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朋也「軽音部? うんたん?」#9 【クロス】


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朋也「軽音部? うんたん?」#index




598 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:57:25.27 ID:cUBlBpOS0

4/21 水

唯「へいっ、憂、パァスッ!」

憂「わ、軌道がめちゃくちゃだよぉ」

唯「あ~、ごめんごめ~ん」

このふたりは登校中、小石を蹴って、ずっとキープしたまま進んでいた。

憂「岡崎さん、いきますよっ」

俺にパスが回ってきた。
とりあえず受ける。

朋也「これ、ゴールはどこなんだ」

唯「教室だよっ」

朋也「無理だろ…」

唯「大丈夫、階段とかはリフティングして登るからっ」

そういう問題でもない。

朋也(まぁいいか…)

小石を蹴って、前方に転がす。

唯「お、いいとこ放るねぇ。フリースペースにどんぴしゃだよ」



599 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:57:58.64 ID:cUBlBpOS0

唯「キラーパスってやつだね、見事に裏をかいてるよっ」

そもそも敵なんかない。

朋也(ふぁ…ねむ…)

眠気を感じながらも、はしゃぐ平沢姉妹をぼうっと眺めていた。
結局、この後小石は溝に吸い込まれ、そこでゲームセットになってしまったのだが。

―――――――――――――――――――――

………。

―――――――――――――――――――――

昼。

澪「ひっ! り、律っ…」

律「あん? なんだよ」

澪「い、今あそこの影からこっちをじっと見てる人が…」

律「どこだよ…そんな奴いねぇぞ」

澪「あ…そ、そうか…」

唯「澪ちゃん、こんな昼間から幽霊なんか出ないよ」

律「あー、そうじゃなくてな、こいつさ…」



600 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 20:58:31.34 ID:cUBlBpOS0

部長が話し出す。
秋山が、朝から誰かの視線を感じて仕方がなく、気味悪がっている…とのことだった。

律「そんで、マジで一人、澪を舐め回すように見てた奴がいたんだけどさ…」

制服の胸ポケットに手を突っ込み、なにやら取り出した。

律「詰め寄ったら、逃げてったんだけど…これ、落としてったんだよな」

プラスチックのカード。
表面には、秋山澪ファンクラブ、と印字され、秋山本人の写真が貼ってあった。

和「ぶっ!…げほげほっ」

真鍋が突然むせていた。
注目が集まる。

唯「和ちゃん、大丈夫?」

和「え、ええ…」

どこか動揺した様子でハンカチを取り出し、口周りを拭き取る真鍋。

和「そ、それで、なにか直接被害はあったの?」

澪「いや…なにもないけど…」

律「でもさぁ、じっと見られてるってのも、なんか目障りじゃん?」

律「だから、どうにかしてやりたいんだけどなぁ…」



601 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:00:16.00 ID:1qYNd8dxO

春原「そんなの簡単だよ。そのファンクラブの会員どもが犯人なんだろ?」

春原「だったらさ、そいつらをちっとシメてやればいいんだよ」

血の気の多いこいつらしい意見だった。

律「やっぱ、それしかないのか…」

澪「そ、そんな…暴力はダメだ」

律「でもいいのか? このまま監視されるようなマネされ続けて」

澪「それは…」

春原「まぁ、いいから、僕にまかせとけって」

春原「ちょうど食べ終わったとこだしさ、今から軽く行ってきてやるよ」

春原「おい部長、そのカードって、持ってた奴のことなんか書いてるか」

律「いや…書いてないな」

春原「ちっ、じゃあ、一から調べるしかないか…」

律「待て、私も行くぞ。こいつの持ち主は顔割れてるからな」

春原「お、そっか。でも、足手まといにはなるなよ」

律「へっ、そっちこそ」



602 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:00:40.66 ID:cUBlBpOS0

好戦的なふたりが、息巻いてテーブルから離れていった。

澪「あ、ちょっと待って…」

止める声にも振り向かず、どんどん先へ進んでいく。

澪「はぁ…どうしよう…」

紬「私も、行ってくるね」

琴吹が席を立った。

澪「え…そんな、ムギまで…」

紬「心配しないで。私はあのふたりが無茶しないか、見ておくから」

澪「なら、私も…」

紬「澪ちゃんたちはまだ食べ終わってないでしょ? ゆっくりしていって」

紬「それじゃ」

言って、ふたりの後を追っていった。

澪「ああ…なんでこんなことに…」

和「琴吹さんがいれば、とりあえずは心配することないんじゃないかしら」

唯「そうだよ、ムギちゃんなら、圧倒的な力で制圧できるから、大丈夫だよっ」



604 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:04:09.51 ID:cUBlBpOS0

澪「って、全然大丈夫じゃないだろ、それはっ」

唯「うそうそ、話し合いになると思うよ、きっと」

澪「まぁ、それなら…」

唯「でも、澪ちゃんてやっぱりすごいよね。ファンクラブなんてさ」

唯「澪ちゃん、美人だから、人気あるもんね。男の子にも、女の子にも」

澪「そ、そんなことないぞ、別に…」

唯「そんなことあるよ。女の私から見ても可愛いって思うもん」

唯「岡崎くんも、そう思わない?」

朋也「俺か? そうだな…」

さらさらの長い黒髪、白い肌、
ちょっと釣り目がちな大きい目、ボリュームのある胸…
特徴もさることながら、顔も綺麗に整っている。
これなら、男ウケも相当いいだろう。

