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梓「ストーカー」#前編 【非日常系】


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梓「ストーカー」#前編
梓「ストーカー」#後編




1 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/09(月) 16:29:08.05 ID:EAYQUC/J0




始まりは、昨日の帰り道だった。

――――

唯「ばいばーい」
梓「はい、また明日!」

最後に唯先輩と別れて、しばらく歩いていると、後ろから突然

カシャッ

という音がした。

梓「…?」

変に思って、くるっと後ろを向いてみても誰もいない。
それどころか、車一台すら通ってなかった。
カメラのシャッター音みたいな音が聞こえたのだが、気のせいだろうか。
もともとあまり人通りが少ない道だから気にしていなかったが、よく考えたら今一人だ。
薄暗くなってきてるせいもあって、少し怖くなってきた。

梓「空耳…だよね」

自分に言い聞かせるように口に出してみる。
そして、早足で家に帰った。

――――





2 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/09(月) 16:29:49.78 ID:EAYQUC/J0



翌朝

憂「あ、梓ちゃん!おはよう」

純「おー梓、今日は遅いんだねー」

梓「あ、憂、純…おはよう…」

純「へ?梓?」

憂「梓ちゃん…なんかあった?」

梓「え…ううん、大丈夫だよー」ハア…

憂純「どこが…?」

梓「ただ…ちょっと寝不足…かな」

憂「そっか…」

純「あ、梓が寝不足なんて珍しいね!」

梓「ごめん…ちょっと寝る…」

純「あ、オッケー」

憂「じゃあ先生来たら教えるね」

梓「ありがと…」



3 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/09(月) 16:30:20.80 ID:EAYQUC/J0


今日は朝からツイてない。
昨日小走りで帰ったからだろうか。ケータイにつけていたストラップがなくなっていた。
家中探してもないし、昨日帰ったいつもの道を探してもやっぱり見つからなかった。
あれ、お気に入りだったのに。

それに、朝ケータイがやけに鳴るなと思ったら、大量に迷惑メールが来ていた。
私は基本的に朝はケータイをカバンに放り入れるだけで終了なのに、
ストラップがなくなってた事に気付いたのもこのせいだった。
しかも、内容は全然意味分からない。
全て着信拒否にしたらメールは来なくなった。

極めつけは、登校中。
時間は少し遅くなってしまったけど、いつも通り一人で歩いていただけで、
いつもと変わらない道を歩いていたはずなのに、今日はやけに視線を感じる。
それも一人じゃない。なんか、気持ち悪い。

後ろを向いてみたけれど、やっぱりそれらしき人はいなかった。
もしかしたら、電柱の陰に居るのかも…と思ったが、
怖くてチラッとしか見なかったので分からなかった。
そして、昨日のあの事と今日の迷惑メールを思い出した。

梓(もしかして、ストーカー…?)



4 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/09(月) 16:31:10.33 ID:EAYQUC/J0



背中がゾクッとする。怖いし、早く逃げたい。
このまま交番に駆け込もうかと思ったけど、
もし勘違いだったら恥ずかしいし遅刻する訳にもいかない。
私はダッシュで学校に来たのだった。

純と憂が、私を心配そうに見ている。
怖いし、相談しようかな…。
でも、二人にはいつも迷惑ばっかかけてるし、心配かけたくないなぁ…。
今までを思い出して、やめた。

純も憂も、あまり自分の事は相談してこない。
私が軽音部の悩みを話している時も、二人はうんうんといって聞いてくれるし、
憂はアドバイスまでくれる。純も持ち前の明るさで私を元気づけてくれる。
今だってこうやって心配かけている。
助けてもらってばかりの私が、さらに迷惑なんてかけちゃいけない。

私は、恐怖心を隠しながら、なんとかごまかし、放課後までやってきた。
授業は全くと言っていいほど耳に入って来なくて、授業中もずっと今日の事を考えていた。



5 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/09(月) 16:31:41.70 ID:EAYQUC/J0



部室へ行く途中、階段を上っていると、後ろから同じように階段を上る音が聞こえた。

梓(ここの階段、音楽室に行く以外あまり使われてないのに…)

トン…トン…トン…

ストーカー疑惑の話もあって、怖くて前に進めなかった。
足が震えて、上がろうと思っても上がれないのだ。

梓(やだ…どんどん近付いてくる…怖いよぉ…)ブルブル

チョンチョン

梓「きゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」グラッ

突然肩を叩かれた私は、びっくりしてバランスを崩してしまった。
膝がガクッと折れ、後ろに崩れ落ちるように倒れる。

梓(ヤバい…!!)

でも、いつまでたっても痛い衝撃は来なくて、かわりに良く知った声が耳に入った。

律「梓?大丈夫か?」

肩をたたいた主は、律先輩だった。
後から聞いた話によると、前に私がいたから、驚かせようと思ってやったらしい。
律先輩は倒れかかった私をキャッチしてくれたため、私は無傷で助かった。

律「わりーわりー、ごめんな?梓」

梓「……」ポロッ

律「…へ?」

梓「……」ポロポロ

律「どうした?ごめんな、痛かったか?」

梓「……」フルフル

律「…ちょっと落ちつこっか」ギュッ

律先輩は、泣いたままの私を静かに屋上へと連れ出した。
律先輩は何も聞いてこないし、私も何も言わない。沈黙の時が流れた。
でも、私にとってはむしろそれがありがたかった。
今はまだ喋れない。気持ちが追いつかなかった。

怖さが律先輩の優しさに触れて安心に変わり、律先輩の隣で声をあげて泣き続けていた。
その間律先輩はずっと私の手を握っていてくれて、優しい顔でそばにいてくれた。
律先輩のあの顔は、一生忘れる事が出来ないだろう。



6 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/09(月) 16:32:35.93 ID:EAYQUC/J0



律「…落ち着いた?」

梓「……はい、…すみません…急に…」グスッ

律「大丈夫だってー、私が驚かせたのが悪いしな!」

梓「…ほんとですよ…」グスッ

律「…ん。ごめんな」ヨシヨシ

梓(いつもだったら『なんだとー?』とか言ってくるのに…)

梓(気を使ってくれてるのかな…)

梓「…いえ、冗談です…」

律「……そっか…よ、よかったー」

律梓「……」

再び沈黙が流れる。
律先輩はやっぱり何も聞いてこなかった。
唯先輩あたりだったら、『どどどうしたの?!?!なんかあったの?!?!』とか聞いてきそうだ。
律先輩も、きっとそうやってなんか聞いてくるのだろうと思っていた。
だから、どうやって話せばいいのか迷っていた所だった。

律「……あのさ、」

梓「…はい」

律「……友達に言いにくい事あったら、先輩…頼っていいんだからな?」

律「…………澪とか、ムギとか…皆いるし…な?」

最後のは照れ隠しだろう。
律先輩はやっぱり素敵な部長でした。
私の雰囲気で何か気づいてくれたのでしょう。
私としては、先輩方にもいつも迷惑かけてばかりなので
これ以上迷惑をかけるわけにいかない…と思うのですが。

でも、そろそろ私の心も限界です。
帰り道を想像すると、不安を隠せなくなってきます。

なので、思い切って律先輩に打ち明けてみました。

梓「あの、律先輩……実は…」

昨日の事も、今日の事も全部話しました。
途中でやっぱり怖くなってまた泣いてしまいましたが、
律先輩は優しく私が話すのを待ってくれました。
いつもの不真面目で大雑把な律先輩は何処にもいません。



7 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/09(月) 16:33:54.97 ID:EAYQUC/J0



話を聞き終わった後、律先輩も動揺していました。

律「……梓、それって……」

梓「やっぱり、ストーカー…なんでしょうか…?」

律「多分…な」

梓「……」ブルブル

律「…まだ実際の被害は迷惑メールだけか?」

梓「え…?」

律「見られてる、とかはまだ証拠がないから置いといて、無言電話とかはきてないんだよな?」

梓「はい、一応…」

律「…んー、じゃあ、まだ…や、でも危ないな…」ブツブツ

梓「…律先輩?」

律「あ、悪い。実はさ、ストーカーされてたことがあってさ…」

梓「えっ?律先輩が?」

律「は?…あ、違う違う、私じゃなくて澪がさ!」

梓「そうなんですか…」

その話で、律先輩から澪先輩が無言電話や迷惑メールを受けていた事を聞いた。
調べたら、その犯人は澪先輩の事が好きで追いかけまわしていたらしい。
その人は結局何処かに引っ越していったみたいだけどな…、と律先輩は言っていた。

