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律「終末の過ごし方」#9 【非日常系】


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律「終末の過ごし方」#index


496 名前:にゃんこ:2011/08/22(月) 21:24:01.81 ID:Z8R6uNk30






朝、私達は三人で軽音部の部室でお茶を飲んでいた。
純ちゃんは居ない。
登校後、純ちゃんは私達と別れ、ジャズ研の部室に向かっていた。
ジャズ研も最後のライブを開催するから、そのための練習に行くらしい。
こんな時期に純ちゃんが登校してた理由は、ある意味で私達と同じだったってわけだ。

しかも、純ちゃんが言うには、そのライブは純ちゃんを中心に行われるんだそうだ。
そりゃほとんど毎日登校してるはずだよ。
ジャズ研のライブの開催は金曜日の午後。
会場は講堂らしく、もう既に使用届の提出もしているそうだ。
どの部も考える事は同じってわけだな。

世界の終わりに反抗したいのは、別に私達だけってわけじゃない。
私達のしている事は、何も特別な事じゃないんだ。
やっぱり皆、最後に何かを残したいんだと思う。
それは形として残るものじゃないけど、それでも何かを残そうとする事は無駄じゃないはず。

いや、私としては、別にその行為が無駄でも構わない。
私達はこれまで放課後を無駄に過ごして来た。
軽音部を設立して、たまに練習はするけど、ほとんどの時間をお喋りに費やして、
合宿に行っては遊んで、休日にはやっぱり雑談に花を咲かせて、それを梓や澪に怒られたりして……。
正直、音楽にまっしぐらに生きて来れたなんて、冗談でも口に出せない。
一言で言えば、私達にとっての放課後のほとんどは、人生の無駄遣いだったんだよな。

だけど、それでよかったと思う。
無駄だけど、楽しかった。
辛い事も少しはあったけど、皆と出会えて、最高に面白かった。
退屈する暇なんてないくらい、充実した無駄な時間を過ごせた。
その無駄が、私にとってすごく大切なものになったんだ。
だから、私達の最後のライブが無駄な行為でも、私は全然構わない。

それよりも気になるのは、やっぱり純ちゃんのライブの方だ。
純ちゃんの演奏は何度か聴いた事はあった。
でも、これまでの純ちゃんの演奏は、
ジャズ研の先輩達の伴奏的なパートである事が多く、
純ちゃん自身の本当の実力はいまいち掴みづらかった。

相当に練習を積んでるみたいだし、かなり上手い方だと思うんだけど、
伴奏的に演奏するのとメインで演奏するのでは、印象もかなり違ってくるだろう。
これは是非ともジャズ研のライブを観に行かなきゃいけない。
純ちゃんも私達のライブを観に来てくれるんだから、
私達もジャズ研のライブを観に行くのが礼儀ってもんだ。
それに新入部員(予定)の真の実力を把握しておくってのも、部長の大事な仕事だしな。

でも、何よりジャズ研のライブが観たい理由は、
今更だけど純ちゃん自身に興味が出始めたってのが一番かもしれない。
これまでは単なる梓の友達としてしか見てなかったんだけど、
昨日見せてくれた心から梓を心配する純ちゃんの姿がすごく印象的だった。

単なる友達なんかじゃない。
純ちゃんは梓の親友で、深く繋がってる仲間なんだなって思った。
単純だけど、私はそんな理由で純ちゃんに興味を持った。
それに梓の仲間だってんなら、私達の仲間でもあるってもんだ。
新しいお仲間としては、しっかりと相手の事を知っておかなきゃな。



497 名前:にゃんこ:2011/08/22(月) 21:25:06.22 ID:Z8R6uNk30

「どうしたんですか、律先輩?」

ムギの淹れてくれたFTGFO何とかって紅茶を飲みながら、梓が首を傾げた。
新しい軽音部の仲間が増えた事が嬉しかったせいか、私の顔が緩んでしまっていたらしい。
「何でもないよ」と私は首を振ったけど、
私の席の斜め向かいに座ってるムギはその私の誤魔化しを見逃してくれなかった。

「でも、りっちゃん、すごく嬉しそうよ?
 何か素敵な事でもあったの?
 言いたくないなら仕方ないけど、よかったら教えてほしいな」

ムギにそう言われちゃ、教えないわけにはいかなかった。
そもそも、隠し通さなきゃいけない事でもない。
私は自分の笑顔の理由をムギ達に伝える事にした。

「いや、昨日も話した事なんだけど、
 純ちゃんが軽音部の新入部員を見つけてくれたってのが嬉しくてさ。
 ついつい顔が緩んじゃったわけですよ、部長としては」

完全に真実ってわけじゃないけど、嘘を吐いてるわけでもない。
深く話せない事情を知ってるムギは、それを察して柔らかい笑顔を浮かべてくれた。

「そうよね。それって本当に素敵な事よね。
 りっちゃんが笑顔になっちゃうのも分かるな。
 私だって、嬉しくて自分が笑顔になっちゃうのを抑えられないもの。

 ……でも、純ちゃんってすごい子だよね。
 私達があんなに探しても見つからなかったのに、新入部員を二人も見つけてくれるなんて……。
 すごいなあ……、新入部員かあ……。
 ねえ、梓ちゃんは新入部員ってどんな子だと思う?
 どんな子だったら嬉しい?」

