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唯「世界が終わるよ!」 【カオス】


http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1287071648/




1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 00:54:08.59 ID:Uxm+e2xW0


唯「信じようと信じまいと……」



3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 00:58:12.58 ID:Uxm+e2xW0


澪「嘘をつくな!」

澪が絶叫した。
手に持っていたテーカップをテーブルに叩きつけるように彼女が置いたとき、
カップの中の紅茶が揺れて、こぼれた。

誰もそれを気にしなかった。律と紬は唖然とした顔で澪を見た。
梓は小刻みに体を震わせていた。梓の顔は蒼白だった。

澪「みんな、唯の話を信じるな、唯は嘘をついているんだ」

澪「第一、こんなに完璧な世界が終わるわけないじゃないか」





4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:01:18.07 ID:Uxm+e2xW0


唯「かんぺき?ああ、完璧!澪ちゃんは馬鹿だなぁ」

唯は合点承知の介と、手をうった。

澪「私が馬鹿だって?いや、おかしい。
  私は至って明晰な思考状態を保っているじゃないか。」

澪「十月革命が起こったのは西暦1917年の10月25日だし、
  その時の第二回ソビエト大会でウラジミール・レーニンが人民委員会の議長になり
  メンシェヴィキが権力を掌握した。
  
  極東国際軍事裁判で敗戦国を裁く法的地位は存在しないと主張したのはラダ・ビノード・パールだ。」

澪「解析整数論には造詣が深いけれども、リーマン予想は未だ証明出来ていない」

澪「シラーのHymne a la liberteは暗唱できるくらい読み込んでいる」

澪「いや、おかしい。私が馬鹿だって!おかしい。納得の良く説明を求めるぞ、唯」

唯「やっぱり澪ちゃんは馬鹿だなぁ」



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:04:30.13 ID:Uxm+e2xW0


澪「何かがおかしい。私は唯に馬鹿にされるはずがない……」

ブツブツと頭の中の世界をかき回すように
ツギハギの言葉を紡ぐ澪を放置して話は建設的な方向に進むのだ。

律「ちょっと待ってくれ。世界が終わるという予言は昔から世界中でなされてきた。
  しかし、その度に世界は終わっていたか?いや違う。
  世界はそれらの悲観的な予言に反して存在しているじゃないか。」

紬「そうよ、それに原因がない。原因がないから、現象も起こりえない。
  世界が滅ぶ原因がないんだから、今日太陽が沈んで明日昇っても
  私たちは軽音部の部室にきて、相変わらずわたしのお茶を飲んでいるのよ」

律「そうだ、それにいつ終わるのだ?
  確かに現代物理学は宇宙の終りを予言している。唯の予言もその類か?」

紬「いいえ、きっと唯ちゃんは心の風邪を患ったのよ。
  この年の高校生ならありえるわ、自分が世界の中心だと考えてしまって、
  周りから見たら随分と滑稽な行動をしちゃうのよ。」

唯「当たらずとも遠からずだよ、ムギちゃん。」



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:09:15.22 ID:Uxm+e2xW0


唯「わたしは憂を食べました。わたしは和ちゃんを食べました。
  わたしはみんなを食べると思うよ。そしたら世界の終わり。
  みんなでわたしの頭の中で手をつないで輪をつくる。
  そんな夢、女子高生なら誰もが見るんじゃない?」