律「とりあえず、今日はどうするんだ?」

梓「え?」

律「帰り。危ないだろ?」

梓「あ…」

律「ま、とりあえず部室行こうか!皆待ってるだろうし!」

梓「は、はい!」



8 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/09(月) 16:34:37.36 ID:EAYQUC/J0



律「おっすー」

梓「遅くなりましたー…」

唯「あーーーーずにゃーーーーーーーーん♪」ダキッ

梓「にゃああああああ!!!」グイッ

唯「もー!あずにゃんのいけずー」プンプン

梓「当たり前です!!」

澪「律、遅かったな」

紬「梓ちゃんと一緒だったの?」

梓「……!」

律「ああ、会ったから話してたら遅くなっちったー」ヘヘヘ

梓(あれ、律先輩ナイショにしてくれてる…)

澪「そうか」

紬「お茶入ったわよ~」コト

律唯「やったーーーー!」

澪「いつもごめんな?」

紬「いいのよ♪」


こうして、いつもの軽音部らしくろくに練習もせず部活を終えた。



9 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/09(月) 16:35:12.46 ID:EAYQUC/J0



唯「あずにゃん?どしたの?」

梓「へっ?」

唯「だってなんか怖い顔してたから~」

梓「き、気のせいですよ!」アセアセ

唯「そうかなぁ~。ねえ澪ちゃん、そう思わない?」

澪「私?!…んー普通じゃないか?」

唯「そうかなー…」

律「唯どうしたんだ?」

唯「だってあずにゃん今日変なんだもん!」

梓「そ、そんなことありませんよ!」

唯「えー…」

律「あ、澪ー、今日こっちから帰ろうぜ~?」

澪「え?…ああ、いいよ」

律「あんがとー。ちょっと用事があってなー」

澪「…」

唯「あれ?りっちゃん達今日こっちなの?」

梓「…?」

澪「ああ、律が用事あるんだってさ」


唯「ええ~?もしや、りっちゃん彼氏~?」

律「…彼氏だったら澪連れてかないだろー」パコッ

唯「いったぁ~それもそっか~」サスサス

律先輩も澪先輩も、さりげなく私を助けてくれた。
特に澪先輩なんか、何も言っていないのに助け船を出してくれる。
きっと一生、この二人には頭が上がらないだろうな。



10 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/09(月) 16:35:43.72 ID:EAYQUC/J0



唯「じゃあね~」

律「気をつけろよ唯隊員!」ビシッ

唯「はいっ!りっちゃん隊長!!」ビシッ

澪「じゃあな、唯」

梓「さよならです」

唯「うん!まったね~」ヒラヒラ

澪「…さて」

律「あはは…」

梓「…?」

澪「梓、今私が想定した事を言ってもいいか?」

梓「?はい、いいですよ」

律「これで間違ってたら恥ずかしーでちゅねーみーおちゃん♪」

澪「」ボカッ

律「いって…」サスサス

梓「あはは…。あ、で澪先輩、なんですか?」

澪「ああ…。もしかして梓、何か悩んでることないか?」

梓「え?」

澪「特に…“ストーカー”」

梓「……!!!」

澪「で、それを律に相談した…って感じであってるか?」

梓「…はい」

律「…さすがだな」

どうやら澪先輩は分かっていたらしい。



11 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/09(月) 16:36:49.02 ID:EAYQUC/J0



澪「律は分かりやすいんだよ」

律「私がか?」

澪「昔私が同じ目にあった時もそんな顔をしてたからな」

梓「そうだったんですか…」

律「澪、怖くないのか?」

澪「まぁ、ちょっとは…。でも、律がいるから」

律「は?」


梓「?」

澪「梓、律から私の話は聞いてると思うが、それには裏があってな」

律「ちょっ、澪!」

澪「実は、犯人捕まえたの、律なんだよ」

梓「えっ?!」

澪「律がおとりになってな」

律「もういいから!」

澪「……。まあ、いざとなったら律は強いから大丈夫」

梓「はあ…」

律「……」

澪「じゃあな」ヒラヒラ

律「?…ああ、そっか、こっちからならまっすぐ帰れるもんな」

澪「ああ。梓、何かあったら相談しろよ?」

梓「…!はい!」

澪「じゃ」

澪先輩は帰っていった。



22 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/18(水) 15:34:11.84 ID:Pugu1VoQ0


それと同時に、2通のメールが来る。

律「梓、ケータイなってるぞ?」

梓「あ、はい、ちょっとすいません」パカッ

唯『あずにゃん!待ってるよ!!』
紬『悩みがあったら相談してくれていいからね?』

メールの送り主は、唯先輩とムギ先輩だった。
唯先輩のは…何だろう、内容の意味がよくわからない。
けどやっぱり、私が何か悩み事を抱えてると気づいているのだろう。
そういえばさっきも「今日はなんか変」って言ってたし。

ムギ先輩はストレートな言葉だったが、それが一番ありがたかった。
メールの文章を見ているだけでもムギ先輩の優しさが伝わってくる。
二人とも、律先輩や澪先輩のように直接言っては来なかったけど(唯先輩は指摘したけどね)、
私の事を本気で心配してくれているのがメールからでもすごく伝わってきた。

軽音部の先輩は、みんな素敵な先輩だ。
私はちょっと嬉しくなりながらケータイをしまった。

律「梓、今の所はまだ大丈夫そうか?」

梓「あ、はい、多分…」

律「ん、ならいいけどさ」

律先輩はそう言って黙り込んだ。私達の間に、沈黙が流れる。

もうすぐ私の家が近付いていた。今日は二人でいるからか、見られている様な感じも何もしなかった。
そうだ、律先輩にお礼言わないと。わざわざ私のためにここまで来てくれたんだから。



23 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/18(水) 15:43:59.08 ID:Pugu1VoQ0


梓「あの、律先輩…!」

律「ん?」

梓「…ありがとうございました。私のために送ってくれて」ペコッ

律「?…ああ、いいっていいって!照れるし!」

梓「いえいえ、本当に感謝してるんです」

律「…あ、うん……ま、まあ…ありがとなー…!」

梓「それでは失礼し……」

その時だった。私の家の前に、誰かが立っていたのだ。
自転車が止まってるし、黒い服装だけど、ただの新聞配達員かもしれない。
でも、それ以上に昨日と今日の事がフラッシュバックしてきて、
恐怖から私はその場に立っている事が出来なくなった。

梓「」フラッ

律「梓?!」

梓「…………怖いよぉ………!!!」グスン

ああもう、どうして私はこんなに泣き虫なんだろう。
今日一日だけで、律先輩に何度泣き顔を見られたことか。



24 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/18(水) 15:50:52.82 ID:Pugu1VoQ0


でも。そんなことよりもっと大事なことがある。

そう思ってもう一度私の家を見たけど、もう誰もいなかった。
あの人は、誰だったのだろうか。
両親の友達?はたまた私の知り合い?近所の人?
でも、身長は意外と小さそうな気がした。私が言えることじゃないけど。
女性?それとも背が低い男性?
よく分からない。考えれば考えるほどこんがらがってきてしまう。

律「…」

律「…………………あの自転車……どっかで……?……」ボソッ



26 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/18(水) 16:09:54.62 ID:Pugu1VoQ0



律先輩が何か言った気がしたけど、私の耳には入って来なかった。
あの人影が、脳内にこびりついて離れない。あの瞬間の映像は、私の不安を大きくさせていくだけ…。

私が少し落ち着いてから、家まであと20メートルと言う所からようやく進みだした。
まだちょっとドキドキしているけど、隣にいる律先輩のいつもと違う、
大人っぽい表情が、私を少し安心させてくれた。

そういえば澪先輩が言ってたな。「律は強いから大丈夫」って。
私にとっては、強い、じゃなくて、頼もしい、かな。

少しして律先輩が、そういや追いかければよかったな、と思い出したように私に言った。

梓「すいません、私、いきなりあんな風に…」

律「大丈夫大丈夫、あれはあたしもびっくりしたよ!」ハハ

梓「すいません…」カアッ

律「ま、梓が無事ならいいんだよ、あたしは」ポン

梓「…はい」

梓(律先輩、やっぱ優しい…)