「え、私ですか……?
 どんな子でも嬉しいですし、想像もできませんけど……。

 そうですね……。
 できればムギ先輩みたいな子か、それが無理なら大人しい子だと嬉しいです。
 ムギ先輩みたいに気配りのできる子だと私も安心できますし、
 大人しい子なら私でも色々と教えてあげられるんじゃないかって思うんです。
 逆に活発な子や、私を振り回すような子はちょっと……」

そこで言葉を止めた梓は、わざとらしくチラチラと私の方を見た。
その目は明らかに私を挑発していた。
確実に私の突っ込みを待っていた。
こいつ……、誘ってやがる……。
そこまでされちゃ、私の方としても突っ込む事に関してやぶさかじゃない。
私は机を軽く掌で叩いてから、大声で言ってやる。



498 名前:にゃんこ:2011/08/22(月) 21:26:15.08 ID:Z8R6uNk30

「それって私みたいな子はノーサンキューって事かよ!」

「別に律先輩みたいな子とは一言も言ってませんよ」

「いや、言ってただろ! 私の方を見てもいただろ!」

「知りません。律先輩の自意識過剰じゃないんですか?」

「おい中野! コラ中野!
いい加減にしないと、ガラスの様なハートを持った部長が泣いちゃうぞ中野!」

「律先輩のは強化ガラスの様なハートだから、大丈夫なんじゃないですか?」

「強化ガラスでも、割れないだけでヒビは入るんだぞ!」

「あ、強化ガラスって自分で認めましたね、律先輩」

「中野ー!」

言葉だけだと辛辣な言い争いっぽいけど、私と梓の顔は笑っていた。
ふざけ合っているのはお互いが承知の上での言い争いなんだ。
昨日から梓の発言はいつもに増して生意気になっていた。
ムギ達と私の部屋に泊まった時も、何度梓が生意気な発言をしたか数え切れない。
でも、それは私に対して反骨心を持ち始めたからの発言じゃない。

いや、反骨心が無いとは言い切れないけど、どちらかと言えば甘えに近い発言に思える。
長く不安を抱えてた反動もあるんだろう。
梓は私に憎まれ口を叩く事で、これまでの勿体無かった時間を取り戻してるんだと思う。
好きな子にちょっかいを出して相手の興味を引いて甘える……。
そんな小学生みたいな行動が、梓の愛情表現の一つなんだろうな。

梓がその愛情表現を私に示してくれるのは勿論嬉しいんだけど、
これまた昨日からそんな私達を妙に嬉しそうに見守るムギの視線が気になるのは私だけか?
何か非常に生暖かい視線を感じるんだが……。

「なあ、ムギ……?」

どうにも気になって、
頬に手を当てて私達を見つめるムギに声を掛けてみたけど、
残念ながらムギは私達を見つめたまま何の反応も見せなかった。
どうやら何かに夢中になり過ぎて、私の声が聞こえてないらしい。

超うっとりしてる。
と言うか、そういや久々に見たな、こんなムギ。
一年の頃は頻繁に見せてた姿だけど、二年に上がってからは、
他の事に興味を持ち始めたのか、単に誤魔化し方が上手くなったのか、
こんなうっとりした感じのムギの姿を見せる事は少なくなっていた。



499 名前:にゃんこ:2011/08/22(月) 21:26:44.91 ID:Z8R6uNk30

「あの……、律先輩……?」

流石に妙過ぎるムギの姿が気になり始めたんだろう。
梓が不安そうに私の方に視線を向けた。

「ムギ先輩、どうしたんですか?
 何だかうっとりしてるみたいに見えますけど……」

一年の頃のムギの姿を知らない梓だ。
私以上に妙な様子の今のムギを不審に……、じゃなくて、不安に思うのも無理はなかった。
しかし、このムギの姿をどう説明したらいいのか、私自身にもよく分からん。
私は頭を掻きながら、どうにか梓に上手く伝えるふりはしてみる。

「別に心配はないんだけど、
 いや、なんつーか……、ムギってそういうのが好きな人なんだよ。
 最近はあんまりそんな様子もなかったけど、どうも突発的に再発しちゃったみたいだな……」

「そういうのが好き……って、どういうのが好きなんですか?」

「えーっと……、だな……。
「女の子同士っていいな」っつーか……、
「本人達がよければいい」っつーか……、
 ムギってそういうのが好きなんだよ。どんと来いなんだよ。
 ほら、アレだ。みなまで言わせるな」

「女の子同士……?」

私の言葉を反芻するみたいに梓が呟く。
流石にすぐに理解できる事じゃないだろうし、いきなり理解されたらそっちの方が嫌だ。
十秒くらい経っただろうか。
私の言葉の意味を理解したらしい梓が目に見えて慌て始めた。

「えっ? あの……、えっ?
 私と律先輩が……?
 女の子同士の関係に……? ええっ?
 私は別に……、そんなつもりじゃ……。
 でも……」

理解してくれたのは嬉しいが、梓の動揺は私の予想とは違う原因のようだった。
見る限り、どうやら梓はムギが女の子同士の関係が好きな事よりも、
梓と私がムギにそんな関係として見られてるって事に動揺してるらしい。
そっちかよ。

まあ、流石に私に気があるって事は無いにしても、
意外と梓自身も女の子同士の関係に興味があるって事なのかもしれない。
同性の幼馴染みに告白されて、そいつの恋人になろうとした私に言えた事じゃないけど……。

澪の事を思い出して、私は少しだけ視線を伏せてしまう。
もうすぐ私は澪と一日ぶりに再会する。
それはすごく不安な事だけど、でも、それは澪と再会してから考えればいい事だ。
私はもうあの時の自分の涙の理由を分かってるんだ。
後はそれを澪に伝えるだけでいい。