律「ヘイ!唯!頭、イッちゃたかよ!今日の朝、そんな夢をみたのか?」

紬「あらあら~唯ちゃん頭打ったのかしら?おかしい夢ね。」



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:11:27.27 ID:Uxm+e2xW0


唯は微笑んだ。そしてそのまま制服のポケットから、煙草を取り出して、

湿気ったマッチ箱の中の乾いたマッチ棒で火をつけて、煙草を吸った。

くすんだ色の煙がその先から昇り、黄ばんだ換気扇の方へ流れていった。

紬も、黒塗りの箱から細身の煙草を取り出して、

お気に入りの、自分の顔が彫られているジッポーライターで火をつけた。

高校生の煙草の吸い方にも、貧富の格差があった。

律は紬の方をみて、そのおこぼれを待った。

澪はブツブツつぶやいたままだった。

梓は顔を青くして椅子に座っていたのさ。



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:14:00.80 ID:Uxm+e2xW0


琴吹紬の部屋には、おおよそお嬢様に似つかわしくないものがたくさんあった。

まず、注射針がたくさん床に転がっている。

机の上には空の栄養ドリンクが常に二十本くらい積まれている、

吸殻が山になった灰皿が置いてある。

広い部屋の至る所に黴が生えていたし、

本棚からあふれた、付箋をフサフサに生やした本がそこかしこに山積みになっている。

中古で買った、FM放送の聞ける携帯ラジオの電池の蓋は外れていて、二本の単一電池は見当たらない。

買ってから一度も洗濯していない下着がタンスから溢れ、

使い終わった生理用品がゴミ箱からこぼれている。

紬「どこいったのよ、もう」

紬は部屋中のものをひっくり返して、捜し物をしている。



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:16:38.04 ID:Uxm+e2xW0


紬「あれがないと、終わりは乗り切れない、
  あれがないと、終わりは、乗り切れない、あれ、が、ない、と、」

紬「きゃ」

かわいい悲鳴をあげた、机の足に体をぶつけた。

空の栄養ドリンク瓶がゴロゴロ転がり落ちた、その中の一つが、

灰皿にあたって、吸殻ごと灰皿が、紬のふわふわの髪に落ちた。

紬「いたいわ~」

紬は、数日間灰皿の中で熟成された、ニコチン水をなめた。

紬「にがいわ~」

ウイスキーよりきつかった、そして紬はこの部屋にお酒の瓶だけないことに気がついた。

紬は気にせず捜し物を続けた。



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:19:12.85 ID:Uxm+e2xW0


一冊の文庫本を紬は手にとった。

それはウィリアム・ゴールディング作の『蠅の王』という小説の、ペーパーバック。

安っぽい紙の匂いが鼻腔をくすぐった。

紬は捜し物を中断して、それを読み始めた。幸い彼女は英語が理解できた。

たくさんの本の中で、『蠅の王』だけが付箋をはっていなかった。

つまり、彼女は一度も読んだことがないということだった。

ラインマーカーの引いていない小説は、もぎたての葡萄のように新鮮だった。

そして紬は考えた。

世界の終りがけいおん部で起こる必要はないんじゃないか、と。

自分たちは世界の終わりにふさわしくなかったし、

女子高生らしく遊びと勉強の片手間で音楽をしていればいいんじゃないか。



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:22:14.23 ID:Uxm+e2xW0


日はとっぷり暮れていた。もう学校は閉鎖された時間だった。

紬「これだけ本が転がっているのに、なんであれがないのかしら」

紬「唯ちゃんはおかしくなった、澪ちゃんは狂った、
  律ちゃんは壊れた、梓ちゃんは動かなくなった」

紬「だからわたしは、世界の終りを信じたのよ」

紬「世界の終わり、絶対に、けいおんには相応しくないわ。他所でやれって思うわ」

紬「でも、終わるんだから仕方がない、あれがない、あれがないと……」

床に転がっていた注射針で何度も紬は手を傷つけた、

床に転がった空瓶を踏んで、フィギュアスケートのように豪快に転んだ。

後頭部をうった、紬の後頭部から血がにじみ出た。



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:24:33.29 ID:Uxm+e2xW0


だんだんと紬の息は荒くなった、部屋に伸びる紬の影は巨人のように寂しくのびていた。

本棚からすべての本をひっくり返して、その本を探した。

影が消えた、太陽が沈んだ、紬は声を上げ続けた。