律「ここだよな?」

梓「あ、はい」

律「……」キョロキョロ

梓「律先輩?」

律「…よっし、大丈夫そうだな!」

梓「何がですか?」

律「この辺に誰かいないか!…梓、家帰っても一人なんだろ?危ないじゃん」

梓「……あ……」

律「?」

梓「………そっか…一人…なんだ…」ボソッ

律「…!」



27 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/18(水) 16:30:56.83 ID:Pugu1VoQ0


梓「あっ」

気づいた時はもう遅かった。つい思った事を口に出してしまっていた。
だって、妙に現実に引き戻された感がして、今こうやって二人でいる時でも怖いのに、
一人になることが怖くてしょうがなかったんだ。



32 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/19(木) 17:04:38.13 ID:licNGh3Y0



体は勝手にブルブル震えだすし、
さっきの謎の人が立っていた事を思い出して、今いる場所から後ずさりしてしまう。
これじゃ、また律先輩に迷惑かけちゃうのに…。


律「……梓」

梓「…は……はい…」ガクブル

律「…怖いなら、あたしん家泊まりに来るか?」

梓「え…でも…」

律「今日金曜日じゃん?あたしん家、今日両親いないしさ。
  弟はいるけど、それでもいいなら来ても大丈夫だぞ?」

梓「……」

律「どうする?」

梓「…お願い…します」

律「…おー!それじゃ、荷物用意しないとな!
  ここで待っててやるから、着替えて荷物持ってきな!」ニカッ



33 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/19(木) 17:05:05.79 ID:licNGh3Y0




こうして、私はまた律先輩の優しさに甘えることになった。
家に入ってすぐ、律先輩に言われた通り用意して、ぱっと着替えた。
家から出た時、律先輩がいなかったらどうしようかと思ったけど、
ちゃんと同じ場所で待っていてくれていた。
なんか今日は、いつもの律先輩じゃない。


私達は、さっき通った道をもう一度引き返した。

私の家のポストに、謎の人物からの手紙が入れられていた事も知らずに…。


梓「おじゃましまーす…」

律「おう、入れ入れ!」

聡「おかえりー…ってあれ、け、軽音部の…人?」

律「ああ、梓は今日うちに泊まりに来たんだぜ!」

聡「へえ~……は?!?!」

律「梓、何度も見てると思うけど、こいつ私の弟の聡な」スルー

梓「はい、知ってます」

聡「…!」

律「やっぱりか」

律「ま、あたしの部屋に行こーぜー!」スタスタ

梓「はい」スタスタ

聡「……」



35 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/19(木) 17:17:47.54 ID:licNGh3Y0



律「大丈夫か?」

梓「…?何がですか?」

律「いや…別にいいけど」

梓「そうですか」

律「じゃーちょっとお茶とってくるから待っててな!」


そう言って律先輩が部屋を出ていった。
この部屋にいるのは私一人。
それなのに、どこかで誰かが見ている様な気がしてしまうのは、私が臆病だからだろうか。

不安で不安で仕方ない。でも、顔には出さないようにしようと決めた。
これ以上律先輩に、みんなに、迷惑はかけられない。
月曜日までに解決しなかったとしても、軽音部の先輩方の前や、純と憂の前では明るくふるまおう。
そう決心していた。



37 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/19(木) 17:20:28.03 ID:licNGh3Y0




律「あーずさー、ちょっとドア開けてー」トントン

梓「あ、はい!」カチャ

律「サンキュー、片手じゃ持てなかったからさ!」

梓「呼んでくれれば手伝ったのに…」

律「梓は客人だろ?ダメダメ」

梓「でも、突然おじゃました身ですから…」

律「そんなことはいーの!あたしが勝手に呼んだようなものだし」

梓「そんなことないです!私が…」

律「……ぷっ」

梓「へ?」

律「あっはははは!」

梓「律先輩??」

律「梓がへりくだってるー!!」ニヤニヤ

梓「ちょっ、もう、律先輩!!私だってそれくらいできますー!!」プンスカ

律「言い返すなんてまだまだ子供でちゅねー」クスクス

梓「もう!!」プンプン

律「……」フゥ

律「まーまー、そんな怒るなって、お菓子持ってきたから食べようぜー!」

梓「え…?ティータイムしたばっかじゃないですか!」

律「細かいことはいーの!」

梓「よくないです!!」



38 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/01/19(木) 17:27:16.89 ID:licNGh3Y0




ピンポーン


急に、玄関のチャイムが鳴った。

聡『ねーちゃーん、澪さん来たけどー?』

律「おう、上がってこいって言ってー」

聡『りょうかーい』


トン…トン…トン…


澪先輩の階段を上る音が聞こえた。

ちょっとその音にビクビクしてしまったけど、
そういえば学校の階段の音は律先輩だったんだっけ。
思い出してビクビクするのをやめた。
怖くない、大丈夫…。

澪先輩がちょっとのことで怖がる理由が分かった気がした。



42 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/20(金) 16:58:31.25 ID:tdtdiS1x0



澪『入るぞー』ガチャ

律「おう、いいぞー」

澪「珍しいな、開けにきたのが聡だなん……そういうことか」

梓「…お、おじゃましてます…」モジモジ

澪「ああ、気にしないでいいからな」

律「…ホント澪はこういう時は勘付くのが早いよな」

澪「そうか?」

律「いつもそうだよ。怖がりなくせに」ニヤニヤ

澪「ばっ…それは関係ないだろ!…ていうか、律だって同じだぞ?」

律「は?」

澪「周りいっつも見ててさ。いつでも律がサポートしてやってる」

律「そんなこと…」カアァ

澪「あるよ。なあ、梓?」

梓「え?……はい、私もそうだと思いますよ?」

澪「ほら」

律「ちげーし!梓も適当な事言うなってーの!!!!」

澪「……まぁ、律がそう言って照れ隠ししてる事だから、この話はやめにしようか」

律「そーだそーだ!やめやめ!!」



43 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/20(金) 17:30:35.29 ID:tdtdiS1x0




律先輩と澪先輩の関係はすごいと思った。
律先輩がみんなのことをサポートしてくれているし、澪先輩の事も助けてあげている。
そして、澪先輩がそんな律先輩を支えている。

私にはそんな関係を持った人は誰一人いなかった。
幼馴染もいないし、友達だって少ない。
それに、自分の事で精一杯で、周りなんか観ていなかった気がする。

軽音部に入って本当に良かった。



44 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/20(金) 17:39:22.29 ID:tdtdiS1x0




澪「…あ、でさ…」

律「そうか、何の用だ?」

澪「いや、実はさ…」モジモジ

律「?」

梓「!!わ、私トイレ行ってきますね!!」ガタッ

律「お、おう、1階の玄関前な!」

澪「…」


律「で?」

澪「…」

律「梓には聞かれたくない事だったのか?」

澪「いや、むしろ梓も聞いてほしかったかな…」

律「は?」

澪「実はさ…」


私はトイレ、と誤魔化して律先輩の部屋を出た。
きっと澪先輩、私がいる前だと言いづらい事だったんだろうな。
先輩方は私より1つ上なんだ。
先輩方と同じような話をするのも無理がある。仕方ないか。



45 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/20(金) 18:01:47.51 ID:tdtdiS1x0




私はトイレ、と誤魔化して律先輩の部屋を出た。
きっと澪先輩、私がいる前だと言いづらい事だったんだろうな。
先輩方は私より1つ上なんだ。
先輩方と同じような話をするのも無理がある。仕方ないか。


梓「はあ…」


玄関の所で少し座っていた。
律先輩の家に来てから、私もようやく冷静さをとり戻すことができたようだ。
今なら帰れるかも…。

そう思ったが、やっぱり私の事だ。
家の前に着いたら怖くなって入れないだろう。
人が通っていたりしたらなおさら。
もう少し気を落ち着けたい。もうビクビクするのは嫌だから。


座ってじっとしてから少したった時、突然後ろから手が伸びて来たかと思ったら、
急に目の前が見えなくなった。
どうやらタオルで目隠しされているみたいだ。
一瞬理解できなかったのと、恐怖心から声を出すことも忘れて、
必死で手足を動かして抵抗していた。

これ、夢じゃない。

梓(まって、ここ、律先輩ん家だよね?…誰がこんなことを…?)