軽く梓に視線を戻してみる。
決心を固めた私の視線を違う意味の視線と勘違いしたのか(何とは言わないけど)、
挙動不審に周囲に視線を散漫とさせながら、梓が早口に捲し立てるみたいに言った。

「そ……、そういえば、唯先輩達遅いですね!
 一日空いちゃったから、唯先輩達に会えるの楽しみです!
 二人とも今日は来てくれるんですよね?」

こいつ誤魔化した。
焦って誤魔化した。
いや、まあ、別にいいけど。



503 名前:にゃんこ:2011/08/29(月) 21:33:51.61 ID:hjrm0ayi0

それに唯達が学校に来てくれるか気になるのも本音ではあるんだろう。
誤魔化して振ってきた話題ではあるけど、
そう言った梓の顔はやっぱりまだ不安そうに見えた。

「ああ、心配しなくても大丈夫だぞ、梓。
 昨日ちゃんと確認しといたしさ」

言いながら、私はポケットから自分の携帯電話を取り出す。
テレビや電話を含め、電波障害は昨日の夕方辺りには無くなっていた。
紀美さんの言葉じゃないけど、多分、電波職人さんのおかげなんだろう。

まあ、本当に電波職人さんのおかげかどうか分かんないし、
そもそも電波職人さんってどんな仕事の人達の事を指すのか不明だけど、
とにかく電波の復旧に関わってくれた人がいるなら、その全員に感謝したい。

ただ、電波が復旧したとは言っても、電話が繋がりにくい状態には変わりがなかった。
そんな状態で唯達に連絡を取るのも、いつ切れるか不安でもどかしいだけだ。

だから、私は電波の繋がりがよさそうな時間を見計らって(単なる勘だけど)、
唯と澪に梓の悩んでたのはキーホルダーを失くしたからだったって事、
でも、私達が梓と話し合って、その梓の不安をどうにか晴らしてやれた事、
その二つの用件だけを簡潔に書いた短いメールを出した。

詳しい事は直接会って話せばいい事……、
いや、直接会って話した方がいい事だからな。

唯と澪もその私の気持ちを分かってくれたのか、
私の送信からしばらく後に二人から短い返信が届いた。
返信の内容は『ありがとう。明日は絶対学校に行くから』って、二人とも大体そんな感じだったかな。
だから、大丈夫。梓が不安になる必要はない。
二人とも約束を守ってくれるタイプなんだし、
形や対応はそれぞれ違ってても、梓の事を心配してたのは確かなんだから。

「心配するなって。
 大体、まだ十時にもなってないじゃんか。
 今日早く目が覚めちゃったからって、私達が来るのが早過ぎただけだよ。
 ほら、昨日唯達からのメールもしっかり届いてる」

私は唯達からの返信メールを開いて、隣に座ってる梓に見せる。
受信メールを人に見せるなんて本当はマナー違反だけど、
不安になってる梓になら唯達もきっと許してくれるだろう。
梓もマナー違反だって事は分かってるんだろう。
申し訳なさそうな顔をしながら、
私の見せたメールを早々と読んで、すぐに私の携帯から目を逸らした。



504 名前:にゃんこ:2011/08/29(月) 21:34:23.47 ID:hjrm0ayi0

「すみません、律先輩。
 先輩達の事を信じるって言ったのに、まだ不安がっちゃって。
 駄目ですよね、こんなんじゃ……」

「心配するなって言ってるだろ?
 唯達がキーホルダーや今までの態度の事で梓を怒るとは思わないけど、
 万が一おまえを怒るようなら私も一緒に謝るよ。
 部員の不祥事は部長も謝るのが筋ってもんだしさ。
 それに謝るのは慣れてんだよな、私」

「それ自慢になってませんよ、律先輩……。
 でも、ありがとうございます。
 もう……、大丈夫です。
 唯先輩も澪先輩も優しいから、私を怒らないんじゃないかって思います。

 だけど、私、しっかり謝りたいです。
 よりにもよってこんな時に、迷惑掛けちゃったのは確かですから。
 だから、謝らないといけないって思います。心から謝りたいんです。
 それでやっと、私……、また軽音部の部員に戻れるんだって、そう思います」

そこまで決心できてるんなら、大丈夫だろう。
私は強い光を灯した梓の瞳を見つめながら、軽く微笑んで頷いた。
誰だって自分の失敗を認めて、謝るのは不安になる。

私だって梓と同じ不安を胸に抱えてる。
私もこれから澪に会って、謝らなきゃいけないからな。
とても不安で、今にも逃げ出したいけど……、
でも、梓も私も逃げないし、逃げたくない。
それこそ私達が私達のままでいるために必要な事だからだ。

何となく視線をやってみると、
いつの間にか素に戻っていたムギが真剣な目を私達に向けていた。
これから謝らなきゃいけない私達を見守っててくれるつもりなんだろう。
ありがとな、と胸の内だけでムギに囁いて、私もこれからの事に覚悟を決めた。

急に。
手に持った携帯のバイブが振動し始めた。
突然の事に驚いた私は、少し焦りながら携帯の画面を確認するとメールが一件届いていた。
覚悟を決めたばかりで情けないけど、こういう不測の事態くらいは焦らせてくれ。
急に鳴ったら焦るだろ、普通。

