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紬「旅立ちの日に」 【非日常系】


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4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/16(土) 00:01:16.72 ID:PAlhF1ca0

透き通るほど蒼い海。遥か彼方の水平線、寄せては返す大波、小波。
そんな海を眺めながら、私は新たな旅立ちの準備をしつつ、過去の偉人に思いを馳せる。

(今でこそ、ほとんどの大陸や島が発見されて、自由に行き来できるようになったけど、
 コロンブスやマゼランは、旅立ちの日に何を思ったのかな?

 不安?恐怖?それもあるはず。でも、きっと彼らは希望に満ち溢れていたはずだわ。
 例え命を失うかもしれなくても、彼らは航海に出た。
 彼らが不安や恐怖に負けていたら、きっと何も得ることは無かったはず。
 彼らは希望を追い続けたから神様がほほ笑んでくれたんでしょうね。

 ……私にも、神様微笑んでくれるかな……?
 ううん、きっと皆と出会えた時点で神様は私に対しての役目を終えてるんだわ。
 これから先は自力で行くしかない。……まあ、私には不安も恐怖もないんだけどね……)





6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/16(土) 00:06:17.03 ID:PAlhF1ca0

「……本当に行かれるのですか?もう少し考えてからでもよろしいのでは?」

新しい旅立ちに向けて、荷物の準備をする私の後ろから、

私の思考を遮るように聞き慣れた声がかかる。

「何度言っても私の決意は変わらないわよ?頑固さはお父様譲りなの、もう知ってるでしょ?」

初老の男からかけられた言葉を軽く流し、私は最後の荷物を用意する。

「ん・・・…っと。よし、これで大丈夫かな?貴方はどう思う?」

そう言って私は、荷物を抱えた両手を重たげに持ち上げてみせ、

私の後ろに立っている男に確認を行う。



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/16(土) 00:08:27.13 ID:PAlhF1ca0

「はぁ、……まあ大丈夫でしょう」

男からは、ほぼ期待通りの返事とはいえ、どこか気のないような返事が返ってくる。
私は、少しだけイラッとしたのを自覚しつつ、
しかし態度や言葉にトゲを出さないように、冷静に抗議を行う。

「これは、私の新しい旅立ちのためのとっても大切な準備なのよ?しっかり答えて頂戴」

「……申し訳ございません。それだけ念入りに準備すれば、まず大丈夫でしょう。保証します」

私はその100点満点の返事に、すっかり上機嫌になる。

「……しかし、不安やためらいはないのですか?お嬢様はやけにさっぱりしておられるようですが……」

「普通の人は変化を怖がるからね。
 今を変えたいって思いながらも、本当はその変えたい今や、
 変えないまま行くと訪れる、安定した未来にしがみついてる。だから一歩が踏み出せないの。
 私は今の……ううん、このまま行くと訪れるであろう未来に何の未練も無ければ、楽しみも無いの」

私は男の疑問にそう答えると、荷物のせいで重たくなった足を引きずって、扉の前に立つ。



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/16(土) 00:11:44.90 ID:PAlhF1ca0

「……私には理解できませんな。
 あなたほど、恵まれた境遇で産まれてくる人間も数少ないでしょうに……
 家柄、財産、名誉、約束された将来……それらを捨ててまで、いきたいものなのですか?」

「言ったでしょ?そんなもの、私はいらないの。
 小さい頃、私は闇の中にいたわ。周りの人間は、決まって私を特別扱いした。
 でも、皆は違ったわ?皆は私の事を普通の女の子として扱ってくれた。
 闇の中にいた私にとって、皆は初めての光だったの。
 皆とずっと一緒にいられるなら、それで私は満足なの」

「……なるほど。残念ですがそこまでお嬢様の決意が固いのであれば、
 これ以上言っても無駄でしょうから、もう止めません。
 お時間をとらせてしまい、申し訳ございませんでした。
 約束通り、旦那様には秘密にしておきます。」

「そうしてくれるとありがたいわ。じゃ、私はもういくわね?」

「……待ってください、やっぱり最後にもう一つよろしいですか?」



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/16(土) 00:13:52.28 ID:PAlhF1ca0

私は完璧に出鼻を挫かれたような気がして、
今度は、イライラを態度や言葉にあからさまに出して聞き返す。

「なに?聞きたい事があるなら早くしてくれない?いつまで引き止めるつもり?」

「もし……もしの話ですが、
 今いって、ずっと一緒にいられなかったら、どうするおつもりですか?
 その時には、もうお嬢様には何も残っていないのでは?」

「……確かにそうね。でも、この一歩を踏み出せば、今を変えることはできるじゃない?
 待っているものが闇だとしても、私はそれで満足なの」

私の返事に、男の顔には完全に諦めの色が浮かんでいる。もう引き止められる事は無さそうだ。



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/16(土) 00:16:07.72 ID:PAlhF1ca0

「……そうですか、わかりました。
 それではお嬢様、これをお受け取りください。この先、何かと必要になるでしょうから。」

そう言った男の手には、お金が握られている。

「あら……そんな気遣い別にいらないのに。でも、せっかくだからありがたく受け取っておくわ。」

私は受け取ったお金を無造作にポケットに放り込む。
多くはない金額だけど、行先までは旅費もそんなにかからないらしいし、
皆と遊ぶのに使えるかな?なんて少し思ってしまう。



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/16(土) 00:18:19.86 ID:PAlhF1ca0

私は男に別れを告げると、目を閉じて深呼吸を一回する。
そして私は目を開き、光へ続いている道に向かって、迷いなく一歩を踏み出す。

重たい荷物を抱えているはずの私の体は、
まるで羽でも生えたのではないか、と錯覚する位軽く感じた。
ザザーン……ザザーン……という潮騒の間に、私を呼ぶ皆の声が聞こえた……


                                               end




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紬「旅立ちの日に」
[ 2012/01/14 13:50 ] 非日常系 | | CM(0)

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