ、朝ちょっかい出しにいった時から元気なかったしさ…」

俺が机に突っ伏している間、やっぱり今日も平沢のもとに訪れていたのだ、部長は。
その時異変に気づいたと、そういうことだろう。

律「どうしたのか訊いても、曖昧にこたえるし…」

律「そんで、唯から聞いたんだけど、あんたたち、今朝も一緒に途中まで登校してきたんだろ」

律「だから、あんたならなんか知ってるんじゃないかと思ってさ」

他のふたりも、俺をじっとみてくる。
なんと言っていいのだろうか。
俺が原因だなんていったら、自惚れにもほどがある気もするし…。
今までの流れを言葉で説明すると、途端に安っぽくなるし…。

唯「やっほ、帰ったよ」

そこへ、ちょうど平沢が戻ってきた。



285 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:10:17.09 ID:1qYNd8dxO

下駄箱で上履きに履き替えるため、途中で別れていたのだ。
だから、この時間差が生まれたのだ。

律「あ、おう…」

紬「おかえり、唯ちゃん」

澪「おかえり」

唯「ただいまぁ」

言いながら、自然に部長の上から座った。

律「ちょ、唯、重いっ」

唯「あれ、悦んでクッションになってくれるんじゃないの」

律「んな性癖ないわっ。どかんかいっ」

唯「ちぇ、思わせぶりなんだから…」

部長から身をどける。

律「なに見てそう思ったんだよ…ったく」

立ちあがり、平沢に席を譲った。

澪「唯…その、もういいのか?」

唯「ん? なにが?」



286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:10:39.42 ID:cUBlBpOS0

澪「いや…ちょっとテンション低かったじゃないか」

唯「ああ、もう大丈夫! 陽の光浴びて満タンに充電してきたからっ」

澪「そっか…」

部長、琴吹と顔を見合わせる。
そして、みな一様に顔をほころばせた。

律「ま、元気になったんなら、それでいいけど」

紬「そうね」

澪「ああ」

唯「えへへ」

―――――――――――――――――――――

………。

―――――――――――――――――――――

放課後。
さわ子さんによると、
今日普通に登校してきた俺は、奉仕活動を免除されるということだった。
なので、春原だけが捕まっていってしまった。
唐突に暇になる。
あんな奴でさえ、いれば暇つぶしにはなっていた。
やることもない俺は、すぐに学校を出た。



288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:11:54.75 ID:1qYNd8dxO

―――――――――――――――――――――

着替えを済ませ、折り返し家を出る。

―――――――――――――――――――――

いつものように、春原の部屋でくつろぐ。
今はこの部屋本来の主人も戻っておらず、俺が暫定主人だった。
無意味に高いところに立ってみる。

朋也(………)

朋也(アホくさ…)