梓(まさか、律先輩と澪先輩?!)

梓「律先輩!?澪先輩!?」

??「…!!!!!」


私が叫んだら、犯人(?)は動きを止めた。
やっぱり律先輩たちか、と安心した所で、思いもよらない事が起こった。



46 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/20(金) 18:02:23.16 ID:tdtdiS1x0




??「おい、ズラかるぞ!!」

??「「はい!」」


こんな声が私の後ろから、前から、聞こえてきたのだった。
明らかに、律先輩たちの声じゃなかった。
これは、男の人の声だ。…じゃあ一体誰?
もう一度声を出そうと思ったら、今度は口にもタオルをされ、さらに私を持ち上げて歩き始めた。
そして、玄関のドアが開いた音がしたと思ったら、同時に上から聞きなれた声が耳に入った。


律『梓?呼んだ?』

梓「……ーー!!!!!!!」


声にならない声で私は叫んだ。
律先輩が聞いてくれる事を信じて。

でも、結局律先輩はそれっきり、何も言葉を発さなかった。
…聞こえていなかったのだろうか。
だとしたら…。

いや、それより、私は誰に連れ去られているのか。
抱きかかえて逃げようなんて事をしているのだから、車に乗せられちゃうのだろう。
まず、誰が田井中家に侵入したのだろう。
下には律先輩の弟、聡君がいたはずだし、上には進入できそうな所なんてなさそうだった。


今自分が置かれている状況がどうしても理解できていなかった私は、冷静にそう考えていた。



47 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/20(金) 18:20:29.51 ID:tdtdiS1x0




ただしその次に、それを打ち砕く様な衝撃的な発言を私は聞くこととなった。


『…梓さん、一人で降りてくるなんて、バカだね』フッ


まるで人を蔑むような声で、嘲笑うかのように言い放った人がいた。
おそらく、この人も男だろう。でも、少し幼い様な…。


梓(……!!!!!!)


私はこの声を聞いたことがある。
しかも、ついさっき、1時間も立っていないうちにだ。
忘れるはずがない。

………聡君の声だった。

――――

澪「実はさ、最近この辺りで、不審者が出たそうなんだ」

律「なに?!」

澪「マ…お母さんが言ってた。……で、な。…それに関わっている男の子がいるらしいんだ。」

律「…ほう…」

澪「男の子は二人いてさ、もう片っぽは無理矢理誘われて関わってるみたいなんだけどな?」

律「……ああ」

澪「その不審者と、公園で何かやってるらしいんだよ」

律「見に行こうってか?」

澪「まさか…。そ、そんなこと、で、で、出来る訳無いだろ…!!」ブルブル

律「冗談だって」



48 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/20(金) 18:28:04.49 ID:tdtdiS1x0




澪「…はあ。まあそれでな?」

律「うん」

澪「………知り合いが見たらしいんだ、その現場を。でさ…、そこに居たのが…」

澪「鈴木っていう人と、」

律澪「……田井中聡」

澪「えっ?!」

律「…そんな事だろうと思った。話し振りからして」

澪「知ってたのか?」

律「まさか。私だって今戸惑ってるし」

澪「…ごめんな」

律「いいよ、聡に聞いてみて、やっぱりヤバかったら抜けるように言うから」

澪「……」


梓『…つ…いみ…んぱ…?!』


澪「今梓の声しなかったか?」

律「そういえば梓帰って来ないな」

澪「私達に気を使ってくれてるんだろ、悪かったな」

律「そうか…まあ一応聞いとこ」ガチャ

律「梓?呼んだ?」


梓『????????????!!!!!!!』


律「…?!」

澪「どうしたんだ?」

律「なんか…うめき声見たいなのが聞こえた気が…」

澪「ひっ……!!!!!!」ミエナイキコエナイ

律「…澪、ちょっとここで待ってて、梓見てくるわ」



49 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/20(金) 18:46:29.98 ID:tdtdiS1x0



ガチャ

律「?!?!」ピタッ

聡『あず……も……で…なんて…か……ね』

律「聡……?」


――――


案の定、私は車に乗せられ、
アイマスクも猿轡も外されることのないまま両腕を縛られ、シートに座らされた。
隣には人がいる。…多分。

何処に連れていかれるんだろう。



51 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/25(水) 12:12:29.83 ID:6zc8nojN0




気づいた時は、暗くて少し肌寒い所に寝かされていた。


梓(あれ…ここ、どこだっけ……)


うっすらと目を開けると、起き上った訳でもないのに、頭がクラクラしてくる。
そして、ぼんやりとした意識のまま、私はようやく自分の置かれている状況を理解した。


梓(そうだ、私、誘拐されたんだ…)


頭がクラクラするのは、薬でもかがされて眠っていたからだろうか。
ううん、そうでもしなきゃ、私が寝るはずがない。あんなに怖かったんだから。


梓(ここ、ホントに何処なんだろ…)

梓(それに…………聡君……)


私にとって一番気がかりだったのは、私自身の事じゃなかった。
律先輩の弟、聡君の事だった。
忘れもしないあの声。
律先輩の声に少し似ていて、兄弟だなぁ、と感じたあの声。


『…梓さん、一人で降りてくるなんて、バカだね』


あれは、確かに聡君の声だった。

なにより私の事を『梓さん』何て呼ぶ人はそうそういないし
(というかまず私には年下の知り合いなんていない)、
少し離れた所からの声でもばっちり聞こえたのも身長が私とさほど変わらないからだと思う。


梓(律先輩…)



52 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/25(水) 12:19:17.78 ID:6zc8nojN0




梓(律先輩…)


そして、もう一つ気になる事は、律先輩の事だった。

律先輩は、聡君のあんな姿を知っていたのだろうか。
…知らなかったのかもしれない。だから、私が呼んでも気のない返事しかしなかった。


それとも。


律先輩も、それを知っていたとしたら。

律先輩は、もともと聡君達とグルで。
私を助けるふりをして、家に呼んで。
私を誘拐するために……。

だから、私が呼んでも、来てくれなかった。


梓(……澪先輩は…?)ハッ


そうだ。澪先輩もあの家にいた。

もしかすると…澪先輩もグルなのかもしれない。
律先輩がもしこうなる事を知っていたのなら、
わざわざ澪先輩を家にあげる事なんてしなかったはずだ。

または、律先輩は何も知らないけど、澪先輩はグルだったとか。

律先輩を引きとめておくために部屋に入って。
ちょっと言いづらそうな雰囲気にして、私を外に追い出して。

それなら、まんまと引っ掛かる道しかなくなる。

それが……狙い……?



53 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/25(水) 12:31:29.88 ID:6zc8nojN0




梓(ダメダメ!!先輩を疑っちゃ!!)ブンブン

梓(いつか…私がいないって、気づいてくれるよね…)


藁にもすがるような思いで、私は祈り続けた。

きっと、先輩達は関係していない、ということを信じて。
でも、もしも。
もし関係していたら………私はここで、死ななくてはいけないのだろうか。

不安がよぎるが、精一杯耐えてなんとか自分の恐怖心を押さえつける。


落ち着いて、もう一度目を開けたその時だった。


梓「…………!!!!!!!」

??「…」ギロッ


私の目の前に、覆面マスクみたいなのをした人間が一人、私を睨んでいた。

恐怖。


??「Aさん!起きたっぽいですよ!!」

A??「おお、そうか。御苦労だ、B」

B??「どうします?」

A??「そうだな……ま、とりあえず椅子にでも座らせとけ」

B??「ハイ、了解しました!!!」


知らない声だった。



54 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/25(水) 12:55:43.85 ID:6zc8nojN0




知らない声だった。


梓(誰なの…?)