朋也「俺も、美人だと思うけど。秋山は」

唯「だよね~」

澪「あ…あ…あぅ…」

唯「あ、顔真っ赤だぁ、かわいい~」



605 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:05:42.85 ID:1qYNd8dxO

澪「う、うるさいうるさいっ」

照れ隠しでなのか、ばくばくと弁当を口にし始めた。
その様子を、なんとなく眺めていると…

和「あとでちょっと話があるんだけど」

真鍋が小声で俺に耳打ちしてきた。
なんだろう…またなにかやらされるんだろうか。

―――――――――――――――――――――

朋也「話って、なんだ」

和「澪のファンクラブのことよ」

朋也「あん?」

予想外の単語が出てくる。
てっきり、また生徒会関連での仕事の依頼だと思っていたのだが…。

和「これ、なんだかわかる?」

朋也「ん…?」

真鍋が俺に見せてくれたのは、秋山のファンクラブ会員証。
それも、会員番号0番だった。クラブ会長とまで書いてある。

朋也「おまえが創ったものだったのか、あいつのファンクラブ」



606 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:06:15.31 ID:cUBlBpOS0

和「違うわ。これは、譲り受けたの。ファンクラブの創設者からね」

朋也「どういうことだ?」

和「このファンクラブを作ったのはね、前生徒会長なの」

和「私の先輩…直属の上司だった人ね」

朋也「はぁ…」

いや、待てよ、それなら…

朋也「まぁ、なんでもいいけどさ、おまえが現会長なんだろ?」

朋也「だったら、その権限で、末端のファンにマナーを守るよう勧告してやれないのか」

和「それは…無理ね、多分」

朋也「どうして」

和「おそらく、すでに新しく会長の座についた人間がいるんでしょうから」

和「私がなにもしていないのに、活動が活性化してるのがいい証拠よ」

朋也「おまえに断りもなくそんなことになるのか」

和「ええ、十分なりえるわ。それも、私自身に責任の一端があるからね」

朋也「なんかしたのか」



607 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:07:49.53 ID:1qYNd8dxO

和「したというか…何もしなかった、ってことね」

朋也「……?」

どういうことだろう…。

和「私、進級と同時にクラブ会長の任をまかされてたんだけど…ほったらかしにしてたのよ」

俺が把握できないでいると、真鍋がそう続けてくれた。

和「きっと、なんの音沙汰もないことに不満の声が上がったんでしょうね」

和「それで、業を煮やした会員たちが、会長を決め直したってところでしょう」

朋也「ああ…そういうことか」

和「今となってはもう、この会員証には何の価値もないわ…」

和「だから、あなたと春原くんには、できるだけ澪を守ってあげて欲しいの」

和「いくらお遊びとはいえ、あの人が組織した部隊だから…女の子だけじゃ、キツイと思うし」

朋也「部隊って、おまえ…たかがファンクラブだろ」

前から思っていたが、こいつは芝居がかって言うのが好きなんだろうか。

和「そうとも言い切れないわ…だって、あの人だもの…」

震えたように、自分の身を抱きしめた。
あの真鍋が怯えている…



608 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:08:21.57 ID:cUBlBpOS0

ファンクラブの名が出た時もむせて、動揺していたが…
前生徒会長…かなりの人物だったに違いない。

和「今回ばかりは、生徒会の力も使えないわ」

和「もし、万が一、私があの人に、形としてでも、歯向かってしまった事が耳に入れば…」

ぶるっとひとつ身震いした。

和「…考えたくもないわ」

朋也「いや、でも、もう卒業してるんだろ? だったら…」

和「甘いっ!」

朋也「うぉっ…」

珍しく真鍋が声を張り上げたので、思わず後ずさりしてしまう。

和「確かに、首都圏に進学していったけど、子飼いの精鋭部隊がまだ現2、3年の中にいるの」

和「私も詳しくは知らされてないけど、存在するってことだけは確かなのよ…」

和「それも、役員会内はもちろん、会計監査委員会や生徒総会にまで構成員を潜り込ませているとか…」

和「確か、人狼、とかいう…」

和「とにかく、その子らに粛清の命が入れば、私とてただじゃすまないわ」

和「だから、滅多なことはできないの。ごめんなさいね」



609 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:09:39.19 ID:1qYNd8dxO

朋也「いや…いいよ。なんか、おまえも大変そうだし…」

和「そう…わかってくれて、うれしいわ」

一息つくと、かいた冷や汗をハンカチで拭っていた。

朋也(思ったより厄介な連中なのかな、秋山澪ファンクラブ…)

―――――――――――――――――――――

………。

―――――――――――――――――――――

放課後。軽音部部室。

律「おい、ヘタレ。ジュース買ってこいや」

春原「………」

律「聞いてんのか、こら、ヘタレ」

春原「ヘタレヘタレ言うなっ!」

律「だって、ヘタレじゃん。ラグビー部来た瞬間逃げるし」

昼休みのことだ。
こいつらが会員を脅しに行った先で、
なぜかラグビー部に立ち塞がれ、逆に追い返されたらしい。
まるで用心棒のような振る舞いで助けに来たそうな。
…これが、真鍋が侮れないと言っていた由縁なのかもしれない。



610 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:10:03.14 ID:cUBlBpOS0

バックに強力な味方をつけるだけの組織力があると、この一件から読めなくもない。

春原「2対1になったからだろっ」

律「絡みに行った方はひ弱そうだったし、頭数に入んないだろ」

律「結局、ラグビー部一人にびびってただけじゃん」

春原「ちがわいっ」

律「いいいわけは女々しいぞ、ヘタレ」

春原「ぐ…くそぉ…」

がちゃ ばたん!