むなしくなって速攻やめた。

―――――――――――――――――――――

がちゃり

春原「…あれ、来てたの」

朋也「ああ、おかえり」

春原「つーか、人の部屋に勝手にあがりこ…うわっ」

上着を脱ぎ、コタツまで来たところで驚きの声を上げる。

春原「なにしてくれてんだよっ」



289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:12:41.62 ID:cUBlBpOS0

朋也「なにが」

漫画を読みながら、おざなりに返す。

春原「これだよっ! このフィギュアっ!」

朋也「おまえの大事な萌え萌え二次元美少女がどうしたって?」

春原「ちがうわっ! 僕のでもないし、そんな感じのでもないっ!」

朋也「じゃ、なんだよ」

春原「よくわかんないけど、電灯の紐で首くくられてるだろっ!」

朋也「いいインテリアじゃん」

春原「縁起悪いよっ!」

必死に紐を解く春原。

春原「なんなんだよ、これ。どうせおまえが持って来たんだろ」

朋也「ああ、なんか飲み物買ったらついてきた」

春原「やっぱりかよ…いらないなら、捨てるぞ」

朋也「いいよ」

ゴミ箱までとことこ歩いていき、捨てていた。
戻ってきて、コタツに入る。



290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:14:12.28 ID:1qYNd8dxO

時を同じくして、俺は飲みほしたペットボトルをゴミ箱に向かって投げた。

ぽろっ

朋也「春原、リバウンドっ」

春原「自分で行けよっ! つーか、今ゴミ箱までいったんだから、そん時言えよっ!」

朋也「ちっ、注文多いな…めんどくせぇやつ」

春原「まんまおまえのことですよねぇっ!」

俺はコタツから出て、こぼれ球を拾ってゴールに押し込んだ。
また戻ってきて、コタツの中に入る。
そして、スナック菓子を食べながら漫画を再開した。

春原「ったく、しおらしかったと思ったら、もう調子戻しやがって…」

春原「…ん? おまえ、そのコミック…」

朋也「これがどうかしたか」

表紙を見せる。

春原「やっぱ、最新刊じゃないかよっ! べとべとした手でさわんなっ」

朋也「ああ、悪い」

ちゅぱちゅぱと指をなめとった。



291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:14:37.73 ID:cUBlBpOS0

春原「そんな方法できれいにしても納得できねぇよっ!」

春原「台所で手洗ってこいっ!」

朋也「遠いからいやだ」

春原「すっげぇむかつくよ、こいつっ!」

朋也「ま、いいじゃん。また新しいの買えばさ」

春原「おまえが自腹で自分の買えよっ!」

春原「くっそぉ、やりたい放題やりやがって…」

朋也「これにこりたら、早く帰ってこいよ」

春原「あんたが大人しくしてればすむでしょっ!」

―――――――――――――――――――――



292 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:17:04.98 ID:1qYNd8dxO

4/13 火

朋也「…おはよ」

唯「おはよう」

昨日と同じ場所で落ち合い、学校へ向かう。

唯「今日も眠い?」

朋也「…ああ、かなりな」

だが、昨日よりかは幾分マシだった。
普通に受け答えする気にはなる。

唯「そっかぁ、じゃあ、まだ無理かな…」

朋也「なにが」

唯「もうちょっと早く来れば、私の妹とも一緒にいけるよ」

朋也「そっか…」

そういえば、妹がどうとか、いつか言っていた気がする。

唯「私の妹、気にならない?」

朋也「いや、取り立てては」

唯「ぶぅ、もっと興味持ってよぉ…じゃなきゃ、つまんないよぉ」



293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:17:32.00 ID:cUBlBpOS0

朋也「ああ、気になるよ、むしろ、すげぇ眠いよ…」

唯「すごい適当に言ってるよね、いろいろと…」

―――――――――――――――――――――

あの時別れた場所までやってくる。

唯「…えっと、ここからは、別々なんだよね」

立ち止まり、前を向いたままそう言った。

唯「じゃ…先に行くね」

一歩を踏み出す。
少しさびしそうな横顔。
………。
そもそも…
俺にはそんなことを気にする見栄や立場なんてなかったんじゃないのか。
ただの不良生徒だ。周りの評判なんて、今更何の意味もない。