私はどうしてこんな目に遭っているんだろう。
どうしてこんな目に遭わなきゃいけないんだろう。
見ず知らずの人。
私が、いったい何をしたというんだ。


B??「起きてるー?中野梓ちゃーん?」サワッ

梓「!!」ビクッ

B??「やっぱ起きてるみたいだねぇ?」

B??「梓ちゃん、動けないだろうから、動かしてやるよ」ダキ

梓「~~~~~~!!!!!!!!!」ジタバタ

B??「フッ。これでどうだ?」グイ

梓「?!…!!」カアッ



56 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/26(木) 16:42:51.19 ID:n2jXx2GY0




B??によって、私のズボンがずるりと下がり、私の下着が露わになった。
抱きかかえられているから、隠す事さえできない。

しかも、ピンクのレースがついたお気に入りのものだった。


B??「Aさん!!こいつ、勝負下着はいてますぜ!」ニヤニヤ

A「ハハッ丁度いいじゃねーか」

梓「~~~~!!!!」


違う。そんなんじゃない。
だいたい、こんな人に見せたくなんかなかった。
そう言いたかった。


A「何か言ってんぞ?」

B??「面倒なんで、これ取っちゃっていいスか?」

A「ああ」

梓「………プハッ」


私の猿轡が取れた。

自由に会話ができるようになった。
でも、会話など、怖いしする気もないのだが。


とりあえず今は静かにしておこう。
助けが来る事を信じて。



57 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/26(木) 16:43:54.87 ID:n2jXx2GY0




――――


澪『律ー?何かあった?』ガチャ

律「!」ハッ

澪「律?…あれ、どうしたんだ?」

律「…さっき……下でな、聡の声が聞こえたんだ…」

律「それがさ……『梓さん一人で~(なんとかなんとか)~だね』って…」

澪「は?!」

律「その後すぐ玄関が閉まってさ。急に何の音もしなくなった」

澪「え…」

律「梓がどこかに行ったのかもしれない」

律「梓のやつ、外は怖いって言ってたのに一人で出かけちゃったのか…?」

澪「…それって…」

律「でもさ……聡もいないんだ…」

澪「…」

律「……梓と同じタイミングでいなくなるなんて、一緒に出かけない限りおかしーっしょ」

澪「……!!!」

律「……探してくる」タッタッタッ

澪「まって律!!もしさっきの不審者の話本当だったら、律も危ないぞ?!?!」

澪「警察に連絡してから…」

律「いや、それはいい」

律「どんな状況でも…私の後輩と弟がいないんだ。まず探しに行くに決まってんだろ」

澪「……」

律「澪はここにいてくれ。梓が聡と出かけただけって可能性もある訳だから、警察に通報もしなくていい」

澪「……分かった」

律「もしヤバかったらケータイから電話するから、そん時は連絡よろしくな」

澪「え…」

律「だいじょーぶだってー!!じゃ」ガチャ バタン


律(あの時、追いかけてれば梓の行方が分かったのにな…)

律(必ず見つけてみせる…!!!)


――――



58 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/27(金) 13:48:02.70 ID:OWb01+Wc0




A「梓?だっけ?」

梓「…………ハイ」ボソッ

B??「声ちーせえなあ~?」

梓「…………」

B??「おい聡ー、ホントにこいつ中野梓なのか?」チッ


B??が聞くと、聡、と呼ばれた人は、近くまで寄って来た。
そして私が見た人物は、あの、聡君だった。
まぎれもなく、田井中聡。律先輩の、弟…本人だった。


聡「当たり前です、ねえ、梓さん?」ニヤッ

梓「……!」


私は悟った。
この聡君は、私が初めて会った時の聡君ではない。
もう、本当に別人じゃないかってほど。
こんな笑い方、するんだ。

律先輩と少し顔が似てると思ったけど、全然違う。


梓(律先輩もこんな顔するの…かな…?)ビクッ



59 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/29(日) 18:31:06.78 ID:MZb741EC0




もし律先輩に裏切られたら…と考えると胸が痛い。
私の事、あんなに助けてくれたのに…。
違うよね?大丈夫だよね…?

先輩を疑うなんて、私らしくないよ…。
もうこんなの、嫌。


梓「たすけて………」


うわごとのように呟いた。
無意識に、ふっと自然に口から出ていたのだ。
幸い、周りの連中には聞かれていない…と思う。

いや、それは間違いだった。

聡君が、ニヤニヤと気味が悪い笑顔を浮かべて私の事を見つめていた…


――――


澪(律は警察には連絡するなって言ってたけど…)

澪(やっぱ心配だ……聡の事もあるしな…)

ピロリロリーン♪

澪「!あ…なんだ……ムギからか」パカッ

紬『澪ちゃん、りっちゃんの弟って名前なんていうの?
  ちょっと気になることがあって…』

澪「もしかして、不審者の話かな……」ピッ

澪『聡って名前だけど…。
  どうかしたのか?』

澪「送信っと…」ポチ

澪「……」

ピロリロリーン♪

澪「ムギ、打つの速いな…」ピッ

紬『やっぱり…。
  聡君?でいいのかしら。
  最近桜ケ丘で見かけられてる不審者と関係あるらしいの。
  りっちゃんはこのこと知ってるのかな…?
  澪ちゃんなんか知らない?』

澪『律もそのこと知ってるよ。
  というか、私がさっき話したんだ。
  でさ、ムギ…今電話しても大丈夫か?
  そのことで大事な話があるんだけど…』ピッ


澪(律……今頃、どこで何してるんだ…?)

澪(どっかに隠れてたら音ならしちゃまずいだろうし……)ハァ



60 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/29(日) 18:41:52.91 ID:MZb741EC0




ピロロロロロロロロロ♪


澪「あ、ムギから電話だ…」ピッ

澪「もしもし?ムギ?」

紬『あ、澪ちゃん?!なんかあったの?』

澪「うん、実はさ…梓の事なんだけど…」

紬『梓ちゃん?…うん、どうしたの?』

澪「いなくなったんだ」

紬『へぇ~………え?!?!?!?!?!』

澪「唯みたいな反応だな…。で、律が、今探しに行ってる」

紬『梓ちゃんは大丈夫なの?!もしかしてそれって…』

澪「わかんない。でも、多分梓は…」

紬『聡君とあの集団がらみってことね』

澪「うん…それに、梓が連れ去られたのは、律ん家なんだ」

紬『…今澪ちゃんは?』

澪「律ん家にいる。待っててって言われちゃって…」

紬『分かった。今からそっち行くわね!』

澪「うん…ごめんな?詳しい事情は直接話すよ」

紬『分かったわ。……斎藤!!すぐ車の準備して!!!!急いで!!!!!』

紬『じゃあ、あとでね』プツッ


――――



61 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/30(月) 16:03:55.39 ID:2QA8h3Hm0




――――


聡「梓さん?」

梓「…?」

聡「ヒマなんで、服、脱いで下さいよ」

梓「!!」フルフル

A「聡~お年頃って奴だな~お前も…」

B??「まあいいじゃないっスか。どうせ…ね。ほら、梓ちゃあん?脱いでやんなよ」

梓「…嫌です……」

B??「ああ?!反抗する気か?!」ギロッ

梓「!」ビクッ

聡「Bさんいいですよ、俺が脱がしてやりますから」フッ

梓「や…めて……」ブルブル

A「無駄なんじゃない?手足縛られてるような奴が何もできないってーの!!」ハハハハ

B「そうそう、もし邪魔が入っても俺がやっつけちゃうもんね!」


そう言ってBがポケットとりだしたのは、拳銃だった。
おそらく、本物だろう。
これがモデルガンだったら、こんな大それたことしないだろうし。


梓(…って、なに冷静になってるの!?命の危険じゃん!!)


恐怖を通りすぎた私は、さっきより大分冷静に判断することができるようになっていた。
コンクリートの床の上に、一つだけ置かれた椅子。
ずいぶん古びた木の椅子で、暴れたら請われてしまいそうなくらいだ。
その上に、私が座っている。

ズボンは足首の所に足を縛っているロープと一緒に引っ掛かっているから、下半身は下着だけも同然。
上半身は特に問題ない。でも。
今、聡君……いや、目の前の男が、私に脱げと言った。
そして、私にどんどん近付いてくる。



62 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/30(月) 16:06:25.70 ID:2QA8h3Hm0




聡「ふふ、梓さん…いや、もう俺の物になるんだから梓でいいか」

聡「梓……服、脱げよ」ソッ

梓「……いや…っ」ジタバタ


必死で抵抗する。
とは言っても、両手両足縛られてる訳だから、大したことはできない。

その前に。

この集団は、いったい誰が仕切っているのだろうか。
A?それともB?または……聡君?