扉が開かれたと思ったら、またすぐに閉められた。

梓「はぁ…はぁ…」

中野が息を切らし、座り込んでいた。

唯「どしたの、あずにゃん」

梓「なんか…外に変な人たちが…」

律「変な人たち?」
唯「変な人たち?」

梓「はい…なんか、澪命ってハチマキしてて…」



612 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:11:27.52 ID:1qYNd8dxO

澪「ひ…」

間違いない。ファンクラブの連中だ。

春原「おし、僕が全員ぶっ飛ばしてきてやるっ! 汚名挽回だっ!」

立ち上がり、肩を怒らせながら扉へと歩いていく。

律「そんなもん挽回してどうすんだよ、アホ…」

がちゃり

春原「うっらぁっ! うざってぇんだよ、ボケどもっ!」

男子生徒1「うわ…DQNだ」

男子生徒2「…死ね」

男子生徒3「軽音部に男は要らないし、普通」

男子生徒4「澪ちゃん見えたっ!」

男子生徒5「澪ちゃんっ」

春原「邪魔なんだよ、てめぇら全員っ!」

集まっていた男たちを払いのけていく。

春原「おら、帰れ帰れっ! ここは僕の食料庫だっ!」



613 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:11:47.05 ID:cUBlBpOS0

趣旨が変わってきていた。おまえは三橋か。

男子生徒「つか、なに、おまえ?」

階段を上がってきた男が春原の前に立ちふさがる。

春原「ああん? 見てわかんねぇのか、用心棒だよ、ヒョロ男くんよぉ」

男子生徒「俺たち、なんか危害加えるようなことした?」

春原「いるだけで迷惑なんだよぉ、ああん?」

男子生徒「いや、いちいちすごまなくていいけどさ…」

男子生徒「君と、そっちの…春原と岡崎だよね? 素行が悪くて有名な」

男子生徒「用心棒とかさ、不良がするわけないし、嘘だよね」

春原「マジだよ、ああん? ぶっとばされてぇか、おい?」

男子生徒「そんなことしたら、明日、ラグビー部に殺してもらうけど、おまえ」

春原「は、はぁん? じ、自分でこいよな…」

明らかに勢いが失速していた。

男子生徒「そんなことするわけないでしょ。バカか、やっぱ」

春原「ああ!? てめぇ…」



614 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:13:01.77 ID:1qYNd8dxO

男子生徒「いいの? ラグビー部、頼むよ?」

春原「……やっぱ、暴力はいけないよね」

速攻で心が折れていた。

男子生徒「だいたいさぁ、なんで君ら軽音部の部室にいんの? だめでしょ、男がいたら」

男子生徒7「うん、普通そうだよな」

男子生徒8「男マジいらねぇ」

男子生徒9「女の子同士だからいいのに」

口々に賛同し始めた。

男子生徒「澪ちゃんは、りっちゃんと付き合うべきなんだからさ」

春原「………は?」

その言葉に、春原だけでなく、俺たち全員が唖然とする。

男子生徒1「いや、澪唯いいって」

男子生徒2「王道で澪梓とか俺はいいな」

男子生徒3「王道は澪紬だって」

男子生徒4「それは邪道」



615 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:13:25.72 ID:cUBlBpOS0

にやつきながら、ぼそぼそと話し始めた。

春原「………」

春原「おい、岡崎っ」

ダッシュで俺の元に駆け寄ってくる。

春原「なんか、あいつら気持ち悪ぃんだけど…」

朋也「ああ…」

男子生徒「ねぇ、そのふたり、要らないから出入り禁止にしてよ」

廊下側から声をかけてくる。

唯「そ、そんなことしたくないよ…」

男子生徒「なんで? 唯ちゃんは男とか興味ないでしょ? 女の子の方がいいんだよね?」

唯「え、ええ? そんな…」

男子生徒3「あ、あれじゃね、男に気がある振りして、澪ちゃんの気を引くという」

男子生徒4「ああ、それだ」

男子生徒5「やべぇ、早くしないと澪ちゃん取られちゃうよ、りっちゃんっ」

唯「う、うぅ…」



617 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:14:38.29 ID:1qYNd8dxO

律「…あんたら、さっきからなに言ってんだよ」

律「私たちが女同士で付き合うとか…そんなのあるわけないだろっ」

男子生徒2「ツンデレ? 今の、ツンデレ?」

男子生徒6「厳密には違うよ」

男子生徒7「本心言うの恥ずかしいんじゃね?」

男子生徒8「ああ、それだ」

律「いい加減にしろってっ! あんたらがそういうのが好きなのはわかったよっ!」

律「でも、それを私たちに押しつけんなっつーのっ! そんな性癖ねぇんだよっ」

気圧されたのか、皆押し黙り、沈黙が流れる。

春原「ほら、わかったか。おまえらの方がいらねぇってよ。帰れ帰れ」

そんな中、春原が一番最初に声をあげた。

男子生徒「おまえら男ふたりが帰れ」

春原「ああ? 物分りの悪ぃ奴だな…」

男子生徒「バカに言われたくねぇよ」

春原「…てめぇ、大概にしとけよ、こら」



618 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:15:00.26 ID:cUBlBpOS0

本気で怒ったときの顔だ。
今にも殴りかかっていきそうな気迫で近づいていく。

男子生徒「…わかった。とりあえず、暴力はやめろ」

春原「………」

立ち止まる。

男子生徒「こうしよう。俺たちと勝負するんだ」

春原「勝負だぁ?」

男子生徒「ああ。そっちが勝ったら、今後軽音部と澪ちゃんには近づかない」

春原「んだよ、喧嘩なら今すぐやってもいいぜ」

男子生徒「だから、暴力はやめとけって言っただろ」

春原「じゃあ、なんなんだよ? 囲碁とか言わねぇだろうなぁ」

男子生徒「頭使うのは君らに不利だろうからな。そうだな…スポーツでどうだ」

春原「それじゃ、おまえらに不利じゃん、ヒョロいのしかいねぇしよ」

男子生徒「実際にやるのは俺らじゃないよ。用意した人間とやってもらう」

春原「はっ、プロでもつれてこなきゃ、勝てねぇぞ」

男子生徒「じゃ、勝負を飲むってことでいいか?」



619 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:16:08.85 ID:1qYNd8dxO

春原「おお、あたりまえだ」

朋也「まて、そっちが勝ったらどうするつもりだ」

男子生徒「まず、君らに軽音部から消えてもらう。部員と関わるのも自重しろ」

男子生徒「それから、澪ちゃん」

澪「え…」

男子生徒「澪ちゃんには、プライベートなことから、なにからなにまで…」

男子生徒「俺らが知りたいことは、全て教えてもらうよ」

男子生徒「それと、俺ら以外の男と喋るの禁止ね」

澪「そ、そんな…」

律「むちゃくちゃだ、そんなのっ」

春原「言わせとけよ、どうせ僕らが勝つしね」

律「んな無責任なこと言って…負けたらどうすんだよっ」

春原「それはねぇっての。で、競技はなんだよ」

男子生徒「そっちに決めさせてやる」

春原「ふん…じゃあ、バスケだ。3on3な」



621 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:16:38.45 ID:cUBlBpOS0

朋也「おい、春原…」

男子生徒「あと一人は?」

春原「アテがあるんだよ。だから、いい」

男子生徒「そうか。わかった。じゃあ、試合は3日後の土曜。詳細はまた後で伝える」

春原「ああ、わかった」

勝負の約束を交わすと、男は周りの連中をぞろぞろと引き連れて去っていった。

朋也「おまえ、3on3って、まさか俺にもやらせるつもりじゃないだろうな」

春原に近寄っていき、声をかける。

春原「もちろん、そのつもりだけど」

朋也「俺が肩悪いの知ってるだろ。俺はできねぇぞ」

春原「おまえは司令塔でいいよ。シュートは任せろ」

朋也「3on3で一人パス回ししかできない奴がいるなんて、相当のハンデだぞ」

朋也「おまえ、わかってんのかよ。一人はアテがあるとか言ってたけどさ、もう一人他に探せよ」

春原「ははっ、僕に頼み事できる知り合いが、そんなにいるわけないじゃん」

朋也「………」



622 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:18:07.78 ID:1qYNd8dxO

ぽかっ

春原「ってぇな、あにすんだよっ!」

朋也「土下座して運動神経いい奴に頼んで来いっ」

春原「おまえでいいっての。ほら、バスケってさ、チームワークが重要じゃん?」

春原「知らない奴より、おまえとの方が連携も上手くいくって」

朋也「だとしても、それだけじゃ無理なの」

春原「大丈夫だって。どうせ、あっちも大した奴用意できねぇよ」

春原「バスケ部のレギュラーとかだったら、ちょっとキツイかもだけどね」

朋也「………」

そこが気にかかっていた。
あの男は、妙に自信があるように見えた。
それは、つまり、レギュラークラスも用意できるということなんじゃないのか。

春原「な? 楽勝だって」

朋也「はぁ…簡単に言うな」

春原「ま、さっさと三人揃えて、練習しようぜ」

しかし、勝負は三日後。
相手も、俺たちも時間がない。



623 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:18:29.74 ID:cUBlBpOS0

そんな短期間で交渉が上手くいくかといえば、そうは思えないし…
俺たちが付け焼刃の練習で戦えるようになるとも、断言できない…
条件は、五分のような気もする。

梓「…あの、なにがどうなってるんですか」

律「ん、ああ…」

―――――――――――――――――――――

梓「ファンクラブ…ですか」

騒動が収まり、一度気を落ち着けるため、コーヒーブレイクを取っていた。

律「ああ、気持ち悪い奴らだよ。勝手に私たちがレズだと思ってんだもんな」

紬「あら…でも、いいじゃない、女の子同士、なかなか素敵だと思うな」

律「…いや、まぁ、ムギが言うとそんなでもないけどさ…ソフトだし」

律「でも、あいつらは自分の価値観押しつけてくるとこが気に入らないんだよ」

律「ああいう手合って、女に対してもそういう傾向があったりするんだよな」

律「理想からちょっとでもズレてると、異様に毛嫌いしたりするんだぜ」

律「ほんと、自分勝手なお子様だよ」

春原「ま、僕らがコテンパンにノしてやるから、大船に乗ったつもりでいろよ」



627 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:19:47.18 ID:1qYNd8dxO

はぁ~、っと拳に息をかけた。
時代錯誤な表現が多すぎて、頼りなく映る。

律「おまえ、絶対勝てよ? そんだけ豪語するんだからな」

春原「ああ、楽勝さ。すでに勝ってるようなもんだよ」

そううまくいけばいいのだが…。

―――――――――――――――――――――

春原「おー、ここだここだ」

やってきたのは、文芸部室。
文化系クラブの部室が宛がわれている旧校舎の一階に位置している。
軽音部の部室である第二音楽室からは、階段を二度下るだけでたどり着けた。

朋也「おまえ、こんなとこに奴に知り合いなんていたのか」

春原「なに言ってんだよ、おまえもよく知ってる奴だって」

朋也「あん?」

俺と春原の共通の知人で、文芸部員?
誰だろう…心当たりがない。

がちゃり

その時、部室のドアが開かれた。



628 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:20:16.42 ID:cUBlBpOS0

男子生徒「…ん? おまえら…」

春原「よぅ、ひさしぶりだなっ、キョン」

朋也(ああ…こいつか)

キョン「ああ…久しいな、ふたりとも」

このキョンという男は去年、俺たちふたりと同じクラスだった奴だ。
素行が悪いわけでもなく、ごく普通の一般生徒だったのだが、なぜか気が合った。
理屈っぽい奴で、なにかと俺たちの悪ふざけを止めてきたのだが、
よくつるんでいたことを思い出す。