唯「…あ」

俺は黙って平沢の横に追いついた。

朋也「なに止まってんだよ。いくぞ」

唯「…うんっ」

―――――――――――――――――――――



295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:18:50.28 ID:1qYNd8dxO

唯「桜、もうほとんど散っちゃったね」

朋也「ああ」

もう、二割くらいしか残っていなかった。
2、3日もすれば完全に散ってしまうだろう。

―――――――――――――――――――――

教室のドア、そこに手をかけ、止まる。
ここで一緒に入ってしまえば、また揶揄されてしまうんだろうか。

唯「ん? どうしたの」

だが、今俺が躊躇すれば、またこいつは落ち込んでしまうんじゃないのか。
俺の考えすぎか…。

朋也「…いや、なんでもない」

俺は戸を開け中に入った。
もう、ほとんど開き直りに近かった。

―――――――――――――――――――――

律「はよ~、唯」

紬「おはよう、唯ちゃん」

澪「おはよう」



296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:20:12.47 ID:cUBlBpOS0

唯「おはよ~」

俺たちが席につき、間もなくすると軽音部の連中がやってきた。
俺は眠さもあり、昨日同様、机に突っ伏していた。

律「今日もラブラブしやがって、むかつくんだよぅ~」

唯「だから、違うってぇ…家が近いから、それでだって言ったじゃん」

律「ああん? そんなことくらいで一緒に登校してたら人類みな兄弟だっつーの」

澪「意味がわからん…」

会話が聞えてくる。
案じていた通り、部長がその話題に触れてきた。
俺も反論してやりたいが、いかんせん気力が湧かない。
だから、じっと休むことに集中した。

律「こいつも寝たフリして、全部聞えてんだろ~?」

律「黙秘のつもりか~? デコピンで起こしてやろう」

澪「やめときなよ」

唯「そうだよ。かなり眠いって言ってたし、そっとしといてあげよ?」

律「それだよ。こいつが早起きしてんだよなぁ。それって唯と登校するためだろ?」

律「だったらさ、やっぱ、こいつも唯に気があるんじゃね?」



298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:21:27.59 ID:1qYNd8dxO

唯「そ、それは…いや、ちがくて、えっと…」

唯「そうだよ、親切だよっ! 親切心っ!」

律「親切?」

唯「うん。私が待ってるって言ったから、遅刻しないように来てくれてるんだよ」

澪「へぇ…」

紬「いい人よね、岡崎くんって」

唯「だよね~」

律「なぁんか、腑に落ちねぇなぁ…」

キーンコーンカーンコーン…

律「あ、鐘鳴った」

澪「戻ろうか」

紬「うん」

そこで会話は聞こえなくなった。
3人とも言葉通り戻っていったようだ。
直にさわ子さんがやってくるだろう。俺も起きなくては…。
話が気になって、あまり回復できなかったが…。

―――――――――――――――――――――



299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:21:51.00 ID:cUBlBpOS0

………。

―――――――――――――――――――――

つん つん

頬に感触。

声「起きて~、岡崎くん」

続いて、すぐそばで声がした。
目を開ける。

唯「おはよ~」

…近い。すごく。
ちょっと前に顔を出せば唇が触れそうな距離。
俺は多少動揺しつつも、身を起こして顔を離した。

唯「もう授業終わったよ」

朋也「あ、ああ…」

4時間目…そう、俺は途中で眠ってしまったんだ。
担当の教師が、寝ようが内職しようが、なにも言わない奴だったから、気が緩んで。
教師としてはグレーゾーンな奴なんだろうけど、生徒にとってはありがたい存在だった。