Aのことを二人は「Aさん」と呼んでいる。
Bのことは、Aが「B」、聡君が「Bさん」。
聡君の事は、二人とも「聡」。

Aの方が一番上みたいな感じだ。
でも、聡君が自分の好きなようにやっても許されている。
いったいこの3人はどんな関係で、どうして私を誘拐するに至ったかが疑問だった。

…というより、3人なんておかしい。
普通、こうやって私を誘拐するくらいなら、もっといるはずだろう。


聡「ほら……梓」ニタァ

梓「……何のために私を誘拐したんですか」

聡「…はあ?」

梓「答えて。どうして私を誘拐したのか」

B「今さら?…っつか、教えるわけねーじゃん、な、聡!」ニヤ

聡「当たり前です。あと、誘拐じゃありませんよ?」ケラケラ

梓「…?」

A「………殺人、だ」ニヤ

梓「……!!!!!!!!!」ゾッ


――――



63 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/30(月) 16:36:11.91 ID:2QA8h3Hm0




唯「ねえ、ういー」

憂「なぁに?」

唯「今日のあずにゃん変じゃなかったー?」

憂「梓ちゃん?」

憂「うーん、あ、寝不足って言って、すっごい疲れてそうにしてたよー」

唯「やっぱり?」

憂「軽音部で何かあったの?」

唯「ううん。あずにゃんなんかぼーっとしててさ」

唯「それに、怖い顔してたんだ」

憂「そっか…」

唯「あずにゃん何かあったのかな~」ソワソワ

憂「うーん、どうだろう…」

唯「あずにゃんにメールしてみようかな?」

憂「寝てたら悪くない?」

唯「それもそうだね~」ハァ

テレレレッテレー♪

憂「お姉ちゃん、携帯なってるよー?」

唯「どれどれ…?あ、ムギちゃんからだ」

唯「…ええーーーーーーーーーーーーーー?!?!?!?!」

憂「どうしたのお姉ちゃん?!」

唯「これ見て!!!あずにゃんが!!!!」


紬『唯ちゃん!!
  梓ちゃんが最近桜ケ丘に出没してる不審者に誘拐されたらしいの!!
  今私達が探してるわ。
  唯ちゃんは憂ちゃんと家で待機しててね!!』



64 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/30(月) 16:37:04.85 ID:2QA8h3Hm0




憂「これって…」

唯「あずにゃんが、誘拐…?」ビクビク

憂「紬さんの言うとおりにしておこう?」

唯「でも…あずにゃんが!!」ピッピッピッ

唯『そんな!!!!
  私も、探しに行くよ!!』

憂「お姉ちゃん!!危ないよ!!」

唯「でも、あずにゃんの方がもっと危ないんでしょ?!だったら…」

テレレレッテレー♪

唯「あ、返信」

紬『唯ちゃんは家にいて。
  りっちゃんと私の家の人が梓ちゃんを探しに行ってるから大丈夫。』

唯「……」

憂「お姉ちゃん?!」

唯「りっちゃんは探しに行ってるのに私じゃ駄目なの…?」グス

憂「お姉ちゃん!!!それは違うよ、紬さんはきっと情報を集めてほしいんじゃないかな?」

唯「じょーほー?」

憂「うん。ほら、皆で探すより、何人かは不審者が行きそうな場所とかを調べたりした方が…」

憂(というより、きっと外に出たら紬さん家の人が大勢いるし…いろんな意味で危ない…)

唯「そっか!」

憂「あ、お姉ちゃん、紬さんに、警察には通報したのかだけ聞いて?」

唯「…?分かった~」

唯『ムギちゃん!!
  憂が、けーさつには言ったの?だって』


テレレレッテレー♪

紬『まだ言ってないわ。
  でも、琴吹家が動いてるから多分大丈夫。
  また連絡するわね!』

唯「憂~言ってないって~」

憂「分かったー」カタカタ

唯「憂何やってるの?」

憂「ネットで検索してるの」カタカタカタカタ

唯「私もやる!!」

憂「うん、梓ちゃん、助けようね!」

唯「うん!!!!!!」


――――



66 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/30(月) 17:13:24.46 ID:2QA8h3Hm0



梓「殺……人……?」ガタガタ

B「は?知らなかったのー?だっせーなー。誘拐なんてさ、帰す訳ねえだろ?」

梓「……」

A「今さらビビってんのかよ、俺らに聞いた方が悪いんだぜ?」

聡「ホント、バカだよなあ?梓?」

聡「レイプくらいされてもいいんじゃない?どうせ死ぬんだし…」ニヤニヤ

梓「い、嫌……っ……」ジタバタ


聡君の手が、私の胸に触れた。
触られた所から一気に震えがやってくる。

昔両親に抱っこされていた時の感覚と真逆だ。
あの時は、触られる所からじんわりぬくもりが伝わって来て、私まであったかい気持ちになれた。

今は違う。

聡君は、はっきりと「レイプ」といった。
いくら女子高だからと言って、私にそういう知識がない訳ではない。
このまま無理矢理、犯されるのだろうか。
しかも…尊敬する先輩の、ただ一人の弟に。


聡「梓、もしかして初めて?」

梓「……」

聡「無言は肯定。ぷっ、俺が初めてなんだ?」ニヤ

B「処女かよー?こんなの捕まえるなんて、やるなー聡」

聡「そんなことないですよ、女子高とかは大体そうなんじゃないですか?」

A「そんなこと…まあ、あるか」

B「そうっすねー、失敗したけど、前の桜高の女も処女でしたよねー」

A「ああ、あれは残念だったな」

聡「…前にも桜高狙った事あるんですか」

B「ああ、もち。あいつが警察に通報したから、俺らは女を殺すことに決めたんだよ」

聡「口封じですもんね。ねー、梓?」

梓「……」ビクビク



67 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/01/30(月) 17:31:11.92 ID:2QA8h3Hm0




聡君が鋭い目で私を見ていた。
口元は気味が悪いほどに上がっていて、もう上半身裸になっている。
それに、いつ撮られたのか分からない、私の写真を持っていた。

その時にはもう、聡君の第一印象なんてものはとっくに崩れ去っていた。


BとAは懐かしむように、その桜高の女子の話をしだした。
その話を聡君の睨みを受けながら聞いているうちに、私の頭の中に、ふと二つの顔が浮かんできた。

そうか、あの二人だ。


A「去年だか一昨年だかだっけ?あいつは顔もスタイルもなかなかだったんだけどなー?」

B「ホントそうっスよねー、あそこで邪魔が入ったから」

A「あの邪魔者、結局女連れ去っていきやがって」

B「あれ男なんスかね?」

A「さあな」

聡「…。どんな奴だったんですか?」

B「んー、茶髪で前髪が長げーんだ。フードかぶってたからよくわかんなかったけど」

A「声は女みたいなガキの声だったけどな」

B「しかも、女よりもチビだったな」

聡「梓くらいってことですか?」

A「ん?ああ、あれよりちょいデカいくらい」

聡「……」

B「あのチビとは対照的だったなー、中学卒業したてなのに大人びた女でさ」

A「ああ、黒髪でロングなんてそうそういねぇぞ?」

梓聡「…!」


言うまでもなく、澪先輩がストーカーされていた時の事だった。
邪魔者、と言うのは間違いなく前髪を下ろした律先輩だろう。

私には一つ気付いたことがあった。
目の前の聡君が、「黒髪でロング」という言葉に一瞬動揺したように見えたのだ。
もしかして、今まで知らなかったのだろうか。
まあ、動きは止めているものの、今の彼は敵だ。気にしない。


――――



70 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/02/04(土) 18:34:02.34 ID:fupPCkzm0




澪「律…、梓……」

澪(無事でいてくれ……)

ピンポーン

紬『澪ちゃん?!?!私!!』ドンドン

澪「ムギ!!」ガチャ

紬「どうしたの?!?!詳しく聞かせて!!!」

澪「うん、さっき…」



紬「そんな…」

澪「どうしようムギぃ……私…私……」オロオロ

紬「落ち着いて澪ちゃん、
  唯ちゃんにはさっきメールしたんだけど、今琴吹家が全力で二人を探してるわ」

澪「梓…やっぱり、不審者に…?」

紬「この時間になってもりっちゃんから一つも連絡が来ないってことはほぼ確定ね」

澪「!!そんな…」

紬「それに、その不審者、ちょっと前にこの桜ケ丘で誘拐事件起こしたのよ」

紬「被害者は桜ケ丘の生徒だって言ってたから…」

澪「……」

紬「澪ちゃん?」

澪「ムギ……その被害者、さ。………私なんだ」

紬「えっ?!」

澪「入学する直前の日に…さ」

紬「…澪ちゃんだったの……ごめんね、私…」

澪「ううん、いいよ…。それに…あの時は、律が助けてくれたから…」

紬「りっちゃんが…?」

澪「うん。…犯されそうになったとこで、来てくれたんだ。律だって怖かったはずなのに…」

紬「…」

澪「……律は…きっと梓を見つけてくれると思う。でも…」

澪「律だけ危険な目にあわせる訳にはいかないよ…!」ダッ

紬「澪ちゃん?!?!?!?!」ダッ

ガチャ



71 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/02/04(土) 18:44:09.37 ID:fupPCkzm0