ちなみに、キョンというのはあだ名で、本名は知らない。
周りからそう呼ばれていたので、俺たちもそれに倣ったのだ。

朋也「おまえ、文芸部なんて入ってたのか」

春原「あれ? おまえ、知らねぇの? ここ、文芸部じゃないんだぜ」

朋也「いや、はっきりそう書いてあるだろ」

教室のプレートを指差す。

キョン「あれは、裏側だ」

朋也「裏?」

キョン「表側に現在の部室名が書かれてある」

朋也「ふぅん…」



630 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:21:44.61 ID:1qYNd8dxO

春原「ま、とにかく、変な団体になっちまってるんだよ」

春原「そんで、おまえもその一味なんだよな」

キョン「まぁ、そうだな。でも、よく俺がここの人間だって知ってたな」

キョン「話したこと、なかっただろ、部活のこと」

春原「わりと有名だぜ、おまえらの部活。その部員もな」

キョン「相変わらず、くだらない事には詳しいんだな」

春原「いい情報網を持ってるって言ってくれよ」

キョン「はいはい…。で、今日はなんの用だ」

キョン「なにか用事があるんだろ。でなきゃ、おまえらがこんなとこ来るわけないもんな」

春原「お、察しがいいねぇ、さすがキョン」

キョン「ああ、それと、ひとつ訊いていいか」

春原「なに?」

キョン「そっちの女の子たちは、なんなんだ」

俺たちの後ろ、じっと黙って並んでいた軽音部の連中を指さした。

春原「ああ、こいつらはさ…」




631 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:21:49.59 ID:0XX6NZKd0

京アニが集まっていたとは……



632 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:22:06.70 ID:uvp/vcj8O

キョンくんwwwwwwwwwwwってwwwwwwwwwww





633 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:22:14.26 ID:cUBlBpOS0

春原は、どういった経緯でここまで一緒にやってきたのか、おおまかに説明していた。

キョン「へぇ…そんなことがあったのか」

春原「だからさ、3on3のメンバー、頼めない?」

キョン「まぁ、俺自身はやぶさかじゃないが…団長様がなんて言うかな」

春原「許可とってきてくれよ」

キョン「はぁ…わかったよ、善処してみる」

春原「お、センキュー。頑張れよっ」

背を向けて、ひらひらと手を振り、部室へと戻っていくキョン。

律「…あんたら、妙なのと付き合いあるんだな」

朋也「あいつのこと、知ってるのか」

律「知ってるもなにも、あたしらの学年で知らない奴がいたことの方が驚きだよ」

律「SOS団だかなんだかで、1、2年の頃、すげぇ暴れまわってたんだぜ?」

朋也「へぇ、そうだったのか」

律「っとにおまえは、やる気がないっていうか…そういうことに疎いんだな」

朋也「まぁな」



636 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:23:35.49 ID:1qYNd8dxO

唯「涼宮さんって人が、すごくギター上手かったよね」

律「ああ、一年の時の文化祭な…あれは、確かにすごかったな」

律「聞いた話だと、素人だったらしいぞ」

澪「そうだったのか? 信じられないな…」

梓「そんなにすごかったんですか?」

律「興味あるなら、映像あるから、今度見せてやるよ」

梓「ほんとですか?」

律「ああ。それと同時に蘇る、澪のしまパンの悲劇…」

ぽかっ

律「あでっ」

澪「思い出させるなっ」

秋山は顔を赤くして、涙目になっていた。

唯「あちゃ~、りっちゃん、地雷踏んじゃったね」

律「あれはお蔵入り映像だからな…マニアの間では高値で取引されているらしい」

澪「ええ!? う、嘘だろ…」



638 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:23:59.11 ID:cUBlBpOS0

へなへなと倒れこむ。

律「あー、うそうそ、立ち直れ、澪っ」

澪「………」

しゅばっと立ち上がる。

ぽかっ ぽかっ

律「いでっ! 二発かよっ」

澪「おまえが変な嘘つくからだっ」

―――――――――――――――――――――

がちゃり

キョン「………」

しかめっ面で出てくる。

春原「お、どうだった?」

キョン「…なんとか許可が下りたよ」

春原「やったな、さすがキョンっ」

キョン「今度カツ丼おごってもらわにゃ、割に合わん…」



640 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:25:19.15 ID:1qYNd8dxO

頭をさすりながら言う。
多分、なにかぶつけられたんだろう。
ドアの向こうからは、女と言い合いをする声と、
物が飛び交っているような音が聞えていたのだ。
なにかしらないが、ひと悶着あったんだろう。

春原「消費税なら、おごるよ」

キョン「セコいところは、相変わらずなんだな…」

―――――――――――――――――――――

律「おらおら、どしたーっ、全然入ってないぞぉ」

春原「おまえのパスが悪いんだよっ」

律「なにぃ、人のせいにするなっ」

グラウンド。
隅の方に設置された外用ゴールの前に集まった。
春原は、シュート練習。
俺とキョンは、1対1で、交互にディフェンスとオフェンスの練習をしていた。
軽音部の連中は、こぼれ球を拾ってくれたりしている。