唯「よく寝てたね」

朋也「ああ、まぁな」



300 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:22:59.60 ID:1qYNd8dxO

朋也「ん…」

伸びをして体をほぐす。

唯「寝顔かわいいんだね」

突っ伏していたはずだが…
無意識に頭の位置を心地いいほうに変えていってしまったのだろう。
それで、こいつに寝顔をさらしてしまっていたのだ。

朋也「勝手にみるな」

唯「え~、無理だよ。どうしてもみちゃう」

朋也「授業に集中しろ」

唯「それ、岡崎くんが言っても全く説得力ないよ…」

春原「岡崎~。飯」

そこへ、春原がだるそうにやってくる。

朋也「動詞を言え、動詞を」

春原「あん? んなもん、僕たちの仲なら、なくても通じるだろ?」

朋也「わかんねぇよ。飯みたいになりたい、かと思ったぞ」

春原「なんでそんなもんになりたがってんだよっ、食われてるだろっ!」

朋也「いや、残飯だから大丈夫だろ」



301 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:23:16.64 ID:cUBlBpOS0

春原「廃棄っすか!? 余計嫌だよっ」

朋也「じゃあ、ちゃんと伝わるように今度から英雄風にいえ」

春原「ひでお? 誰だよ」

朋也「えいゆう、だ」

春原「英雄ねぇ…そんなんでほんとに伝わんのかよ」

朋也「ああ、ばっちりだ」

春原「わかったよ、なら、やってやるよ…」

春原「じゃ、もういこうぜ」

朋也「ああ」

立ち上がる。

唯「あ、待ってっ。今日は学食だよね? だったらさ、一緒に食べない?」

春原「またあの時のメンバー?」

唯「うん」

春原「まぁ、別にいいけど…」

唯「岡崎くんは?」



302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:24:33.84 ID:1qYNd8dxO

朋也「俺も、別に」

唯「よかったぁ」

うれしがるほどのことでもないような気もするが…。
賑やかなのが好きなんだろう、こいつは。

唯「じゃ、みんなに言ってくるね」

朋也「俺たちは先いって席取っとくぞ」

唯「うん、よろしくね。それじゃ、またあとで!」

―――――――――――――――――――――

無事席の確保ができ、平沢たちも合流した。

唯「やっほ」

律「おう、ご苦労さん」

春原「あん? おまえ、なに普通に座ってんだよ」

春原「おまえの席はあっちに確保してるから、移れよ」

春原が指さすゾーン。ダストボックスの目の前だった。
なんとなく不衛生な気がして、みんな避けている場所だ。
実際、そんなことはないのだろうけど、気分の問題だった。

律「あんたが行けよ。背景にしっくりくるだろ」



303 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:24:53.91 ID:cUBlBpOS0

春原「ははっ、おまえの自然に溶け込みそうな感じには負けるさ」

律「おほほ、そんなことないですわよ。あなたなんて背景と判別がつきませんもの」

春原「………」
 律「………」

無言でにらみ合う。

唯「あわ…ふ、ふたりとも、やめようよ…」

澪「律…なんでそう、すぐいがみ合おうとするんだ?」

律「えぇっ? 今のはあっちが先だったじゃんっ!」

春原「けっ…」

紬「春原くん…仲良くしましょ?」

春原「ムギちゃんとなら、喜んでするけどね」

律「ムギはいやだってよ」

春原「んなことねぇよっ! ね、ムギちゃん?」

紬「えっと…ごめんなさい、距離感ブレてると思うの」

春原「ただの他人でいたいんすか!?」

律「わははは!」



305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:26:04.11 ID:1qYNd8dxO

久しぶりだが、この流れも変わらないようだった。

―――――――――――――――――――――

唯「そういえばさぁ、選挙っていつだったっけ?」

和「今週の金曜日ね」

唯「じゃ、もうすぐだねっ」

和「そうね」

律「絶対和に投票するからな」

紬「私も」

澪「私だって」

唯「私も~」

和「ありがとう、みんな」

春原「なに? CDでも出してるの?」

和「…どういうこと?」

春原「ほら、CD買ったらさ、その中に投票券が入ってるっていうあれだよ」

和「某アイドルグループの総選挙じゃないんだけど…」



306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:26:22.29 ID:cUBlBpOS0

律「んなお約束ネタいらねぇって」

春原「ふん、言ってみただけだよ」

和「あ、そうだ。話は変わるんだけど、あなたたち、最近奉仕活動してるんですってね」

朋也「やらされてるんだよ。今までの遅刻を少し大目にみてくれるって話だからな」

和「そういう裏があるってことも、一応聞いてるわ」

唯「和ちゃん、なんか情報いっぱい持ってるよね」

和「そうでもないわよ」

律「この学校の重要機密とか、校長の弱みとかも握ってるんじゃないのか?」

和「何者よ、私は…っていうか、機密なんてそんなドス黒いものあるわけないでしょ」

律「てへっ」

春原「かわいくねぇよ」

律「るせっ」

和「まぁ、それで、昨日もあなたが書類整理してくれたって聞いたの」

春原「ああ、あれね」

和「けっこう大変だったでしょ」



308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:27:30.44 ID:1qYNd8dxO

春原「まぁね」

和「あれ、私が選挙管理委員会に提出するものだったのよ」

和「それで、期限が昨日までだったんだけど、整理が終わってなくてね」

和「すぐにやらなきゃいけなかったんだけど、どうしても外せない用事ができちゃって…」

和「でも、先生から、代打であなたにやってもらうから大丈夫だって、そう背を押してもらったの」

