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紬「Salty valentine」 【恋愛】


http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1329832945/l50

紬「素敵な誕生日プレゼント」
澪「大切な誕生日プレゼント」
憂「Happy valentine」
紬「Salty valentine」
憂「あったかな誕生日プレゼント」
梓「Sweet valentine」




1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:02:25.96 ID:ZtbxBG8l0

「ねぇ、澪ちゃん、梓ちゃんのこと、どう思う?」

白いもやのかかった、部室のような空間で、私は澪ちゃんに尋ねる。

「どう思うって言われても……」

「じゃぁ、どんな子だと思う?」

「えっと……ギターがうまくて、まじめで、
 でもちょっと生意気で、ちっちゃくって、かわいくって、
 いつも元気で、いつも、そんな元気をくれて」

澪ちゃんは嬉しそうに、すらすらと答えていく。

「じゃ、じゃぁ、私のことはどう思う?」

「ムギのこと……?

「うん」

「……ごめん、特に思いつかないや」
澪ちゃんは、口ごもり、困ったような表情を浮かべた。





2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:04:18.66 ID:ZtbxBG8l0


「そんな……」

「だって……私、梓のことしか考えられないから……」

「私もです、澪先輩」
いつの間にか現れた梓ちゃんが、澪ちゃんに寄り添い腕を絡める。

「梓……」
「澪先輩……」
二人は見つめあい、そして―――



3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:06:04.19 ID:ZtbxBG8l0

―――

「……ゆめ?」
私はベッドの中でぼんやりと呟いた。
頬に伝う冷たいものを手で拭い、壁の時計に目を移すと、既に8時を回っていた。

「そろそろ準備しないと」
そうは思うものの、なかなかベッドから起き上がることが出きない。

今日はりっちゃんのお家で、軽音部の3年生組み4人で、チョコレートを作ることになっている。
いつもなら楽しいイベントなのだけれど、今日は違っていた。

「休んじゃおうかな……」
そう呟いた時、サイドテーブルに置いてあった携帯電話が震え始めた。
ディスプレーを確認すると、それはりっチャンからの電話だった。



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:08:48.98 ID:ZtbxBG8l0


「もしもし」

『ムギ?』

「どうしたのりっちゃん」

『なぁ、ムギん家にラム酒ってない?』

「ラム酒?
 ……あると思うけど?」

私が、質問の意図をつかめないまま答えると、
電話の向こうからりっちゃんの大声が響いた。

『頼む!貸して!』

「え?」

『今日作るチョコに必要なんだけどさぁ。
 買っておいたの、親に飲まれちゃって』

「そうなの?」

『澪や唯にも聞いたんだけど、家にないって言われてさぁ』

なるほど、それで必死だったのね。
そう思い、私は微笑んで答えた。



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:11:20.08 ID:ZtbxBG8l0


「うん、じゃぁ持ってくね」

『たすかったぁ、ありがとなムギ』

「じゃぁ、また後でね」

『うん、じゃぁ後で』

私は、電話を切ってはっとした。
さっきまで休もうと考えていたのに、
自分から行かなければいけない状態にしてしまうなんて。

「はぁ……」
私は、小さくため息を吐くと、身支度を始めるため、ベッドから身を起こした。

「…………」
私は、髪をとかそうと鏡台の前まで行ったが、そこであるものが視界に入ってしまい、
思わず足を止め、目を逸らしてしまった。



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:13:23.51 ID:ZtbxBG8l0


「ふー……」
大きく一呼吸し、もう一度それに視線を移し、ゆっくりとした動作で手に取る。

「澪ちゃん……」
それ―――
網掛けのマフラーを手にすると、自然に唇から言葉がこぼれた。
それは、今年のバレンタイン。
つまり、今日、澪ちゃんにプレゼントするつもりで作っていたものだった。