部屋は真っ暗になって、カーテンのない窓からは闇が差し込んだ。

星の明かりはまるで寂しい蛍のケツの明かり、そして月は沈んでいた。

暗くなって、なあにも見えなくなったので

紬は首を吊って死んだ



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:26:33.74 ID:Uxm+e2xW0


ムギが自殺してから、数日たった。

初めは涙で顔をひどく腫らしていた唯も、澪も、すこし落ち着いたようだ。

梓は涙を忘れたみたいな無表情でうつむいて、青白い顔のまま学校に来ている。

葬式の時も梓は泣かなかった、でもその死んだような表情は、誰よりも悲壮なものをたたえていた。

わたしは気立てに振舞った。

ムギの突然の自殺は不可解だったが、心が折れてしまいそうになっている唯や澪、

そして一番年下の梓の支えに少しでもならなければいけないと思った。

当然軽音部の活動は無期限停止になったし、誰も放課後に音楽室に行くものはいなかった。

ムギの墓は、街から遠いところに建てられるので、私たちは気軽に行くことは出来ない。

でも、毎日心の中で手を合わせていた。



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:29:22.26 ID:Uxm+e2xW0


ムギが自殺してから、数日たった。

その日、私は引き寄せられるようにして音楽室へと向かう階段を登っていた。

いつも澪と一緒に下校していたが、今日は断った。

澪はとくに反対するわけでもなく、一人で家に帰っていったようだ。

わたしはムギが自殺してから初めて音楽室に入った。

数日前、最後のティータイムをしてから何も変わらぬ光景がそこにはあった。

窓からは明るい光が差し込んでいた、

そしてニスの塗られた机の光沢がひときわ明るく、

天井の換気扇は変わらずに回り続けていた。

でも、わたしは目を覆った。

だって、水槽の水は濁っていて、水面に死んだ亀が浮いていたから。



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:32:06.68 ID:Uxm+e2xW0


ムギが自殺してから、数日たった。

わたしは死んだ亀をどうするか迷った。

水槽に近づいてみると、腹を天井に向けて浮いている亀はすこし滑稽だった。

「この亀、なんて名前だっけ……」

そのことに気がついたとき、わたしははっと息を飲んだ。

大切な事を忘れてしまったことに気がついた。

そしてこれからもっと大切なものを失っていく予感が、その亀の死体からありありと感じられた。

わたしはムギの残したティーセットのフォークを二本使って、亀を水槽から取り出した。

そして窓をあけて亀を捨てた。

なぜそんな事をしたのか、その思考過程は思い出せない



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:34:26.60 ID:Uxm+e2xW0


ムギが自殺してから、数日たった。

亀を捨てた後、わたしは死んだムギと亀に思いを馳せた

いつか唯達も亀がいなくなった事に気がつくだろう。

その時、彼女たちはムギがいなくなったのと同じように悲しむだろうか?

唯ならどう考えるだろうか。あ

の子はとっても優しいから、すごく悲しむだろう。ムギの時と同じくらい。

でもそれは、あんまり人間じみていない気がした。

だって、カメは爬虫類だし、ヒトは哺乳類だ。



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:37:33.35 ID:Uxm+e2xW0

ムギが自殺してから、数日たった。

澪なら亀の死体が見つからないことに、ひどく空想的な考えを抱くだろう。

きっと亀は水槽から逃げて、どこかで生きているかもしれないと考えるかもしれない。
亀が逃げた先は、美しい蓮が浮かぶ香りかぐわしい世界と想像するかもしれない。
そこにはお釈迦様がいる、苦しみのない安楽が横たわっている。

でもね、澪。亀は死んだんだ。
死体はお前の目の前にないかもしれないけど、亀は死んでこれから腐る。
そして土にかえるだけだ。そしてそれはムギも同じ。

私たちはムギの死体をみていないけど、
誰かがムギの死体を見つけて、ムギの死体を焼いて土に返したんだ。
どこかでムギは幸せに暮らしていると思うのはありえないし、ムギは死んだんだ。

梓なら?彼女なら、わたしと同じ感情を抱く気がした。
あの、悲愴を漂わせた瞳からは、人間の死を解剖的に捉える力があった。
だから、人間の死は苦しくて、忘れられないモノなのだ。
人間は死んだら二度と元には戻らないと、知っているから、とても悲しいのだ。