朋也「キョン、ディフェンスはもっと腰落としたほうがいいぞ」

キョン「こんな感じか」

朋也「ああ、それでいい」

キョン「けっこうしんどいな、これは…」



641 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:25:39.99 ID:cUBlBpOS0

朋也「でも、文化部にしてはよく動けるほうだぜ」

キョン「そうか?」

朋也「ああ。あとはスタミナがあればいいんだけどな」

キョン「悪いな。何ぶん、体育会系なノリとは縁のない生活をしてきたもんでな」

朋也「もう一本いけるか?」

キョン「ああ、こい」

朋也「よし」

―――――――――――――――――――――

朋也「っはぁ…」

からからになった喉を水道水で潤す。
顔も、思いっきりすすいだ。
気持ちがいい。
こんな感覚、いつぶりだろうか。
はるか昔に味わったっきり、ずっと忘れていた。

澪「あの…これ、使ってください」

そこへ、秋山が恭しくタオルを持ってきてくれた。

朋也「ああ、サンキュ」



643 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:27:31.39 ID:1qYNd8dxO

受け取って、顔についた水気を拭き取る。

朋也「これ、洗って返したほうがいいよな」

澪「いえ、大丈夫です」

朋也「そうか? じゃあ…はい」

タオルを差し出して、返す。

澪「あ…はい」

澪「………」

澪「あの…すみませんでした」

朋也「なにが?」

澪「勝負なんて、させちゃって…」

朋也「いや…春原の奴が勝手に受けたのが悪いんだから、気にすんなよ」

澪「でも…」

朋也「いいから。な?」

澪「はい…」

朋也「それとさ、敬語も使わなくていいよ。俺にも、春原にも、キョンにもな」



644 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:28:05.64 ID:cUBlBpOS0

朋也「ちょっと不自然だろ? タメなんだからな」

澪「え…あ…はい」

朋也「はい?」

澪「う…うん…」

朋也「それでいい」

澪「あぅ…」

ぽんぽん、と肩を軽く叩き、グラウンドへ戻った。

―――――――――――――――――――――

春原「だぁー、疲れたぁ…」

キョン「同じく…」

朋也「俺も…」

三人とも、地面に寝転がる。
暗くなり、もうボールがよく見えなくなっていた。
練習も、ここで終わりだった。

春原「あしたは朝錬するからな」

寝転がったまま言う。



646 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:29:21.89 ID:1qYNd8dxO

朋也「部活かよ…」

春原「それくらい徹底してやって、大差で勝ってやるんだよ」

朋也「なんでそんなにやる気なんだ、おまえは」

春原「僕をバカ呼ばわりしたあの野郎が悔しさで顔を歪めるとこ見たいからね」

朋也「あんがい根に持ってたんだな、おまえ…」

春原「まぁね」

キョン「…それにしても、おまえら、なんか変わったよな」

キョンがぽつりとそう漏らした。

春原「なにが?」

キョン「こういうことに、真剣になるような奴らでもなかったろ」

朋也「………」

それは、確かにそうだ。
いつだって、部外者でいて、傍観して…
必死に頑張るやつらを、斜めから見おろしていた。

キョン「いつもおちゃらけてて、楽しそうだったけどさ…」

キョン「どこか、懸命になることを避けてるっていうか…」



647 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:29:47.88 ID:cUBlBpOS0

キョン「わざと冷めたようにしてた気がするんだよ」

キョン「でも、今は他人のために、こうまで頑張ってるしな」

キョン「なにか、あったのか」

朋也「………」

春原「………」

俺と春原は黙ったまま顔を見合わせた。
お互い、気づかないうちに、そんな熱血漢になってしまったのだろうか。

いや…そんなわけない。
こんなにも汗をかけるのは、あいつらのためだからだろう。
それは、春原も同じ想いのはずだ。

朋也「…別に、何もねぇよ」

春原「ああ。前と、全然変わってないけど?」

キョン「…そうか。まぁ、いいさ」

唯「お疲れさまぁ~」

平沢の声がして、体を起こす。
軽音部の連中が、こっちにやってきていた。
ボールの片づけが終わったんだろう。

唯「スポーツドリンクの差し入れだよぉ、どうぞ」



650 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:30:50.28 ID:1qYNd8dxO

朋也「お、サンキュ」

唯「はい、春原くん」

春原「なかなか気が利くじゃん」

唯「はい、どうぞ」

キョン「ああ、どうも」

三人とも受け取った。

春原「もう喉からからなんだよね、僕」

言って、プルタブを開け、一気に飲み始める。

春原「ぶぅほっ!」

いきなり噴き出した。

春原「って、なんでおしるこなんだよっ!」

律「わはははは! ひっかかりやがった!」



651 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:31:13.49 ID:cUBlBpOS0

春原「てめぇか、デコっ!」

律「うわぁ、おしるこが逆流して鼻から出てるよ、きったねぇーっ!」

春原「てめぇっ」

律「うひゃひゃひゃ」

いつものように子供の喧嘩が始まる。
緊張感のない奴らだった。

―――――――――――――――――――――




687 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:54:11.06 ID:WpfFlxSRO

律ちゃんのおし○こ…ゴクリッ





652 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:32:33.90 ID:1qYNd8dxO

4/22 木

憂「岡崎さん、土曜日にバスケットの試合するんですよね?」

憂「お姉ちゃんから聞きましたよ」

朋也「あ、ああ…」

憂「私、応援に行きますねっ」

朋也「ああ…ありがとな」

憂「はいっ」

まぶしい笑顔で返事をくれる。

朋也「おい、平沢、おまえどんなふうに話したんだよ」

唯「え? バスケの試合で大盛り上がりするよ~って感じかな?」

朋也「おまえな…けっこう重要なことがかかってんだぞ」

朋也「負けりゃ、これから先ずっと変なのにつきまとわれちまうんだ」

朋也「そうなったら、おまえだって変な事されるかもしれなんだぞ」

朋也「そんなの、俺は絶対…」

許すことができない…。
言いかけて、やめる。



653 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:33:01.35 ID:cUBlBpOS0

こいつになにかされるのは確かに嫌だが…
それは知人だからであって、なにも俺がそこまで強く拒むことはないだろうに…。

朋也(彼氏じゃあるまいし…)

唯「なに?」

朋也「いや…とにかく、そんな軽くないんだ」

唯「でも、楽しまなきゃ損だよ?」

朋也「いや、だから…」

唯「大丈夫。岡崎くんたちは勝つよっ。そんな予感がしてるんだ」

唯「私のカンって、よく当たるんだよ?」

屈託なく言う。
本当に事の重大さがわかっているんだろうか、こいつは…。

―――――――――――――――――――――

たんっ たんっ たんっ…

ボールが跳ねる音。
朝錬をする運動部のかけ声に混じって、グラウンドの方から聞えてくる。
音源に目を向けると、春原がドリブルをしているところだった。

朋也(あいつ、もう来てんのか…)



654 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:34:16.33 ID:1qYNd8dxO

信じられない…あの春原が。
そこまで本気で勝ちたいということか。

唯「あ、春原くんだ。おーいっ」

平沢が声を上げ、手を振る。
春原がこちらに気づき、駆け足でやってきた。

春原「やぁ、おはようっ」

唯「おはよ~」

憂「おはようございます」

朋也「おまえ、マジで朝錬やってんのな」

春原「おまえも今からやるんだよ」

朋也「マジかよ…」

春原「きのう言っただろ? おまえだって、僕の部屋から早く帰ってったじゃん」

そうなのだ。
昨夜は、こいつが早めに眠りたいと言い出して、日付が変わる前に帰宅していた。
俺も、体が疲れていたので、すんなりと眠ることが出来たのだが。

朋也「おまえが眠たいとか言ってたからだろ」

春原「ま、そうだけどさ…」



655 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:34:40.94 ID:cUBlBpOS0

春原「とにかく、やろうぜ」

朋也「はぁ…わかったよ。平沢、鞄頼む」

唯「あ、うん」

鞄を手渡す。

唯「あとで私も来るね」

憂「じゃあ、私も来ます」

朋也「ああ、わかった」

別れ、平沢姉妹は正面玄関の方へ歩いていった。

キョン「うお…おまえらがほんとに朝から来てるなんてな…」

そこへ、入れ替わるようにしてキョンが現れた。

キョン「明日はカタストロフィの日になるのか」

春原「いいとこにきたな、キョン。早速練習するぞ」

キョン「鞄くらい置きに行かせてくれよ」

春原「そんな時間はないっての。いくぞ」

キョン「やれやれ…」



656 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:35:49.28 ID:1qYNd8dxO

―――――――――――――――――――――

………。

―――――――――――――――――――――

昼休み。

唯「岡崎くん、春原くん、これ食べていいよ」

平沢がタッパーに入ったハチミツレモンを差し出してきた。

唯「ほんとは放課後の練習の後に出すつもりだったんだけど…」

唯「朝錬で疲れただろうからさ」

朋也「お、サンキュ」

春原「センキュー」

唯「あ、キョンくんの分も残しておいてあげてね」

朋也「ああ、わかった」

春原「皮だけ残しとけばいいよね」

唯「ダメだよ、実の部分も残さないと」

春原「それは保証できないなぁ」



657 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:36:07.71 ID:cUBlBpOS0

唯「じゃあ、春原くんは食べちゃダメっ!」

春原「冗談だよ、冗談」

言って、一切れつまんで口に放った。

春原「うまいね、これ」

唯「ほんとに?」

春原「ああ」

唯「よかったぁ」

俺もひとつ食べてみる。

朋也「お、マジだ。うまい」

唯「えへへ、作った甲斐があったよ」

律「おまえが作ったのか? 憂ちゃんじゃなくて?」

唯「うん、そうだよ」

律「へぇ、珍しいこともあるもんだ」

唯「私だってやる時はやるんだよっ、ふんすっ」

誇ったように息巻いていた。



659 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:37:21.45 ID:1qYNd8dxO

紬「私からも、よかったらこれ、どうかな」

弁当箱の蓋に黒い固形物を載せ、打診してくる。

春原「ムギちゃんからのものなら、もちろんもらうよっ」

春原「な、岡崎」

朋也「ん、ああ、まぁ」

紬「じゃあ、どうぞ」

俺たちの前に蓋が置かれる。

春原「でも、これって、なに?」

紬「トリュフよ」

朋也「トリュフって…あの、三大珍味の?」

紬「うん」

なんともスケールのでかい弁当だった。
俺も驚いたが、軽音部の連中も、真鍋さえも驚愕していた。

春原「ふぅん、なんか、おいしそうだねっ」

唯「とりゅふ?」

いや…約二名、知らない奴らがいた。



660 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:37:40.83 ID:cUBlBpOS0

春原「むぐむぐ…なんか、不思議な味わいだね、これ…」

紬「そう? よく食卓に出てくるだろうから、馴染み深いと思ったんだけど…」

それはおまえだけだ。

春原「でも、おいしいよ、ムギちゃん補正で」

紬「ふふ、ありがとう」

朋也(俺も食べてみよう)

もぐもぐ…
確かに、不思議な味わいだった、
まずくもないし、かといって、うまくもない…
正直、微妙だった。
庶民の舌には合わないんだろう。
おとなしく身の丈にあったシイタケあたりでも食べていた方がいいんだ、きっと。