まあ、それはともかく。
当然の事だけど、確認してみた画面には見慣れた名前が表示されていた。
それは問題なかったんだけど、その差出人のメールの内容が問題だった。
いや、別に不自然な事が書いてあるわけじゃない。
メールの内容自体は誰でも一度は受けた事があるはずの内容だ。

でも、そのメールは不自然だったんだ。
結構長い付き合いになるけど、
あいつからこんな内容のメールを受け取るのは私も初めてだった。

特に傍に梓が居る事が分かってるはずなのに、
私だけにこんなメールを送って来るなんて、不自然を通り越して不審なくらいだ。
一体、どうしたっていうんだよ、あいつは……。
その不審なメールの差出人は唯。
メールの内容は『今から三年二組の教室で二人きりで会いたい』というものだった。



505 名前:にゃんこ:2011/08/29(月) 21:36:26.74 ID:hjrm0ayi0






三年二組……、つまり私達の教室に私が足を踏み入れた時、
唯は自分の席に座って、ぼんやりと窓の外の風景を眺めていた。
普段なら駆け寄ってたと思うけど、
今日に限って私はそんな唯の近くまで駆け寄れなかった。
ぼんやりとした唯の表情が妙に印象に残ったからだ。

いや、こいつがぼんやりしてるのはいつもの事なんだけど、
今日の唯のぼんやりはいつものぼんやりした表情とは違う気がした。
上手く言えないけど、何処となく大人びた雰囲気を見せるぼんやりって言うか……。
気だるげな大人の女の雰囲気を纏ってるって言うか……、とにかくそんな感じだ。

いつだったか唯の言った言葉を不意に思い出す。
「私を置いて大人にならないでよ」って、確か唯は前にそう言っていた。
マイペースで子供っぽい唯らしい言葉だって、その時は思ったもんだけど……。
何だよ……、おまえの方こそ私を置いて大人っぽくなってんじゃんかよ……。

ちょっと悔しい気持ちになりながら、私はゆっくりと唯の席の方に歩いていく。
勿論、唯が大人になるのは喜ばしい事なんだけど、
もう少しだけでいいから、私に面倒を見られる子供な唯のままでいてほしいって思う。

いや、本音はそうじゃないか。
子供だろうと、大人だろうと唯は唯だ。
唯がどう変わろうと、私はそれを受け止めたい。
それでも嫌な気分になってしまうのは、
世界の終わりが近いこの時期に、生き方を変えてほしくないっていう私の我儘なんだろう。

変わらなきゃ人は生きていけない。
特に自分の死を間近に感じたら、その死を覚悟できる自分に変わろうとする。
だけど……、それは違う。少なくとも私は違うと思う。
だから、大人びた唯の雰囲気に、私は不安になっちゃうんだろう。



506 名前:にゃんこ:2011/08/29(月) 21:36:51.41 ID:hjrm0ayi0

「あ、りっちゃん」

私が唯の前の和の席にまで近付いて、
やっと私に気が付いた唯がいつもと変わらない高めの明るい声を出した。
何となく安心した気分になった私は、
後ろ向きに和の椅子に座ってから手を伸ばし、唯の頬を軽く抓る。

「よ、唯。一日ぶりだな。
 って、いきなり呼び出すなよな。びっくりするだろ」

「ごめんね、りっちゃん。
 私、りっちゃんと二人きりで話したい事があったんだ。
 だから、教室に来てもらおうって思ったんだけど……、迷惑だったかな?」

「別に迷惑じゃないし私はいいんだけど、
 梓とムギを誤魔化して出てくるのは、大変だったし心苦しかったぞ?
 ……どうしても、私と二人きりじゃないと駄目だったのか?」

私が言うと、唯は寂しそうに「うん」と頷く。
いつも楽しそうな唯の寂しそうなその顔は、私の胸をかなり痛くさせた。

一年生の初め、軽音部に入部して以来、唯はいつも楽しそうに笑っていた。
どんなピンチや辛い事も、唯が笑顔で居てくれたから楽しく乗り越えられた。
『終末宣言』の後も、世界の終わりなんてそっちのけで、唯は明るい笑顔を私達に向けてくれていた。
私はそんな唯に呆れながら、同時に憧れてた。
マイペースに生きられる唯が羨ましかったんだ。

今、澪へ伝えようと思ってる答えも、変わらない唯が居たからこそ出せた答えでもある。
だから、大人びた表情の、寂しげな唯を見てると私の胸は痛くなる。

寂しそうな表情のままで、唯は小さく続けた。

「あずにゃんが悩んでたのって、京都のお土産の事だったんだよね……?」



509 名前:にゃんこ:2011/08/31(水) 21:12:57.58 ID:7SF4LcZt0

京都のお土産……、つまり、梓が失くしたキーホルダーの事だ。
昨日、私がメールで伝えてから、唯はずっとその事を気に掛けてたんだろう。
唯が寂しそうな顔をする理由は、多分それ以外に無い。
「そうだよ」と頷いてから、私は唯の顔から指を放して続ける。

「最近、梓がずっと悩んでたのは、
 メールでも伝えたけどキーホルダーを失くした事だったんだ。
 こんな時期にどうしてそんな事で悩んでるんだ。
 どうして早く私達に伝えてくれなかったんだよ。
 って、思わなくもなかったけど、あいつの気持ちも分かるんだよな。

 世界の終わりを目前にして、梓はこれ以上何かを失くしたくなかったんだよ。
 世界の終わりまでは、変わらない自分と私達のままで居たかったんだ。
 だから、少しの変化が恐かったんだと思うし、梓自身もそういう事を言ってた。
 唯もあまり責めないでやってくれよ」