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:40:29.23 ID:Uxm+e2xW0


ムギが自殺してから、数日たった。

音楽室のホワイトボードに、いつもとは違うものが書かれていたことに気がついた。

いつもの下らない楽しいものではない。

そこに書かれていたのは、『とぐろを巻いた毒蛇』に近いものだった。

たくさんの言葉が書き連ねていた。

その中で何度も繰り返されるフレーズ、

それは『世界の終り』だった。ひどく陳腐なフレーズ。

数えたら七ヶ所で世界の終わりと書かれていた。

『数年間浸け込まれた煙草の吸殻から染み出た水』

というタイトルで苦々しい言葉が書かれていた。

ああ、誰がこんなイタヅラしたんだ、ムギの死にかこつけて不謹慎すぎる。

梓だろう、わたしはそう思った。

梓がわたしより先にここに来て、亀の死を放置して、

ホワイトボードにこの言葉の集合を描いたのだ。

わたしは梓に憤りを感じた。



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:42:59.55 ID:Uxm+e2xW0


ムギが自殺してから、数日たった。

いつの間にか、いつもの席に唯が座っていた。

唯「りっちゃん。ここで会うのは久しぶり」

律「おう。わたしたち、二人か。」

唯「うん。だって、むぎちゃんは死んじゃった。」

律「澪と梓は?」

唯「ここにはいないよ」

律「亀の名前なんだっけ?」

唯「トンちゃん。忘れちゃったの、りっちゃん。」

律「死んだ人間の名前、なんだっけ?」

唯「むぎちゃん。忘れちゃだめだよー、りっちゃん。」



22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:45:47.72 ID:Uxm+e2xW0


ムギが自殺してから、数日たった。

唯は煙草を取り出して、吸い始めた。『ゴールデンバット』という銘柄。

女子高生らしくないさ。私たちは女子高生らしくしてなくちゃいけない。

苦々しい煙が換気扇の方へ立ち上る。換気扇ががらがらと音を立てて回り始める。

ここにはもう、紙巻たばこを優雅に吸う、ムギはいない。

わたしは制服のポケットから、箱を開けたばかりのソブラニー・ブラックロシアンを取り出し、

デュポンの黒を基調とした金縁のライターで火をつける。肺の奥まで、あの重戦車のような煙を吸う。

ああ、わたしの肺は、バルバロッサ作戦で独軍に蹂躙されるロシアの大地だ。

たくさんの人が死んでいる、そこにいる人の数だけ悲しみがある。

わたしは耐えきれず、煙草を口から落とした。

唯がそれを拾った、そして吸いかけの『ゴールデンバット』をわたしに差し出し、

唯は拾ったソブラニー・ブラックロシアンを吸い始めた。

唯は顔色一つ変えなかった。

わたしはうっすらとルージュのついた

『ゴールデンバッド』(とっても滑稽だ)を咥え、煙を吸った。

すぐに咳き込み、また煙草を落とした。



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:49:14.08 ID:Uxm+e2xW0


ムギが自殺してから、数日たった。

唯「昔、この煙草は『金鵄』って呼ばれてたんだよ、知ってる?」

律「シラネーヨ」

唯「まあね。戦時中の事だったから。ところで、死んだ人間は誰?」

律「ムギだ」

即答。

唯「キーボードがかけたね、HTT。どうする、りっちゃん。これでHTTはお終いなの?」

わたしは口をつぐんで考えた。

終わりじゃない、まだだ。そしてムギもそれを望んでいるに違いがない。

律「いいや、ウギがいなくなっても、HTTは終わりじゃない、

けっして終わらないさ。世界が終わらないのとおんなじで。」

唯「ウギ?」

ウギって誰だ?

私達のキーボードで、おっとりぽわぽわ……お嬢様で……

別荘を持っていて……煙草なんて吸わないし、力持ちな女の子……誰だ、誰だ?