澪「あの…よかったら、これもどうぞ」

秋山も琴吹に倣い、弁当箱の蓋に乗せ、俺たちに差し出してきた。

律「って、それ、おまえのメインディッシュ、クマちゃんハンバーグじゃん」

律「いいのか、主力出しちゃって」

澪「いいんだよ、頑張ってもらってるんだし」

朋也「いや、別に、そんなに気を遣ってもらわなくてもいいけど」



662 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:38:48.87 ID:1qYNd8dxO

澪「私がしたいだけだから…気にしないで」

朋也「そうか?」

澪「うん」

朋也「じゃあ、ありがたく」

箸でハンバーグを掴み、口に運ぶ。
もぐもぐ…

朋也「うん…うまい」

澪「あ、ありがとう…」

春原「じゃ、僕も」

春原もひとつ食べる。

春原「お、うめぇ」

澪「よかった…」

律「つか、澪、おまえ、敬語じゃなくなってるな」

澪「岡崎くんが、敬語じゃなくていいって言ってくれたんだよ」

ちらり、と伏目がちに俺を見てくる。

律「ふぅん、岡崎がね…」



663 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:39:22.42 ID:cUBlBpOS0

にやっと含み笑い。
なにかまた、変な機微の嗅ぎ取り方をしてるんだろうな、こいつは…。

唯「さすが岡崎くん、心が広くていらっしゃる」

朋也「普通だろ…」

律「ふ…岡崎、あんたもつくづく、アレだよなぁ」

アレ、なんて代名詞でボカしているのは、きっといい意味じゃないからに違いない。

律「ま、いいや。それは置いといて、私からも、なにかあげようではないか」

律「そうだな…これでどうだ、キンピラゴボウ」

春原「うわ、一気にレベル下げやがったよ、こいつ」

律「なんだとっ! あたしのキンピラゴボウなんだぞっ!」

春原「だからなんだよ」

律「つまり、間接キスの妄想が楽しめるだろうがっ!」

律「それだけで値千金なんだよっ!」

春原「うげぇ、胃がもたれてきたよ、そんな話聞いたらさ…」

律「なんだと、ヘタレのくせにっ」

春原「キンピラゴボウ女は黙ってろよ」



664 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:40:43.44 ID:1qYNd8dxO

律「ぐぬぅ…」

春原「けっ…」

和「このふたり、仲悪いの?」

朋也「いや…似たもの同士なんだろ、多分…」

―――――――――――――――――――――

飯を食べ終わると、残りの時間は練習に費やした。

春原「かぁ、やっぱ岡崎、おまえ、うめぇよ」

キョン「だな。さすが、元バスケ部」

俺は今しがた、2対1の状況をドリブルで突破したところだった。

朋也「でも、このあと俺が得点に繋げられるのは、左からのレイアップだけだからな」

朋也「シュートするより、おまえらにパス回す機会の方が多くなるはずだ」

朋也「だから、頼んだぞ、ふたりとも」

春原「任せとけって。僕の華麗なダンクをお見舞いしてやるよ」

朋也「ああ、おまえのプレイで、ちゃんとベンチを温めといてくれよ」

春原「それ、ただの空回りしてる控え選手ですよねぇっ!?」



665 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:41:05.41 ID:cUBlBpOS0

キョン「ははは、そういうノリは、変わらないんだな」

―――――――――――――――――――――

………。

―――――――――――――――――――――

放課後。

キョン「なんか…よかったのか、俺まで…」

紬「今は軽音部チームの仲間なんだから、遠慮しないで」

紬「はい、ケーキ。どうぞ」

キョン「はぁ、どうも」

練習前、部室に集まり、お茶をすることになった。
その流れで、こいつもここに連れてこられていたのだ。

キョン「おお…うまい。紅茶も、最高だ」

紬「ふふ、ありがとう」

キョン「ああ…朝比奈さん…」

小声でつぶやく。

朋也(朝比奈…?)



668 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:43:27.59 ID:1qYNd8dxO

春原「キョン、てめぇ、ムギちゃんに色目使ってんじゃねぇよ」

春原「おまえには、涼宮って女がいるんだろ」

キョン「いや、あいつは別に…」

律「マジ? 涼宮さんとデキてんの?」

キョン「いや、だから、そんなんじゃないぞ」

春原「でも、聞いた話だと、確定だって言ってたぜ」

キョン「誰に聞いたんだよ…」

春原「谷口って奴」

キョン「あの野郎…」

律「で、どこまで進んだの?」

キョン「進んだもなにも、最初から…」

がちゃり

さわ子「チョリース」

さわ子さんがふざけた挨拶と共に入室してくる。

さわ子「今日もお菓子用意…って、キョンくん?」



669 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:43:47.62 ID:cUBlBpOS0

キョン「ああ、どうも、先生」

律「なに? 親しい感じ?」

キョン「去年の担任だ」

律「あ、そなの」

さわ子「どうしたの? なんであなたがここに?」

キョン「いやぁ、いろいろありまして…」

律「あ、そうだ、聞いてくれよぉ、さわちゃ~ん…」

―――――――――――――――――――――

さわ子「ふぅん、そんなことになってたのね…」

言って、紅茶を一杯すする。

律「ふざけた奴らだろ?」

さわ子「そうね」

朋也(あ…そうだよ…この人なら…)

朋也「さわ子さん、教師だろ? なんとか言って聞かせてやれないか?」

俺はなんでこんな基本的なことを忘れていたんだろう。
あの時は、特異な雰囲気に飲まれてしまい、この発想自体が湧かなかったのかもしれない。



671 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:45:07.64 ID:1qYNd8dxO

それは、他の奴らも同じだったのかわからないが…
とにかく、こういう時こそ、大人の力を借りるべきだ。
バスケの試合なんてせずとも、一発で解決できるはず。

さわ子「できるけど…あえて、しないわ」

朋也「あん? なんでだよ」

さわ子「女の子を守るため、ガチンコで勝負するなんて…青春じゃない」

さわ子「止める事なんて、できないわ」

朋也「そんな理由かよ…」

さわ子「めいっぱい戦いなさい。そんなの、若い内にしかできないんだから」

律「若さに対する哀愁がすげぇ漂ってんなぁ…」

さわ子「おだまりっ」

だん、と激しく机を叩いた。

律「しーましぇん…」

部長も、その迫力の前に縮こまる。

さわ子「ま、でも、いざとなったら、助けてあげるわよ」

唯「さわちゃん、頼もしい~」



673 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:45:28.80 ID:cUBlBpOS0

さわ子「おほほほ、任せておきなさい」

キョン「この人も、相変わらずだな…」

朋也「ああ…」

でもこれで、試合に負けたときの保険ができた。
それは精神的にも大きい。ただの消化試合になったんだから。
さわ子さんに話を聞いてもらえてよかった。

―――――――――――――――――――――

朋也「ふぅ…」

休憩を取るため、ひとり日陰に移り、石段に腰掛ける。
グラウンドでは、春原とキョンの1on1が始まっていた。
少し離れたこの位置で、その様子を眺める。

澪「おつかれさま」

秋山が寄ってきて、昨日のようにタオルを渡してくれる。

朋也「ああ、サンキュ」

受け取り、汗を拭き取る。

澪「あの…」

朋也「ん?」



675 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:46:37.02 ID:1qYNd8dxO

澪「岡崎くんって、バスケ上手いね」

澪「春原くんと、キョンくんも、よく動いてるけど…」

澪「でも、岡崎くんは、二人とはなんか動きが違うっていうか…」

澪「次にどうすればいいのをわかってるように見えるんだ」

澪「それに、ドリブルも上手だし」

朋也「まぁ…昔、ちょっとやってたからな」

澪「そうだったんだ…」

朋也「ああ」

澪「………」

会話が終わり、沈黙が訪れる。
秋山は、なにかもじもじとしていて、必死に話題を探しているように見えた。

朋也「でも、よかったな。さわ子さんがバックについてくれてさ」

放っておくのもなんだったので、俺から話を振ってみた。

朋也「これで勝敗に関係なく、おまえは助かったわけだ」

澪「そう…なのかな…」

朋也「ああ。まぁ、楽に構えてるといいよ」



676 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:47:02.63 ID:cUBlBpOS0

澪「うん…」

朋也「タオル、サンキュな。ほら」

座ったまま手を伸ばす。

澪「あ、これ…水で濡らしてこようか?」 

澪「体に当てたら、ひんやりして気持ちいいと思うんだけど…」

受け取ったタオルを手に、そう訊いてきた。

朋也「ん、ああ…それも、いいかもな」

澪「じゃあ、ちょっと待っててね。行ってくるから」

いい顔になり、水道のある校舎側に駆けていった。

朋也(にしても…)

よく動いてくれる。
球拾いにも積極的だし、水分補給のサポートだって、率先してやってくれていた。
自分のファンクラブが起こした問題だったから、責任を感じているんだろうか。

朋也(そんな必要ないのにな…)

空を見上げ、ぼんやりと思った。

声「きゃあ…ちょっと…」



677 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:48:36.53 ID:1qYNd8dxO

朋也(ん…?)