SP1「?!紬お嬢様の…」

澪「お願いです!!!!」

SP達「?」

澪「不審者の情報を知ってるだけ教えてください!!!!!!!!!」

澪「梓を…律を…助けたいんです!!!!!!!!!!」

紬「澪ちゃん……」

SP2「しかし…」

紬「澪ちゃんに教えなさい!!責任は私がとるわ!!!」

??「紬。子供が責任をとれる訳無いだろう」

紬「えっ?」クルッ

紬父「話を聞いた限りだと、秋山さんは不審者に顔を知られているようだからね。
   行動するのは危ないから、情報をまとめておいてもらおう」

紬「お父様…」

SP達「はっ!」

澪「ありがとうございます!!!!!!!!」ペコリ

ピロリロリーン♪

澪「…あれ、唯からメール」パカッ

唯『あずにゃんが連れ去られちゃったってホント?!
  憂がね、この辺だと商店街の裏か廃工場があやしくない?っていってるんだけど
  澪ちゃんはどう思う?』

紬「さすが憂ちゃんね…」

澪「…てことは、唯達はもう調べてたってことか…」

澪『ホント…だと思う。
  確かにそこがあやしいな。今ムギも一緒だからなんか手掛かり探してみる。』

紬「…行って来てもいい?」

澪「え?」

紬「私。探しに行こうかと思うの。りっちゃんを」

澪「律を?」

紬「うん。なんだかりっちゃんが危ない気がするから…」

紬父「紬、お前何をする気だ?」

紬「お父様許して。私はりっちゃんと梓ちゃんを助けたいの」



72 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/02/04(土) 21:39:24.27 ID:fupPCkzm0




澪「…私も行く」

紬「でも、澪ちゃんは…」

澪「皆が必死に頑張ってる所で、私だけ家で震えて待ってるなんて、嫌だ!」

紬「怖い事、あるかもしれないのよ?」

澪「それでも、いい」

紬父「しかし…女の子二人でだなんてな…」

紬「…危険な事はしないわ!ただ、探したいの!!」

紬父「紬、今こうやって言ってる間にも、琴吹家の捜索隊が探しているから大丈夫なんだぞ?」

紬「でも!!」

澪「お願いします!!」ペコ

紬「…」

澪「私は行かなくてもいいから…」

澪「せめてムギを!!ムギが望む通りにやらせてあげてください!!!!」ドゲザ

紬「…お願いします!!絶対、危ない事はしません!!」ドゲザ

紬父「………顔をあげなさい」

澪紬「……」

紬父「紬よ。行くなら、お前が乗ってきた車で行動すること」

紬父「それと、何かあったら絶対に斎藤と一緒に行動すること。いいな?」

紬「……!!はい、お父様!」パァ

紬父「あと、秋山さんを守ることを忘れるなよ?」

紬「それじゃあ…!」

澪「…!!」

紬父「お前が約束を守ると誓うなら、二人で行っても構わない」

紬澪「ありがとうございます!!!!!!お父様(ムギのお父さん)!!」

紬父「斎藤」

斎藤「はい」

紬父「…頼むぞ」

斎藤「任せてください」

紬「斎藤!!行くわよ!」

斎藤「了解しました、お嬢様」


澪(律…梓…また皆で集まれるよな…?)

紬(何があっても、絶対あきらめない…!)



――――



73 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/02/04(土) 21:40:02.85 ID:fupPCkzm0




――――


目の前には、自分が上半身裸である目的を思い出した人が一人。

私はもう、ほとんど諦めた感情にも近くなって来てしまっている。
助けなんて、こないのだと。

でも、今からされることは絶対に阻止しなくては。
そこだけは、諦められない。

じりじりと近づいてくる聡君を視界にとらえながら、
恐怖心に押し潰されそうな私にムチを打ちながら、
必死にここから逃げ出せる方法はないかと考えていた。


聡「梓?もう、逃げられないよ…?」ニタァ


気味悪い笑顔。
一度は離した両手が、再び私の肩に触れそうになる。


梓「いやっ!」

聡「…無理だって言ってんのにねぇ?」

B「バカだなー」ニヤニヤ

聡「抵抗しなきゃ楽なのに」

梓「やめて……!」


聡君の両手が、私の肩に触れた。



74 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/02/04(土) 21:59:26.79 ID:fupPCkzm0




A「…おい、ちょっと煙草買ってこい、C」


突然、Aが声を発したかと思ったら、Cと呼ばれた人が、私の視界に入った。
それに続いて、倉庫らしき所からもう一人出てくる。


A「ん?D、何だ?」

D「Aさん、ライターも切れそうっス」

A「…ん、じゃあDも行って来い」

D「合点です!」


まだいたのか…。
聡君も想定外だったのか、私の肩に手を置いたままそちらを見ていた。
Bは…知ってたのだろう。
ずっとニヤニヤしたまま私達とC達の方を交互に見ている。

いったい、何人いるんだろう。

そしてCは、Dを連れてAには何も言わずに煙草を買いに行った。


B「聡?早くしないと、殺す時間になっちゃうぞ?」ニヤ

梓「!」ゾク

聡「あ、そうでしたね。…梓、脱がせるからね」サワッ

梓「きゃあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


私は聡君に上半身をブラだけにされた瞬間、無意識に叫んでいた…。


――――


律「ついた…」ゼエゼエ

律(ここにいるのか…?梓…)コソッ

律(茂みに隠れて移動すれば…)ガサガサ

律「!」

律(あれ…誰かでてきた…?)

??「…ん……だ……」スタスタ

??「……よ……」スタスタ

律(ちょっと怖いけど…入口の方まで行ってみよう…)ガサガサ


??『きゃあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!』


律「!!!今の声……!!」ダッ

律(梓…助けに行くからな…!)


――――



81 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/02/05(日) 15:02:43.26 ID:ILp/DrSu0




梓「やめて……やめてよ……」

聡「辞める訳無いじゃん?っつーか、どーせ殺されんだからさwwww」

B「そうそう、タイムリミットが近づいてるよ~wwww」

A「そうだな、どんな風に殺して欲しい?」ニヤッ


Aはそう言って、自分の胸元からナイフを、腰のあたりから拳銃をだした。
Bもそれを見てニヤニヤ笑っている。
そして、同じようにポケットからサバイバルナイフを取り出して、
私の背後に近づいてこようとしていた。

聡君は私の両手が縛られてるのをいいことに、胸を触り、顔がもうすぐそこまで近づいてくる。

夢なら覚めてよ……。



ガタッ


??「お前ら!!!!!!!!!!!!!!梓に何してんだ!!!!!!!!!!!!!!」


何かが開いた音がしたと思ったその時、聞き覚えのある声が、遠くから聞こえた。


――――



82 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/02/05(日) 15:14:33.82 ID:ILp/DrSu0




律「梓に何してんだ!!!!!!!!!!!!!!」

律(……人は…3人か。いや、まだいる可能性もあるな…)


??「へーえ?わざわざこんなところまで来て助けに来たってわけ?笑えるじゃん」

??「ま、こっちとしては獲物が増えただけなんだけどなぁ?」

??「聡も何か言ってやんなよ」

律「…………聡…?」

聡「………ここまで来るなんてやっぱバカなんですね、軽音部は」

聡「“律さん”でも手加減しませんから」フッ

律(聡………?…どうして…だ…?)