和「本当に助かったわ。遅れたけど、この場を借りてお礼を言うわね」

和「ありがとう」

春原「う~ん…言葉だけじゃ足りないねぇ」

朋也「気をつけろ、こいつ、体を要求してくるつもりだぞ」

春原「んなことしねぇよっ!」

唯「………」
紬「………」
澪「………」
和「………」
律「…引くわ」

春原「は…」

春原「岡崎、てめぇ!」



309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:28:03.09 ID:cUBlBpOS0

―――――――――――――――――――――

………。

―――――――――――――――――――――

放課後。
俺と春原はまたさわ子さんに呼び出され、空き教室にいた。

さわ子「今日からは、真鍋さんの手伝いをしてもらうわ」

春原「誰?」

さわ子「あんたたち、親しいんじゃないの?」

春原「いや、だから、そいつ自体知らないんだけど…」

さわ子「真鍋和さんよ。同じクラスでしょうに」

春原「真鍋和…?」

朋也「昼に一緒に飯食ったあのメガネの奴だろ」

春原「ああ…でも、そんな名前だったっけ?」

朋也「前にフルネーム聞いただろ」

春原「そうだっけ。忘れちゃったよ」

さわ子「向こうからのオファーだったから、てっきり親しいんだと思ってたのに」



310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:29:18.27 ID:1qYNd8dxO

朋也「そんな親しいってほどでもねぇよ…つーか、オファー?」

それは、俺たちをわざわざ指名してきたということだ。
どういう意図なのか全く読めない。

さわ子「ええ。まぁ、詳しいことは本人から聞いてちょうだい」

―――――――――――――――――――――

さわ子さんに言われ、生徒会室に向かった。
聞けば、通常、役員が決まるまで使われることはないそうだ。
新生徒会が始動して、初めて活用されるらしい。

春原「なんでこんなとこにいるんだろうね」

朋也「さぁな」

がらり

戸を開け、中に入った。

―――――――――――――――――――――

声「遅かったわね」

教室の奥、一番大きい背もたれつきのイスがこちらに背を向けていた。
そこから声がする。
くるり、と回転し、こちらを向いた。

和「さ、掛けて」




312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:30:40.70 ID:NTPMRZDvP

>くるり、と回転し、こちらを向いた。
これいつかやってみたい





311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:29:43.39 ID:cUBlBpOS0

朋也「あ、ああ…」

春原「………」

異様な気配を感じながらも、近くにあった椅子に腰掛ける。

和「先生から話は聞いてると思うけど、私の手伝いをしてもらうわ」

しん、とした部屋に声が響き、次第に消えていった。
…なんだ、この緊張感。

朋也「…ひとつ訊いていいか」

和「なに?」

朋也「なんで俺たちなんだ」

和「それはね…二つ理由があるわ」

立ち上がり、ゆっくりと歩き出す。

和「ひとつは、私の、一年から地道に作り上げてきた政党から人が離れたこと」

こちらに近づいてくる。

和「ふたつめは…」

ぽん、と俺と春原の肩に手を置く。

和「…あななたちが悪(あく)だからよ」



313 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:30:54.40 ID:1qYNd8dxO

顔を見合わせる。
大丈夫か、こいつ…と目で訴えあっていた。

和「いい? 政治は綺麗事だけじゃ動かないの」

言いながら、離れて歩き出した。

和「時には汚いことだってしなきゃいけない…理想を貫くとはそういうことよ」

春原「あー…あのさ、そういう遊びがしたいんだったら、友達とやってくんない?」

和「遊び? 私がやっていることが遊びだって言いたいの?」

春原「ああ、なんか、キャラ作って遊びたいんだろ? 僕たち、そんなの…」

和「トイレットペーパー泥棒事件」

びくり、と春原が反応する。

和「二年生のとき、あったわよね」

春原「………」

確かにあった。
男子トイレのストック分が丸々なくなっていたとか、そんなセコい事件だった。

和「あれね、現場を見ていた人間がいたの」

和「いや…正確には押さえていた、かしら」



314 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:31:19.34 ID:cUBlBpOS0

窓に寄って行き、外を見る。

和「写真部の子がね、外で撮影していたんですって」

和「それで、校舎が写った写真も何枚かあったの」

和「その中にね…あったのよ」

ごくり、とツバを飲み込む春原。

和「金髪が、トイレットペーパーのようなものを抱えている姿が」

…おまえが犯人だったのか。

和「私はそのネガを買い取って、その子の口封じもしたわ」

春原「な…なんで…」

和「いつかなにかあった時、取引の材料になるんじゃないかと思ってね」

どんぴしゃでなっていた。

春原「う…嘘だろ…」

和「遊びじゃないって、わかってくれたかしら?」

春原「うぐ…は、はい…」

和「でもね、だからこそリスクが高いのよ」



315 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:32:36.90 ID:1qYNd8dxO

和「こんなことをしていると、こっちだって、ひとつミスれば即失脚してしまう」

和「ぎりぎりのところでやっているの」

和「だから、今になって保守派に鞍替えした人間も出てきてしまったのだけどね」

和「そこで、あなたたちの出番というわけよ」

朋也「善人を懐柔するより、最初から悪人を使ったほうが早いってことか」

和「そういうことね。なかなか物分りが早いわね」