秋山の声。
さっき向かっていった方に顔を向ける。
すると、秋山が男二人に詰め寄られているのが見えた。
あの時、部室に押しかけてきた連中の中に見た顔だった。

朋也(あいつら…)

立ち上がり、走って駆けつける。
その間、男たちが秋山からタオルを取り上げ、下に叩きつけているのが見えた。
あげく、踏みつけだしていた。

朋也「なにやってんだ、こらぁっ!」

男子生徒1「ちっ…くっそ…」

男子生徒2「…ざけんな…」

俺が怒声を浴びせると、すぐに退散していった。

澪「うぅ…ぐす…ぅぅ」

秋山は、怯えたように身を小さくして泣いている。

朋也「どうした? 大丈夫か?」

澪「うぅ…大丈ぬ…」

朋也「だいじょうぬって、おまえ…」



678 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:49:00.44 ID:cUBlBpOS0

気が動転しているのか、舌が回っていなかった。

朋也「とりあえず、向こうまでいって、休もう。な?」

近くに小憩所として使われているスペースがあった。
そこで一旦落ち着いたほうがいいだろう。

澪「ぐす…うん…」

俺は、泣き止む様子のない秋山を連れてゆっくりと歩き出した。

―――――――――――――――――――――

朋也「ほら、これ飲め。コーヒーだけど」

澪「…ありがとう」

プルタブをあけ、ずず、と一口飲む。

朋也「落ち着いたか?」

澪「…うん」

朋也「で、なにされたんだよ。場合によっちゃ、すぐにでも殴りにいってやる」

澪「だ、だめだよ、そんなことしちゃ…」

朋也「でもさ、そこまで泣かせてんだぜ。よっぽどだったんじゃないのか」

澪「それは、私が…その、弱くて…すぐ泣くのが悪いんだよ」



679 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:50:26.18 ID:1qYNd8dxO

朋也「でもな…」

澪「ほんとに、いいの。たいしたこと、されたわけじゃないから」

朋也「…そっかよ。でも、タオル踏まれてたよな」

澪「う、うん…」

朋也「幼稚なことするやつらだよな。人のものに当たるなんてさ」

朋也「おまえ、なんかしたわけじゃないんだろ?」

朋也「理由もなくいきなりなんて、意味わかんねぇな」

澪「私が、男の子の世話してるのが、嫌だったみたい」

朋也「あん?」

澪「岡崎くんに、私のタオル渡したりとか…そういうのが」

朋也「ああ…」

ファンからしてみれば、それは許されない行為だったんだろう。
自分たちだけにしか笑顔を向けてはいけないとでも思っているんだろうか。

朋也「迷惑な奴らだな。別に、アイドルってわけでもないのに」

澪「うん…私なんかじゃ、全然そんなのできないよ」

朋也「いや、俺は別におまえが可愛くないと思って、言ってるわけじゃないぞ」



681 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:51:07.49 ID:cUBlBpOS0

朋也「どっちかといえば…つーか、普通に可愛い方だと思ってるからな」

朋也「落ち込んだりするなよ」

朋也(って、なに言ってんだ、俺は…)

この頃、俺のキャラが崩れてきている気がしてならない…。
こんなに気軽に、女の子に向かって可愛いなんて言う奴でもなかったのに…。
いかん…もっと気を引き締めなければ…。

澪「あ…ありがとう…」

澪「………」

朋也「………」

お互い、押し黙る。若干重い沈黙。

朋也「まぁ、なんだ。試合、絶対勝つよ」

振り払うように、努めて明るくそう言った。

朋也「それで、あいつらに直接言ってやれ。もう私につきまとうな、ってさ」

澪「言えないよ、そんなこと…」

朋也「遠慮するなよ。報復なんかさせないから」

朋也「もし、やばそうなら、俺たちを頼ればいいんだ」



683 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:52:24.29 ID:1qYNd8dxO

朋也「そんなことくらいしか、俺と春原の存在意義なんてないんだからさ」

澪「そんなことないよ。ふたりがいたら、いつもより賑やかで楽しいもん」

平沢のようなことを言う。
それがなんだか可笑しくて、思わず笑ってしまった。

澪「え…なに?」

朋也「いや…なんでもない」

澪「………?」

疑問の表情を浮かべたが、すぐに秋山も可笑しそうに笑った。
俺も、つられてまた笑顔になる。

梓「あのぉ…盛り上がってるところ、悪いんですけど…」

どこから湧いたのか、中野がイラついた声をぶつけてきた。

澪「あ、梓…いつから…っていうか、なんでここに…」

梓「先輩たちがいないんで、探してくるように言われたんです」

澪「そ、そっか…」

梓「はぁ、でも…」

落胆したように、大げさに息を吐いた。



685 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:53:02.72 ID:cUBlBpOS0

梓「岡崎先輩はまだしも…澪先輩がこんなところでサボってるなんて…」

梓「私、見たくありませんでした」

澪「い、いや、これはサボってたわけじゃないぞ、うん」

澪「今戻ろうと思ってたところなんだ、ははは」

コーヒーのカンを持って、立ち上がる。

澪「じ、じゃあ、戻ろうかな、はは」

言って、そそくさと立ち去っていった。
先輩の威厳を保ちたかったんだろうか。
ずいぶんと取り繕っていたが…。
ともあれ、残された俺と中野。

梓「…はぁ、唯先輩と憂の次は、澪先輩ですか…」

梓「節操なしですね…死ねばいいのに」

冷たく言い放ち、戻っていく。

朋也(ついに死ねときたか…)

あいつと和解する日は、きっとこないんだろうな…。

―――――――――――――――――――――



688 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:54:29.31 ID:1qYNd8dxO

4/23 金

唯「いよいよ明日だねっ。楽しみだなぁ」

朋也「気楽でいいな、試合に出ない奴は」

唯「む、気楽ってわけじゃないよ。私も気合十分だよ」

唯「ほら、こんなのも用意したんだから」

なにかと思えば、鞄からクラッカーを取り出していた。

唯「ゴールしたら、これで、パンッ!ってやるからね」

朋也「パーティーじゃないんだぞ…」

憂「お姉ちゃん、こっちのほうがいいよ」

対して憂ちゃんは、小さめのメガホンを取り出した。
やはり常識があるのは妹である憂ちゃんの方だ。

唯「なるほど、それで、パンッ!の音を拡大するんだねっ」

ずるぅ!

俺と憂ちゃんは漫画のように転けていた。

―――――――――――――――――――――

………。



690 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:55:00.01 ID:cUBlBpOS0

―――――――――――――――――――――

昼。

唯「ねぇ、私さ、応援の舞考えたんだけど、みんなでやらない?」

律「応援の舞? なんだそりゃ」

唯「こんなのだよ。みてて」

立ち上がり、目をつぶった。
そして、かっ、と見開く。

唯「ここから先が戦えるようにやってきた…」

唯「顔の形が変わるほどボコボコに殴られて…
  死を感じて、小便を漏らしても、心が折れないように…」

唯「あの時のように…2度と心が折れないように、やってきた!!!」

唯「ハッ!」

両手をばっと上げて止まる。

唯「はぁ…はぁ…ど、どうかな…」

律「いや、息切れしてるし、なんか漏らしたことになってるし…絶対やだ」

唯「そんなぁ、私の2時間が水の泡だよぉ」

律「2分考えたあたりでダメなことに気づけよ…」



692 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:56:13.82 ID:1qYNd8dxO

唯「ちぇ…」

律「そんなもんより、澪の萌え萌えキュン☆161連発でどうだ」

澪「や、やだよ、体力的にも、その中途半端な数字的にも…」

律「まぁ、最後に一発鉤突きが当たったって事だな」

律「単純計算で1分15秒…反撃を許さない萌え萌えキュン☆の連打を打ち込むんだ」

澪「なんの話だ?」

律「いや、なんでもない。気にするな」

澪「?」

唯「そうだ、和ちゃん、全校放送で試合実況とかしちゃだめかな?」

和「ダメに決まってるでしょ…」

唯「ぶぅ、けちぃ…」

春原「まぁ、応援なら、ムギちゃんがしてくれるだけで三日は戦えるけどね」

紬「そう? コストがかからなくて、うれしいな♪」

春原「消耗品扱いっすかっ!?」

律「わははは!」




47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:33:06.58 ID:0v+hnIby0

全スレ余ってるぞ?なんで放棄した?