――――


B「へーえ?わざわざこんなところまで来て助けに来たってわけ?笑えるじゃん」

A「ま、こっちとしては獲物が増えただけなんだけどなぁ?」

B「聡も何か言ってやんなよ」

律「…………聡…?」

聡「………ここまで来るなんてやっぱバカなんですね、軽音部は」

聡「“律さん”でも手加減しませんから」フッ


その言葉を聞いた律先輩は、その場で立ちすくんだ。
なんと言っても、聡君がこの場所に居るからだろう。

でも、そんなのは一瞬で、律先輩は素早く中に入り私に近づいてきていた。


律「梓!!!」

梓「せん……ぱ……!」



83 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/02/07(火) 12:03:44.88 ID:4kmCXdNZ0




先輩は、私のことを助けに来てくれた。
このまま何もされないまま、助かるのかもしれない。
そんな希望が見えてきたように思えた。
…でも、現実と言うものはなんとも非情なものだったんだ。


B「おっと、それ以上近づくと、この中身が飛び出すけど?」ニヤニヤ


そういって構えたのは、言うまでもなく拳銃。
律先輩の背中にぴったりとくっつけている。
ここから離れたら発砲する、という意味だろうか。

もしかして、本当に実弾が入っているのか…?モデルガンじゃなくて?


律「…チッ……」ピタッ


律先輩は動きを止めた。
そんな様子を見て、さらに奴らは笑う。


A「助けに来たって、その程度じゃなー」ケラケラ

B「まぁ、コイツの前で女を殺すのも悪くねェっスよ?」ニタァ

A「そうだな、よし聡、レイプは止め。殺しの時間だ」ニヤッ

聡「了解です」


聡君は、私から一度手を離し、Aからナイフをもらって私の所に来た。
律先輩は拳銃を突きつけられているから、動けない。
もう、駄目なの…?


梓「来ないで…」ブルブル

律「聡!!やめろ!!!!!!」

聡「……フヒッ」

梓「やめてよぉ……」ガクガク

聡「……さぁ、ここからが本番だよ」ニタァ

律「おい、聡!!!!!」

梓「やだ……やだ………!」ショロロロロロロロ…

聡「………フッ」スッ


律「梓っ!!!!!!!!!!!」


――――



84 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/02/07(火) 12:04:21.65 ID:4kmCXdNZ0




律(チキショー、動けねぇ……)


梓「来ないで…」ブルブル

律「聡!!やめろ!!!!!!」

律(この聡は聡じゃねえ!このままだと梓が…!)

聡「……フヒッ」

梓「やめてよぉ……」ガクガク

聡「……さぁ、ここからが本番だよ」ニタァ

律「おい、聡!!!!!」

律(どうする…?どうする私………!)

梓「やだ……やだ………!」ショロロロロロロロ…

聡「………フッ」スッ


律(やっぱり、見てるだけなんて…………駄目だ!!!!!!!!)キッ

律「梓っ!!!!!!!!!!!」ダッ

B「は?!」パァン

律(1発目はしゃがめばOKだろうな…)スッ

律「当たるかよ!!」

B「何!?」カチャッ

律(問題は…2発目。それまでにやれるだけをやらなきゃ…)

律「聡!ふざけんじゃねぇ!!」ガシ

聡「!?姉ちゃ……律さん、手加減はしない、と言ったはずですよ?」キッ

律「しらねぇよそんなの!!!勝手にやっとけよ」

聡「どうなってもいいのか、と言ってるんです」

律「お前!!!!いいかげんにし…」

B「おいおいおい、逃げんなっていったよなぁ?ナメてんのか!?あぁ!?」ギロッ

A「…お前も殺して欲しいんだろ?…殺してやるよ」ニヤ

律「……梓に手ぇ出すんじゃねぇ」キッ



85 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/02/07(火) 12:31:13.49 ID:4kmCXdNZ0




律「やるなら、私だけにしろ」


――――


律「やるなら、私だけにしろ」

梓「…?!律先輩……!」ブルブル


律先輩は、今とんでもないことを言った。
私が巻き込んでしまったのに…さらに律先輩が傷付けられるの…?


B「後輩思いのいい先輩だねぇ?でも、人生そんな楽じゃないんだよ?」

A「見られた以上、死ぬ運命ってワケだ」

聡「………」

律「…じゃあなんで梓なんだよ!?」

B「その辺に居たから」

律「…はぁっ!?」

A「世の中、そんなもんなんだよ。
  それに、テメェなんざガキがかっこつけようったって、無理なもんは無理な訳よ」

B「どっちにしろ、お前が死んだあと、こいつも死ぬんだからな」ニヤニヤ

律「……け……ね……!」

A「は?」


律「ふざけんじゃねえよ!!!!!!!!!!!!!!!!」

律「梓が!!!!!梓が何したってんだよ!!!!!」

律「死ぬ運命だ?…そんな訳あるかよ!!!!!!!!」

律「そんな運命決まっちゃいねぇよ!!!!!!!!!梓は…」


律「梓は、私達と一緒に武道館へ行くんだ!!!!!!!!!!!!!!!!!」


梓「……!」ハッ



86 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/02/07(火) 12:47:56.20 ID:4kmCXdNZ0




律先輩が本気で怒っているところを初めて見た。
先輩は能天気で、明るくて、大雑把で少し短気だけど、今まで怒鳴ってる姿を見たことがなかった。
それどころか、怒った表情すら見たことなかった。
いつも笑っていて、私や他の先輩が機嫌が悪かったり落ち込んだりしていると、
いつでも笑顔で助けてくれた。
そんな律先輩が、怒っている。

もう、やめて……。
私が捕まってしまったせいで、先輩に辛い思いをさせてる…。
私は、みんなで笑ってる普通の生活に、戻りたいのに……!


A「いいたい事はそれだけか?」

律「…?」

A「俺たちはなァ、綺麗事聞いてるヒマなんざねぇっつーんだよ!」サッ


Aは、サバイバルナイフを手にし、


A「テメェみたいなやつは顔をゆがめてるほうがお似合いだ!!!」


私の左肩にむかって、


A「まずは、お前だ!」


突き刺した…



――――


律「!!梓!!!」ダキッ

律(どうしてだ!?何で梓がこんな目に……!)

律(あと一歩早ければ、かばってやることができたのに……!)


梓「グッ!?」ザクッ

律「しっかりしろ!梓!!!」

梓「……りつ…せんぱ……」

律「梓!!!動かなくていい!」シュッ

律(リボンで止血しとかないとな…)ギュッ


律(こいつら……ぜってー許さない!!!!!!!!!!!!!)キッ



87 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/02/10(金) 12:29:59.74 ID:Th2sVL3H0




律「おい!梓になんてことしてくれてんだ!」

B「ざまあだな」ケラケラ

A「結局、口だけじゃねぇかよ」ニヤ

B「所詮それだけの人だったってことだよな?せーんぱい?」ニタニタ

律「……」

A「さーて、まずはどっちを殺っちまおうかな!」カチャ

聡「梓がいいんじゃないですか?」

聡「ゴミ以下のバカな先輩が目の前に居ることですし」

律「聡!!!!!!お前……!!!!!」ギリッ

A「そうだな」

B「一発で片付けられたい?それとも、いろいろやられて苦しみたい?」

梓「…!」

A「あ、返事がなかったらキツイ方な、楽しいから」スッ

B「ハハ、さすがっスね!」スッ

A「まずは腕からだな」カチャ…

B「了解っス」カチャ

B「あばよ」カチャ…



律(…こんなのに負けてたまるか!)グッ

律「やめろ!!!」ダッ

パァン!パァン!


――――



88 名前: ◆gb8GVi7Khk:2012/02/10(金) 12:30:50.90 ID:Th2sVL3H0




梓(撃たれる……っ!)ギュッ

律「……め…!!!」


律先輩が何か言っていた。
でも、もう私は終わりだ。
撃たれて死なないはずがない。
逃げる気力もない。なんとなくぼんやりとしてしまう。
出血したせい?
肩も痛い。先輩のリボン、赤くなってた……。

ああ、私は先輩にさよならが言えない。
私が巻き込んでしまったのに。
先輩には逃げてほしい。
そして、放課後ティータイムのリーダーとして、
軽音部の部長として、また皆と楽しく音楽をやってほしい。


パァン!パァン!


終りを告げる合図。
ごめんなさい。
さようなら……。




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梓「ストーカー」#前編
[ 2012/03/09 19:55 ] 非日常系 | | CM(1)

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タイトル:
NO:5977 [ 2012/03/19 04:13 ] [ 編集 ]

いつから聡はこんな役周りに……

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