「責めないよ。
 あずにゃんの気持ち、私にも分かるもん。
 私だって、あのキーホルダーを失くしたらすごくショックだと思うし、
 こう見えても、おしまいの日の事を考えると不安になってるんだよ?
 そう見えないかもしれないけどね。
 だから、あずにゃんの不安と悩みが分かるし、その悩みが晴れて本当によかったよ」

「おしまいの日……ね」

確かめるみたいに呟いてみる。
唯は終末の事を『おしまいの日』と呼んでいる。
不謹慎な気もするけど、何だか唯らしい可愛らしい呼び方だ。

そういえば憂ちゃんも、終末を『おしまいの日』って呼んでたはずだ。
平沢家ではそう呼ぶようにしてるのかもしれない。
考えてみれば、それぞれに思うところがあるのか、
私の周囲でも皆が終末を色んな名前で呼んでる気がするな。

まず私は単純に『世界の終わり』って呼んでる。
それは終末って非現実的な言葉に抵抗があるからでもあるけど、
もっと言うとそんな言葉を口に出す事自体が気恥ずかしいからだ。

だって、『終末』だぞ?
『終末』なんて、漫画やアニメ以外で聞く事はまずない。
後は宗教的な本や番組なら言ってるかもしれないけど、それにしたって日常的な話じゃない。
そんな言葉、普段の生活で簡単に口に出せるかっつーの。
そりゃたまには言わなくもないけど、日常会話としてはあんまり使いたくない言葉だ。

世界の終わりをちゃんと『終末』って呼んでるのは、私の周りじゃ和と澪に梓か。
皆、どっちかと言うと、生真面目なタイプだから、正式名称で呼んじゃうんだろう。
性格が出てて、ちょっと面白い。

ムギはどうだったかな……?
えっと……、確か『世界の終わりの日』って呼んでたはず。
私とほとんど同じだけど、ムギの呼び方の方が何だかムギらしい。
単にムギの口から終末って言葉が出るのが、似合わな過ぎるだけかもしれないけど。

特殊な呼び方は純ちゃんだ。
純ちゃんは『終焉』って呼んでた。
私の部屋で話をしてる時に何度もそう呼んでたから、私の耳が覚えちゃってる。
その度に妙にお洒落な呼び方だなと思ってると、梓が隣から私に耳打ちしてくれた。
どうやら純ちゃんは最近そういうゲームをプレイしたらしく、
『終末宣言』が発令されてからずっと終末を『終焉』って呼んでるんだそうだ。
漫画好きで影響されやすい純ちゃんっぽくて、何だか安心する。
確かそのゲームはオーディン何たらってゲームらしいけど、まあ、それは別にいいか。



510 名前:にゃんこ:2011/08/31(水) 21:13:27.57 ID:7SF4LcZt0

「りっちゃん……?」

妙に長く考え事をしてしまったせいか、唯が私の顔を覗き込みながら訊ねてきた。
「悪い。何でもない」と言ってから、私は唯の頭を撫でた。
唯が寂しそうな顔をしてる時に悪いんだけど、私は少し安心していた。
安心したせいで、ちょっと余計な事を考える余裕もできたんだろう。
安心できたのは、唯の悩みが世界の終わりの事じゃなく、梓の事だって気付いたからだ。
今の唯の顔は、卒業を目前にして梓の事を考える先輩の顔だって気付けたから。

もしも世界の終わりが無かったとしても、
普通の日常生活で起こったかもしれない悩みと寂しさを唯が抱えてるんだって。
だから、私は安心できてるんだ。
後はその安心を唯にも分けてあげればいいんだ。
少しだけ強く、私は唯の頭を撫でる。

「責めないでやってくれってのは、梓の事だけじゃないよ、唯。
 自分の事も責めるなって事だ。
 唯は梓の悩みを晴らすその場に居れなかった自分に罪悪感を抱いてんだろ?
 梓の悩みに気付けなかった自分に、寂しさを感じてるんだろ?
 そんな寂しさを唯が感じてるってだけで、梓は十分嬉しいと思うぞ?」

「でもでも……、昨日私はあずにゃんより憂の事を優先しちゃったし……。
 あずにゃんの悩みがキーホルダーの事だったなんて、全然気付けなかったし……。
 りっちゃんみたいに、あずにゃんを慰められなかったし……。
 あずにゃんの事が大好きなのに、私、何もできなくて……」

「昨日、憂ちゃんと一緒に居たのは、
 今日からの残り三日を梓の悩みを晴らすために使ってあげるためだったんだろ?
 そんなおまえを責められる奴は、おまえ自身を含めていちゃ駄目だよ。
 梓もそれを分かってるし、私の部屋でもずっとおまえの事を気に掛けてた。

 前に一度、梓の落としたキーホルダーが戻って来た事があっただろ?
 憶えてるか?
 おまえが梓の名前を書いたシールを、キーホルダーに貼ってた時の事だよ。

 梓はあのシールをはがした事をすごく後悔してた。
 あのシールをはがさなきゃ、また自分の所に戻って来たかもしれないのにって。

 勿論、シールを貼ってたからって戻って来るとは限らないけど、
 おまえのおかげで戻って来たキーホルダーなのに、
 それをもう一度落としてしまった事を、梓はすごく申し訳なく思ってた。
 一度取り戻せたものをもう一度失くすなんて、そんな辛い事は無いからさ。

 だからさ……、二人してお互いの事を考えて、自分を責め合うのはやめようぜ?
 梓はおまえに会いたがってたし、おまえだって梓の事が大好きなんだろ?
 だったら、大丈夫だよ」