「目を覚ませ、律!!」

遠くで声がした。



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:51:46.47 ID:Uxm+e2xW0


気がついたら、夕暮れの公園のブランコに座っていた。

遠くに高いコンクリートのジャングルが、夕日を受けて、赤黒く沈んでいる。

ブランコの軋む一定のリズムが、カラスの鳴き声と絡み合っている。

公園には誰もいない、ブランコの下に、たくさんの煙草の吸殻が転がっていた。それは最近のものだった。

わたしは口に手をあてて、自分の息を吸う。タバコ臭くはないさ。柑橘系の匂いがする。

でも、煙草の吸殻は新しい、咥える部分にうっすら口紅の赤色が付いている。

わたしは子供たちの事を考え、すべての吸殻を拾って、鉄網のゴミ箱に捨てた。

これでいい。全てはこれでいいはずだ。

誰もいない、公園は、世界の終わりの時のように静かだった。

頭の中にまた声が流れてきた。それを自分の口でなぞるように声を出した。

「唯を殺そう」

わたしは確かにそうつぶやいた。



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:53:48.92 ID:Uxm+e2xW0


澪「QRコードだ……」

澪「なんでここに?」

澪は一人、日曜日の昼間、音楽室にやって来た。

ホワイトボード一面を使って、黒ペンで書かれた絵は、

まさしく大きなQRコードだった。

澪(誰のいたずらだ?こんな事するのは律くらいなものか……)

澪(そういえば、今日はわたしの誕生日だったな。だからか。
  集合時間五分前になっても誰も音楽室にいないってことは、
  何かサプライズがあるんだろう)

澪は頬を赤らめた。そして、携帯電話を両手で握り締め、喜びでぷるぷる震えた。

目がしっとり潤んで、仲間たちの祝福を心から幸せに思った。

だから、すぐにQRコードを読み込もうとした。疑いの気持ちは何一つなかった。



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:56:37.19 ID:Uxm+e2xW0

ホワイトボードに描かれたQRコードは大きかったので、

澪は携帯電話の画面にそれが映されるくらいそれから離れた。

そして、手を震わせながら、カメラをそれに合わせた。

携帯電話はそれを認識し、画面の下にURLが表示された。

澪は迷わずそれを押した。

この時、澪に少しでも疑心暗鬼の気持ちがあれば、世界の終りは回避されたのだ。



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 01:58:44.25 ID:Uxm+e2xW0


携帯電話から突然音楽が流れ始めた。音質が悪かった。

ライブの音をマイクで集めた、ひどい音質。擦り切れたレコードの音。

アコースティックギター、ハーモニカ、男の声。

The answer, my friend, is blowin' in the wind,

The answer is blowin' in the wind.

澪はそのサビで、この歌がボブ・ディランだとわかった。

なぜ自分の誕生日にボブ・ディランをかけるのだ?