和「知ってる? あなたは今日、本来なら奉仕活動は免除されていたの」

朋也「遅刻しなかったから…だろ?」

なんとなく、俺もそれっぽく言っていしまう。

和「ええ。でも、無理いって呼んでおいて正解だったわ」

和「春原くんだけじゃ、少し不安を感じるから」

春原は、その独特の小物臭を嗅ぎ取られていた。

朋也「それで、俺たちはなにをすればいいんだ」

暗殺か、ゆすりか、ライバルのスキャンダルリークか…
内心、ちょっとドキドキし始めていた。

和「まずはこの選挙ポスターを校内の目立つ場所に貼ってきてくれる?」



316 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:32:58.41 ID:cUBlBpOS0

そう言うと、どこからかポスターの束を取り出し、机の上に置いた。
案外普通のことをするようだ。

和「それが終わったら一旦戻ってきてね」

朋也「ああ、了解」

―――――――――――――――――――――

春原「なぁ、岡崎。僕たち、ヤバイのと絡んじゃってるんじゃない?」

朋也「かもな…でも、なんかおもしろそうじゃん」

春原「おまえ、ほんとこわいもの知らずだよね…」

朋也「おまえほどじゃねぇよ、コソ泥」

春原「コソ泥いうなっ!」

朋也「大丈夫だって、事件はもう風化してるんだしさ」

朋也「そのワードからおまえにつながることなんてねぇよ」

春原「そういうの関係なしに嫌なんですけどっ!」

―――――――――――――――――――――

掲示板、壁、下駄箱…はてはトイレにまで貼った。
今は外に出て、校門に貼りつけている。



318 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:34:04.79 ID:1qYNd8dxO

朋也「もういいよな。戻るか」

春原「ちょっとまって。ついでに貼っておきたいとこあるから」

朋也「あん? どこだよ」

春原「おまえもくる?」

朋也「まぁ、一応…」

春原「じゃ、いこうぜ」

―――――――――――――――――――――

やってきたのは、ラグビー部の部室。
今は練習で出払っていて無人だ。
春原は得意満面でその扉に貼り付けていた。
どうやらいやがらせがしたかっただけらしい。

春原「よし、帰ろうぜ」

朋也「いいのか、んなことして」

春原「大丈夫だって」

声「なにが、大丈夫だって?」

春原「ひぃっ」

ラグビー部員「てめぇ…」



320 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:34:26.30 ID:cUBlBpOS0

振り向くと、ラグビー部員がご立腹な様子で立っていた。

ラグビー部員「春原、おまえ、今部室になに…」

ポスターを見て、止まる。

ラグビー部員「真鍋…和…」

少し腰が引けていた。

ラグビー部員「おまえら、あの人の使いか…?」

朋也「ああ、そうだけど…」

ラグビー部員「そ、そうか、がんばれよ…」

それだけを言い残し、運動場の方に引き返していった。

春原「…ほんと、なに者だよ、あの子」

朋也「…さぁな」

―――――――――――――――――――――

春原「ただいま帰りましたぁ…」

中に入ると、真鍋は携帯を片手に、誰かと話し込んでいた。

和「…ええ、そうね。いや、あの件はもう処理したわ。ええ、じゃ、あとはよろしく」



321 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:37:12.74 ID:1qYNd8dxO

ぴっ、と電源を切り、こちらを向く。

和「ご苦労様」

春原「いえいえ…和さんもお疲れさまっす」

完全に媚びまくっていた。

和「今日のところはこれだけでいいわ」

春原「そっすか。じゃ、お疲れさまっした」

足早に去っていこうとする。

和「まって、まだ伝えておきたいことがあるから」

春原「…なんでしょう?」

和「ここでのことは絶対に口外しないこと」

和「指示はここで出すから、
  この場以外でその内容を口に出さないこと。質問、意見も一切禁止」

和「私たちは普段どおりに接すること」

和「以上のことを守ってほしいの」

春原「わかりましたっ! 死守するっす!」

必死すぎだった。



322 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:37:45.21 ID:cUBlBpOS0

和「それから、岡崎くん。あなた、配布係だったわよね」

朋也「ああ」

和「じゃ、明日、これをそれとなく配ってほしいんだけど」

俺に三枚の封筒を渡してきた。
それぞれに名前が書いてある。

朋也「これは…?」

和「それは、うちのクラスの各派閥の中心人物に宛てたものよ」

和「そこにある内容を飲ませれば、今度の選挙で結構な規模の組織票が得られるわ」

和「直接交渉は危険だからね…そういう形にしたの。頼んだわよ、岡崎くん」



325 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 16:38:47.99 ID:1qYNd8dxO

朋也「でも、形として残ったほうが危険なんじゃないのか」

和「大丈夫。私が書いたものだってわからないから」

朋也「それなのに、おまえに入るのか」

和「ええ。いろんな利権が複雑に絡んでいるからね。結果的に私に入るわ」

そんな勢力図がうちのクラスにうずまいていたとは…。
…というか、ドロドロとしすぎてないか?

和「これが可能になったのは、
  岡崎くんが配布係であったことと、私との接点が薄いことが決め手ね」

和「感謝してるわ」

いい手駒が手に入って…と続くんだろうな、きっと。

―――――――――




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[ 2011/12/31 04:13 ] クロス | CLANNAD | CM(0)

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