511 名前:にゃんこ:2011/08/31(水) 21:14:02.73 ID:7SF4LcZt0

「りっちゃん……」

言いながら、唯が真剣な顔で私の方を見つめる。
その表情からは寂しさが少しずつ消えているように見えた。
寂しさの代わりに、決心が増えていく感じだ。

「りっちゃんはすごいなあ……」

不意に唯が呟いた。
いつもは私をからかうために使われる言葉だけど、
今回ばかりはその意味は無いみたいに見えた。

「すごいか、私?」

「すごいよ。
 あずにゃんの悩みの原因に気付いちゃうし、私の事だって慰めてくれるもん。
 流石はりっちゃん部長だよね」

「そう言ってくれるのは嬉しいけどさ、梓の悩みの原因に気付けたのは偶然だよ。
 本当にたまたま、運が良かったから気付けただけだ。
 梓の悩みの原因がキーホルダーの事だったなんて、私も思いも寄らなかったもんな。
 唯が居ない間に梓の悩みを晴らしてやれたのも、単にタイミングの問題だと思うよ。
 唯は運悪くタイミングが合わなかっただけだ」

「でも、やっぱりすごいよ。
 もしも何かのきっかけで私があずにゃんの悩みの原因に気付けてたとしても、
 そんなあずにゃんをどうすれば支えてあげられたか、全然分かんないもん」

「だから、そうじゃないよ、唯。
 私はたまたま軽音部を代表しただけだと思う。
 もしもその場に居たのが私じゃなくて唯だったら、
 もっと上手く梓を支えてやれてたんじゃないかな。
 勿論、ムギはムギで、澪は澪でそれぞれがそれぞれの方法で梓を支えたはずだよ。
 私もあれで本当によかったのか分からないしな」

役不足って言われたし、とは私の胸の内だけで囁いた。
実はまだ梓の言葉の真意は分かってない。
そういや純ちゃんに役不足の意味を聞くのを忘れてたしな。
辞書で調べるのもすっかり忘れてた。

私じゃ梓の悩みを晴らすのには役不足だから(頼りないから)、
梓自身がしっかりしなきゃいけないと思ったって事でいいのかな……。
しずかちゃんがのび太を放っておけないから結婚してあげた的な感じか?
うわ、そう考えると、私って物凄く格好悪いじゃんか……。
自分自身の格好悪さに苦笑しながら、私は続ける。

「だから、自分を責めなくてもいいんだよ、唯。
 おまえならきっと私よりも上手く梓を支えてやれる。
 自信を持てって。梓はきっとおまえの事が大好きだよ」

それは誤魔化しも嘘偽りも無い私の本音だった。
私も梓の事を大切に思ってるけど、
多分、唯ほど梓の事を深く思ってやれてはいないと思う。
梓も役不足な私より、唯と会えて話せた方がきっと喜ぶはずだ。

それから、唯は私を真顔でしばらく見つめていて、
少しずつその表情が崩れて来て……、急に頭を掻きながら照れ笑いを浮かべた。

「でっへっへー。そうかなあ。
 あずにゃん、私の事大好きかなあ。
 いやはや、お恥ずかしい」

「立ち直り早いな、オイ!」

即座に私がチョップで突っ込むと、
唯は照れ笑いを浮かべたまま頬を膨らませた。

「えー……。
 りっちゃんが自分に自信を持てって言ったんじゃん。
 それとも、りっちゃんは私がずっと悩んでる方がよかったって言うの?」

「いや……、そうは言わんが……」

唯が元気になったのは嬉しいが、どうにも拍子抜けを感じるのも確かだった。
これまで梓達と長く話し合ってきただけに、余計にそう感じる。



517 名前:にゃんこ:2011/09/02(金) 22:19:27.20 ID:PfsZM32H0

でも、まあ、唯はそれでいいのかもしれない。
笑ったり、泣いたり、怒ったり、瞬く間に表情が変わる唯。
あまりにも簡単に表情が変わるから真意を掴みにくいけど、実はその全部が嘘じゃない。
唯は感情を誤魔化したりせず、そのまま受け止めて、そのまま表現してるだけなんだ。

自分の思ったままに、自然に生きてる。
それは簡単なようで、どんなに難しい事かを私は知ってる。
だから、皆、唯の事が眩しくて、好きなんだと思う。
勿論、私もそんな唯の事が大好きだ。
私は苦笑しながら、唯にチョップした手をノコギリみたいに前後に動かす。

「ま、いいや。
 唯が立ち直ったんなら、私としても万々歳だよ。
 その調子のままで早く梓に会いにやってやれよ。
 あいつ、喜ぶぞ。勿論、ムギも。
 ムギも唯と会いたがってたからさ」

「あいよー、りっちゃん!」

選手宣誓みたいに腕を上げて、元気よく唯が微笑む。
出会った頃から変わらない、世界の終わりを間近にしてもまだ変わらない逞しい笑顔。
この笑顔に私達は騙されてるんだよな。

唯の失敗や天然に困らせられる事もそりゃ多いけど、
この笑顔を見せられると別にいいかって思わせられてしまう。
特に長く唯の傍に居るだけに、和や憂ちゃんは私よりも強く騙されてるんだろうな。