そして、あの日。
澪ちゃんの誕生日、澪ちゃんと梓ちゃんが結ばれてから、
ずっと触れることの出来なかった物だった。

「……さよなら澪ちゃん」
私は首を振ると、マフラーを解こうとして―――

「どうして……」
私は、その体制のまま、まるで金縛りにでもあったかのように身動き一つできなかった。

「……諦めるって決めたのに」
思わず瞳から涙が溢れた。



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:16:56.52 ID:ZtbxBG8l0

―――

「遅かったなムギ」

「ごめんなさい、ちょっと準備に手間取っちゃって」

私が、約束の時間から1時間ほど送れてりっちゃんのお家に着くと、
3人は既にチョコレート作りに取り掛かっていた。

「あ、ごめんな、私が急に無理なお願いするから」

「ううん、別にりっちゃんのせいじゃないから」

そう、りっちゃんのためにラム酒を探していて、遅れたわけじゃなかった。
ただ、涙の痕跡が消えるまで、部屋から出ることが出来なかっただけで。



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:18:45.22 ID:ZtbxBG8l0


「澪ちゃ~ん、手伝ってくだされ~」
キッチンに入ると、唯ちゃんの半分泣きそうな声が、いきなり耳に飛び込んできた。

「どうした?」

「字がうまくかけないんだよ~」

「でもそれ、憂ちゃんへのチョコレートだろ?
 メッセージは自分で書いた方が……」

「うん、メッセージは自分で書くんだけど……
 書くためのストロベリーチョコ、なくなっちゃったんだよ~。一緒に作って」

「しょうがないなぁ……
 私の方はだいたい終わったし、いいよ」

「ありがと、澪ちゃん」
澪ちゃんは優しく微笑むと、唯ちゃんのチョコレート作りを手伝い始めた。

「ムギ、私たちも作ろうぜ?」

「う、うん」
そして、そんな澪ちゃんに見とれていた私の思考を、りっちゃんの声が現実へと引き戻した。



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:20:18.65 ID:ZtbxBG8l0

―――

「できたー!」
唯ちゃんの元気な声が、キッチンに大きく響く。

「ついに……ついにやったんだな、唯隊員」

「や、やりました……りっちゃん隊長!」

「唯隊員!」

「りっちゃん隊長!」
そして、いつものように小芝居を始める唯ちゃんとりっちゃん。
そんな二人を、いつものように見守っているだろう、澪ちゃんに視線を向けると……。



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:25:19.61 ID:ZtbxBG8l0


「ごめん……そろそろ時間なんだ」
澪ちゃんは時間を気にし、そわそわしていた。

「あぁ、梓とのデートの時間か?」

「ば、ばか!」

りっちゃんのストレートな問いかけに真っ赤な顔で答える澪ちゃん。

(澪ちゃん……)
そんな澪ちゃんの表情に、胸が締め付けられた。

「あっ!澪ちゃんとあずにゃんがデートってことはもう憂、一人なんだよね!?」

「そうだろうな」

「じゃぁ、私も帰らないと。
 憂、寂しがっちゃうもんね」

「じゃぁ唯、途中まで一緒に行こう」

「うん」

そうして二人は、手早く荷物をまとめると、あわただしくりっちゃんのお家を後にした。



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:26:54.68 ID:ZtbxBG8l0

―――

「なぁムギ……大丈夫か?」

「え?」

二人が出て行くと、急にまじめな口調になったりっチャンが尋ねてきた。

「ムギ……辛かったら無理しなくていいんだぞ?」

「なんのこと?」

「澪のこと好きなんだろ?」

「…………」

私は、その問いに答えることが出来なかった。



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:28:40.69 ID:ZtbxBG8l0


「ずっと気になってたんだ。
 ムギ、いつも笑顔だったけどさ、澪が梓と付き合いだしてから……
 なんかうまく言えないけど、どっかいつもと違っててさ」

「…………」

「なんだか辛そうでさ……」

「…………」

「うまく言えないんだけど……辛い時は無理せず、泣いた方がいいんじゃないか?」

りっちゃんの、その優しい言葉に、私の瞳から一筋の涙がこぼれた。
そして、一度流れ出した涙は、次から次へと溢れ出し、
とめようと思っても、とめることが出来なかった。

「り、りっちゃん!」

そして私は、りっちゃんにしがみつき、
子供のように大声を上げて、わんわんと泣き出してしまった。



22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:30:00.48 ID:ZtbxBG8l0

―――

「……大丈夫か?」

しばらくして、私が少し落ち着くと、
りっちゃんは私の頭をなでていた手をとめ、問いかけた。

「……うん」

「少しはすっきりした?」

「……うん」

「それならよかった」

「……りっちゃん、ごめんね」

「なにが?」

「服、濡らしちゃったね」

「すぐ乾くからぜんぜん大丈夫だよ」

そう言うとりっちゃんは、いつものはじけるような笑顔を見せてくれた。

「よしっ、さっきのガトーショコラ、余分に作ったから一緒に食べようぜい」

「いいの?」

「いいっていいって」

「ありがとう……じゃぁ、お茶淹れるね」



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:31:33.99 ID:ZtbxBG8l0

―――

その日、りっちゃんと食べたガトーショコラは、
うまくできていたはずなのに、なぜか、しょっぱかった。
でも、胸に詰まった痛みを溶かしてくれる、そんな優しい味だった。



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:32:48.40 ID:ZtbxBG8l0

―――

「もしもし」
私は、自室に戻ると電話をかけた。

『ムギ、どうしたの?』

「ごめんね澪ちゃん、今梓ちゃんと一緒だよね?」

『うん』

「ねえ澪ちゃん……澪ちゃんは幸せ?」

『え?何で?』

澪ちゃんは、不思議そうに尋ねる。

「ごめんね、急に変なこと訊いて。
 ちょっと訊いてみたかったの?

『そっか……うん、幸せだよ』

澪ちゃんの、穏やかな声が受話器から流れる。



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:34:28.79 ID:ZtbxBG8l0


「よかった……梓ちゃんにも変わってもらえる?」

『うん』

そして、しばらくすると、梓ちゃんの元気な声が響いた。

『ムギ先輩ですか?』

「ごめんね、二人っきりのところ邪魔しちゃって」

『いえ、大丈夫ですよ』

「ねぇ、梓ちゃんは今、幸せ?」

「はい!ムギ先輩のおかげです。
 ありがとうございます』

屈託のない、梓ちゃんの返事に、口元が緩んだ。

「ううん、そんなことないわ。
 梓ちゃん……澪ちゃんと仲良くね」

『はい!』

私は、電話を切ると、再び鏡台の前に向かう。
そして、網掛けのマフラーを手にした。

「澪ちゃん、素敵な恋をありがとう……
 梓ちゃん、澪ちゃんをよろしくね」

私の手の中で、マフラーはするすると音をたて、もとあった姿へと帰っていった。


おしまい



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:38:07.07 ID:ZtbxBG8l0

読んでいただいた方、支援いただいた方、ありがとうございました。
すでにご指摘いただいていますが、
澪「大切な誕生日プレゼント」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1326718757/l50#tag33
の続きで、憂「Happy valentine」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1329228890/l50#tag2
と同じ日の話になります。




29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:36:39.19 ID:J6khXes60


切ないままだったな…



36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:41:08.58 ID:5ioJVrOPO


やはりポジションは変わらずか



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:42:42.37 ID:5hgLt0E90

おつ
いつかムギが幸せになる話を書いて



40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:49:30.02 ID:OdQeWqge0

ムギが報われる話は見たいな






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紬「Salty valentine」
[ 2012/02/22 19:44 ] 恋愛 | | CM(0)

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