49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:34:06.00 ID:miqd24nAO

>>47
容量いっぱいになったんだろ



51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:35:17.44 ID:WpfFlxSRO

>>47
容量





50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:34:08.94 ID:cUBlBpOS0

>>47容量オーバー



2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 21:59:34.26 ID:cUBlBpOS0

―――――――――――――――――――――

昨日同様、食べ終わると、練習に向かった。

春原「ふーい…なんか、やけに気合入ってるね、岡崎」

キョン「確かにな。昨日、いなくなって、戻ってきたあたりからずっとこの調子だもんな」

朋也「単に負けたくなくなっただけだよ」

春原「でもさ、二年から聞いたけど、秋山としっぽりしてたんだろ?」

春原「そん時なんかあったんじゃないの?」

朋也「なにもねぇよ」

春原「ふぅん…てっきり、平沢と二股かけてんじゃないかと思ったんだけどねぇ」

キョン「え? 岡崎って、平沢さんとそんな仲なのか?」

春原「まだそういうわけじゃないんだけどさ…」

春原「でも、両思い臭いんだよね、朝も一緒に登校して来てるみたいだし」

キョン「へぇ、あの岡崎がね…丸くなったもんだ」

朋也「キョン、こいつの言うことなんて、8割嘘だって知ってるだろ。話半分に聞いとけよ」

春原「でも、残り2割は事実だろ?」



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:02:31.14 ID:1qYNd8dxO

朋也「違う。現実逃避の妄想だ」

春原「それ、もう発言全てが妄言ですよねぇっ!」

キョン「ああ、そうだったな。危うくあっちの世界に連れてかれちまうとこだった」

春原「病人みたくいうなっ! こいつが平沢と登校して来てんのはマジだよっ」

朋也「あれ、また幻聴が聞える」

キョン「俺も、かすかに耳に残ってるわ、なんだろ」

春原「取り合ってももらえないんすかっ!?」

朋也「キョン、今、う○こって言ったか?」

キョン「まさか、そんなこと言うの、あいつくらいだろ、あの金髪の…」

キョン「誰だっけ?」

朋也「さぁ?」

春原「ほんと、おまえら最低のコンビっすねっ!」

春原「ちくしょう…これも、去年と変わんないのかよ」

キョン「ああ、悪かった、悪ノリしすぎたよ。つい、懐かしくなってな」

春原「つい、でやらないでほしんですけどねぇ…」



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:03:03.26 ID:cUBlBpOS0

そう、いつも春原をいじめた後は、こいつがこうしてアフターケアに入っていたのだ。
この感じも久しぶりだったが、すぐに調子が戻ってきた。

朋也「おい、明日は勝つぞ。わざわざ俺たち三人、雁首揃えてるんだからな」

キョン「ああ、そうだな」

春原「…ま、そうだね」

朋也「春原の幻影も、どうやら納得したようだな」

春原「ここまできて、まだ僕の存在はおぼろげなのかよっ!?」

キョン「はははっ」

―――――――――――――――――――――

………。

―――――――――――――――――――――

放課後。

春原「なんなんだろうね、こんなとこで待機してろなんてさ」

朋也「さぁな」

キョン「あの人の考えは読み辛いからなぁ。突拍子もないことも割とするし」

さわ子さんに退室するよう言われ、男三人、部室の前でだべっていた。



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:04:12.92 ID:1qYNd8dxO

がちゃり

さわ子「お待たせ~」

間の抜けた声を伴って、室内を一望できるほどに扉が広く開け放たれた。

さわ子「どう? この子たちは」

唯「いぇい、似合う?」

律「動きやす~」

紬「うん…ちょっと胸がきついかなぁ…」

澪「うぅ…」

梓「………」

見れば、全員チア服を着ていた。
限界まで短いスカート、ノースリーブの薄い服、動けばわかる、胸の揺れ…
目のやり場に困るその姿に、逆に俺たちは釘付けとなり、言葉を発せなかった。

さわ子「明日はこれで応援するのよ」

澪「先生、やっぱり、やめませんか、これ…」

梓「そ、そうですよ、恥ずかしいです…」

梓「それに、岡崎先輩とかが、いやらしい目でみてくると思うんです」



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:04:33.43 ID:cUBlBpOS0

なぜ俺限定なんだ…。

さわ子「あら、でもそういう衣装の方が、男は喜んで、力が発揮できるものなのよ?」

さわ子「そうでしょ?」

俺たちに振ってきた。

朋也「いや、まぁ…」

キョン「でも、これはさすがに…」

春原「さわちゃん、やっぱわかってるねっ」

欲望に忠実な変態が一匹。

さわ子「ふふ、まぁね。だてに二十数年生きてないわ」

さわ子「って、歳のこと言うなっ」

ぽかっ

春原「ってぇっ! 自分で言ったんでしょっ!」

さわ子「あら、そうだったわね、ごめんなさい」

春原「誰かさん並に理不尽だよ、この人…」

唯「ねぇねぇ、どう? 可愛くない? この服」



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:05:48.70 ID:1qYNd8dxO

言って、くるくると回った。

朋也「わ、馬鹿、おまえ、んな激しく動くなっ」

唯「え? なんで?」

朋也「いや、それは…」

梓「あーっ! この人、見たんですよ、絶対っ!」

唯「何を?」

梓「唯先輩の下着ですっ!」

唯「…いやん」

朋也「不可抗力だろっ」

梓「目をそらせばよかったじゃないですかっ! ガン見することないでしょっ!」

朋也「してねぇよ…」

梓「嘘つきっ! 目にしっかり焼き付けてましたっ!」

朋也「だぁーっ、なんなんだこいつはっ!」

キョン「先生、こういうことにならないためにも、チアはやめたほうが…」

さわ子「あら、そう?」



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:06:14.86 ID:cUBlBpOS0

春原「あ、てめぇキョン、余計なこと言うなよっ」

キョン「いや、でもだな…」

さわ子「じゃあ、バニーガールなんてどうかしら?」

キョン「ぶっ!」

春原「なに過剰反応してんだよ、むっつり野郎」

キョン「ち、違う、二年前のトラウマが蘇っただけだ…」

梓「先生、私もこの衣装を着るのはやめたほうがいいと思います」

梓「絶対、岡崎先輩が本能をむき出しにして、警察沙汰になると思いますから」

朋也「だから、なんで俺だけを槍玉に挙げるんだ…」

澪「私も、普通に応援したいです…」

唯「私はこれ着て応援したいな~」

朋也「いや、やめてくれ…」

唯「ええ? なんで?」

朋也「普通にしてくれてたほうが、いろいろと助かる」

唯「えぇ…なら、しょうがないかぁ…ちぇ」



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:07:11.86 ID:1qYNd8dxO

春原「ムギちゃんは、それ着てくれるよね? ていうか、もう普段着にしようよっ」

律「やらしいやっちゃなー、このエロ原め」

春原「っせぇよ、おまえは一年中ジャージでも着てろ」

律「おまえならジャージの上からでも欲情してきそうだけどな、こわいこわい」

春原「はっ、ジャージの上着をズボンにインしてる奴なんかにするかよ」

律「そんな着こなし方しねぇよっ、ヘタレっ!」

春原「ヘタレは今関係ないだろっ!」

一応ヘタレという自覚はあったらしい。



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:07:28.50 ID:cUBlBpOS0

朋也「春原、落ち着つけ。まず自分の足元をよく見てみろ」

春原「あん? なんだよ…」

春原「って、なんで靴下にズボンがインされてるんだよっ!?」

朋也「いつも社会の窓がアウトしてる分、細かいところで取り戻しておこうと思って…」

春原「まずその前提がおかしいだろっ!」

律「わはは!」

この後、結局コスプレは取りやめとなった。
当日は普通に制服で応援してくれるらしい。
さわ子さんや平沢、春原なんかは不満そうにしていたが、これでよかったんだと思う。
…俺も、少しだけ名残惜しかったが。

―――――――――――――――――――――


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