でも、それもそれでよかった。
唯は騙すつもりもなくただ笑顔になって、私達はそんな唯の笑顔に騙されて、それでいいんだと思う。
それが私達の関係なんだ。

「そういえば、りっちゃん……」

急に真剣な表情に変えて、妙に深刻そうに唯が呟いた。
突然の事に気圧されそうになりながらも、私は唯の真剣な瞳を正面から見つめて訊ねてみる。

「どうしたんだ、唯?」

「さっきのりっちゃんの話の中で、
 一つだけ気になる所があったんだけど……」

「私、何か変な事言ったっけ?」

「あずにゃんがりっちゃんの部屋で、私の事を気に掛けてたって言ってたでしょ?
 りっちゃんの部屋……って?
 あずにゃん、りっちゃんの家に来たの?」

「あー……」

妙な所で耳聡い奴だ。
聞き流してもいい所だったと思うけど、唯にとっては聞き逃せない話なのかもしれない。
そういえばメールで梓が家に泊まった事は書いてなかったしな。
別に隠さなきゃいけない話でもないし、私は正直に唯に説明する事にした。

「いや、昨日、梓が私の家に泊まりに来たんだよ。
 私が誘ったからってのもあるけど、梓も私と話したい事がまだまだあったみたいでさ。
 キーホルダーの事で、この一週間、ろくに話もできなかったしな。
 だから、少しでもその時間が取り戻せればって、私も思ってさ。それで……」

「ずるいよ、りっちゃん!」

「いや、ずるいっておまえ……」

「私だってまだあずにゃんとお泊まり会なんてした事ないのにー!
 しかも、『私の部屋』って事は、りっちゃんの部屋に泊まったって事だよね?
 ずるいずるい! 私も私の部屋であずにゃんとお泊まり会したいー!
 あずにゃんとパジャマパーティーしたいー!
 あずにゃんとパジャマフェスティバルしたいー!」

「落ち着け」



518 名前:にゃんこ:2011/09/02(金) 22:20:17.66 ID:PfsZM32H0

軽音部で梓と一番仲がいいのは多分唯だ。
それを考えると、梓は誰より先に唯の部屋にこそ泊まりに行くべきだったんだろう。
実際に梓は、憂ちゃんの部屋には何回か泊まりに行った事があるらしい。

ただ唯のこの様子を見ると、梓じゃなくても唯の部屋に泊まるのは若干躊躇うな。
何をされるか分からんぞ。
その意味では、梓は賢明だったとも言えるかもしれん。
念のため、私は唯にそれを訊ねてみる。

「一つ訊いておくが、
 その梓とのパジャマフェスティバルとやらで何する気だ」

「別に何も変な事はしません!
 猫耳付けてもらったり、お風呂に一緒に入ったり、
 私のベッドで一緒に寝たりしてもらうだけなのです!」

「それが既に変な事だという事に気付こう」

「えー……。
 憂にはたまにやってもらってる事なのに……」

「そうか……。
 おまえと憂ちゃんの関係に関してはもう何も言わんが、それを梓に求めるのはやめてやれ。
 妹と後輩は違うものだからな。
 違うものに同じ行為を求めるのは、お互いを不幸にするだけだぞ……」

「りっちゃんが珍しく知的な発言をしてる……」

「珍しくとは何だ!」

少し声を強くしてから、私は両手で唯の頬を包み込む。
それから指で唯の頬を掴むと、
「おしおきだべー」と言いながら外側に力強く引っ張った。

「いひゃい、いひゃいー……!
 ごへんなさいー……!」

そうやって痛がりながらも、唯の表情は笑っているように見えた。
私が両側に頬を引っ張ってからでもあるんだけど、
それを前提として考えても、やっぱり唯の顔は嬉しそうに微笑んでるように見えた。
唯をおしおきしながら、私も気付けば笑顔になっていた。

これが軽音部なんだよなあ……、って何となく嬉しくなってくる。
いや、世間一般の軽音部とは大幅に違ってるとは思うけど、
こういうのこそが私達で作り上げた、私達だけの軽音部なんだ。



519 名前:にゃんこ:2011/09/02(金) 22:20:57.90 ID:PfsZM32H0

「もーっ……。
 ひどいよ、りっちゃん。
 お嫁に行く前の大切な身体に何してくれるの?」

十秒くらい後に頬を指から解放してやると、
唯は自分の頬を擦りながら軽い恨み事を口にした。

「心配するなって。
 四十過ぎてもお嫁に行けてなかったら、私が責任取ってやるよ」

「えっ、りっちゃんがお嫁に貰ってくれるの?」

「いや、聡に嫁がせてやる。
 そして私は小姑として、田井中家嫁の唯さんをいびってやるのだ。
 あら、唯さん。このお味噌汁、お塩が濃過ぎるんじゃありませんこと?」

「りっちゃんの弟のお嫁さんか……。
 それもありかもー」

「ありなのかよ!」

「いやー、りっちゃんの家族になるのって何か楽しそうだしー。
 それに、そうなると私がりっちゃんの妹になるんだよね?
 りっちゃんの事をお姉ちゃんって呼ばなきゃだよね。
 ね、お姉ちゃん」

「自分で振っといて何だが、もうこの話題やめにしないか。
何つーか、それ無理……。
唯にお姉ちゃんって呼ばれるとか、正直無理……」

「あっ、お姉ちゃん、赤くなってるー」

「だから、やめい!」

また私が軽くチョップを繰り出すと、
唯が楽しそうに笑いながら頭でそれを受け止める。
もう何が何やら……。

色々と悩んでた事もあったはずだけど、
軽音部の仲間と居ると、特に唯と居ると悩みが何もかも吹き飛んじゃう感じだ。
簡単に言うと唯が空気を読めてないだけなんだろうけど、
世界の終わり直前の空気ってのは本当は読む必要なんてないのかもしれない。
唯と居るとそんな気がしてくるから不思議だった。
私は溢れ出る笑顔を止められないまま、笑顔で続ける。