携帯のスピーカから流れるザラザラとした演奏が終わったとき、

澪は異様な虚脱感に襲われた。

そしてとてつもないことを思い出したのだ。

「ムギは死んだ」



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 02:07:50.24 ID:Uxm+e2xW0


頭がおかしくなった。思考がまとまらなかった。

いつの間にか、音楽室で唯が煙草を吸っていた。

唯「残念ながら」

唯「ムギちゃんは死んだよ。首を吊って。原因は世界の終わり」

澪「なんなんだ!世界の終りって!
  ずっと私達を縛り続ける、この不幸の連綿としたものが、世界の終わりなのか!」

唯「全部夢なんだよ、澪ちゃんもそう思いなさい。真剣に考えたら死ぬよ、死ぬ。」

唯「そもそも、スタンダールの『赤と黒』愛読する女子高生なんているのかってことさ!」

唯「赤と黒を読む女子高生が、テレビ番組を低俗なものだとみなさずに、楽しめるのか?
  楽しめたら、笑えるねぇ。人生とっても楽しいねぇ」

澪「お、おまえ、頭がおかしいぞ!」

唯「バンドをする女の子は何に憧れるのか?男漁りをしてもいいのか?
  それが許されないなら、なぜクリプキを嗜んだらいけないのか?」

唯「モノは秩序がなければいけない。形式が必要だ。
  破壊しつくされた形式、肢体をばらばらにもがれた形式はただのゴミだ!」

唯「形式が必要だ。世界は形式だ。わたしたちは女子高生だ。
  女子高生のバンドマン、ゆったり日常と音楽があって、ヒロポンやクリプキのない生活。」

唯「形式に煙草は不要だ。
  煙草の吸殻に浸かって何年も放置された水たまりの水を飲んだら、死ぬよ。注意してね、澪ちゃん」

澪「唯?」



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 02:10:55.91 ID:Uxm+e2xW0


唯「わからないよー、みおちゃーん!」

突然唯は泣き出した。子どもっぽい鳴き方だった。大声をあげ、声をしゃくりあげた。

唯はつきものが落ちたように泣き上げた。澪は彼女に罪はなかったと思った。

だから唯の後ろから、そっと忍び寄ってきて、

先の研磨されたピッケルを振り上げた律を認めて、

彼女が唯の脳天にそれを振り下ろしたとき、

澪は唯を突き飛ばして、代わりに頭蓋を割ってやった。



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 02:15:34.30 ID:Uxm+e2xW0


澪の白い脳が飛び出た。わたしのソックスにそれが飛び散った。
すこし血が混じっていた。わたしは親友を殺してしまった。

なぜ澪は、悠々と煙草を吸い続けた唯の代わりに

わたしの振り下ろしたピッケルの軌跡上に顔を飛び出したんだ!

唯「一手、遅れたね。りっちゃん。」

ピッケルを振りかざして頭の割れた澪の前に仁王立ちするわたしの後ろに唯がいた。

律「くぉおお!」

わたしは咆哮をあげて、ピッケルを振り回した。手応えがあった。

律「ひぃ」

ムギの腹に、わたしのピッケルが刺さっていた。ありえない。ムギは死んだのに。

ここにあるはずのない日常が広がっていて、いつの間にか私がそれを破壊していた。

律「わからない、わからない……」



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 02:20:50.57 ID:Uxm+e2xW0


紬「りっちゃん……その、ナイフをしまって……」

どうした、突然、死体のムギがしゃべった。
足元には澪が転がっている。
唯は椅子に座って震えている。
梓は青ざめて固まっている。
わたしは手にナイフを握っている。

律「なぜ、なぜ、わたしは人殺しなんかしているんだ…!!
  世界の終わり、世界の終りのせいじゃなかったのか!
  唯!おまえのせいだ、お前が仕組んだんだろ!」

唯「り、りっちゃん…」唯の声は震えていた。

ゴールデンバッドを顔色一つ変えず吸える女子高生には思えない。

唯「ナイフ下ろして……」

くそ、わたしは唯を殺す、飛びかかる。すると梓がわたしに体をぶつける。
澪とムギの血で濡れたナイフが彼女の腹に刺さるさ。すると、梓も絶命するんだ。
そして、最後に唯の首を思いっきり締めて、完了だ。
唯の舌骨が骨折する音が聞こえた気がした。

わたしの目は血走っている。制服は血だらけだ。やっと世界が終わる。

澪の体が加速度的に腐っていくのをみて、私はそれを優しく持ち上げた。

澪が腐っていく。肋骨の間から心臓がぼとりと落ちた。

枝になった柿が腐って落ちるように。澪の心臓が落ちた。



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/15(金) 02:24:44.87 ID:Uxm+e2xW0


思考の過程は問題ではない。

かくしてわたしは四人の仲間を殺害し、世界の終りを迎えたのだ。


梓「練習しましょう、先輩」
律「ん」
澪「どうした、律?最近元気ないぞ?」
唯「どうしたのー?りっちゃん、ファイト!」
律「ああ……夢を見ていた……ごめんな、みんな。」

唯「その夢は世界の終り?それともオナニーの終り?」

律「殺してやる」



おわり




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唯「世界が終わるよ!」
[ 2012/01/13 22:34 ] カオス | | CM(2)

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タイトル:
NO:5199 [ 2012/01/13 23:01 ] [ 編集 ]

おー澪ちゃんを殺しちゃったの人か
この人のSSはあずにゃんLOVEの勢いに任せて書いた台本形式と、これとか澪ちゃんを殺しちゃったみたいになんか西洋文学みたいな独特な感じの地の文多めのがあるよな

タイトル:承認待ちコメント
NO:6836 [ 2016/02/03 21:14 ] [ 編集 ]

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