「もういいから、早く音楽室に行こうぜ。
 梓もムギもそろそろ待ちくたびれてる頃だよ。
 それに心配しなくても大丈夫だぞ、唯。
 昨日は別に梓と二人きりでパジャマフェスティバルをしたわけじゃないんだ。
 ムギと純ちゃんも泊まりに来て、四人でお喋りしてたんだよ。
 梓と二人きりのパジャマフェスティバルは、今度おまえが存分にやればいい」

「そうなんだ……。
 それもちょっと残念かなー。
 あずにゃんとりっちゃんが、
 私の知らない所でラブラブになったのかと思って楽しみにしてたのに……」

「おまえは一体、何を求めてるんだ……。
 まあ、とにかく、そんなわけで早く戻ろうぜ。
 私なんか誤魔化して出て来ちゃったわけだから、そろそろ不審に思われてるだろうしさ」



520 名前:にゃんこ:2011/09/02(金) 22:23:51.62 ID:PfsZM32H0

「そういえば、どうやって誤魔化して出て来たの?」

「『そろそろ唯か澪が来る頃だろうから、ちょっと校門まで見に行ってくる』ってさ。
 澪はまだ来てないけど、今からおまえと一緒に戻れば嘘にはならないだろ。

 過去を捏造する事で有名な私ではあるけど、
 ネタ無しでの誤魔化しや捏造は意外と心苦しいんだよ。
 私ってば結構善良で臆病な小市民だからさ」

「どうもご迷惑をお掛けしました、りっちゃん隊長」

「分かればよろしい、唯隊員」

「あ、でも、迷惑掛けついでに最後に一つだけ訊きたいんだけど、いいかな?」

「何だね、唯隊員」

「あずにゃん、どうやって納得してくれたのかなって。
 キーホルダーを失くして、一週間も捜し回ってて、
 そのキーホルダーはまだ見つかってないんだよね?

 でも、あずにゃんはりっちゃんのおかげで、キーホルダーを失くした悩みが解決したんでしょ?
 私、それを一番聞きたくて、りっちゃんに教室に来てもらったんだ……」

そう言った唯の表情は、今まで見た事が無いくらいに真剣だった。
一番聞きたかったってのも、本心からの言葉なんだろう。
だったら、私にできるのは唯の言葉に真剣に答えてやる事だけだ。

「別に私のおかげじゃないよ、唯。
 梓は私達を信じてくれたんだ。言葉に出すのは少し照れ臭いけど、私達の絆ってやつをさ。
 梓はキーホルダーっていう形のある思い出じゃなくて、
 形が無くて目にも見えない私達の思い出や絆を信じてくれる気になってくれたんだ。

 私は梓がそれを信じられるように、ほんの少し梓の背中を押してあげただけ。
 その絆を私自身も信じようと思っただけなんだ。
 私にできたのはそれだけの事で、それを信じられたのは梓自身が強かったからだよ」

「そっか……。
 でも、それならやっぱりあずにゃんが安心できたのは、りっちゃんのおかげだよ。
 形が無いものを信じさせてあげられるなんて、すごく大変な事だよ?
 やっぱり、りっちゃんはすごいなあ……。流石は部長だよね……。
 だって……」

「だって……?」

私が呟くと、唯は机に掛けていた自分の鞄の中にゆっくりと手を突っ込んだ。
それから鞄の中にある何かを探し当てると、おもむろにそれを私に手渡した。
何かと思い、手渡されたそれに私は視線を向ける。

「写真……か?」

自分自身に確かめるみたいに呟く。
いや、確かめるまでもない。唯が私に手渡したのは、確かに写真だった。
軽音部の皆が写った一枚の写真。

写真を撮るのが好きな澪が所属してる我が軽音部だ。
部員の皆が写った写真は別に珍しくも何ともないけど、その写真は何処か不自然な写真だった。
その写真の中では、私だけ前に出てておでこしか写ってなくて、唯、澪、ムギは後ろで三人で並んでいる。
勿論、部員皆の写真なんだから、梓もその写真の中に居た。
でも、その梓の姿だけが不自然に浮いている。
空気や雰囲気的な意味で浮いてるんじゃなく、梓の上半身だけが本当の意味で宙に浮いていた。
別に心霊写真ってわけじゃない。
私達四人が写った写真に、別撮りの梓の写真を貼り付けてるってだけの話だ。
つまり、単純な合成写真ってやつだ。

「私ね……」

私がじっくりとその写真を見つめていると、不意に唯が囁くみたいに喋り始めた。

「昨日、憂とその写真を作ったんだ……。
 あずにゃんの悩みが何なのかは分からないけど、
 離れてたって私達はずっと一緒だよ、ってそれを伝えようと思って……。
 別々に撮った写真でも、こんな風に一緒に居られるみたいにねって。
 でも、この写真、もう無駄になっちゃったかな……?」



523 名前:にゃんこ:2011/09/05(月) 21:58:54.68 ID:x5w3qp9J0

そこでようやく私は唯が寂しそうな顔をしてる本当の理由に気付いた。
自分が間違えた事を言ったとは思っちゃいないけど、
ある意味で私の言葉は失言だったのかもしれない。

私が私で梓の悩みに向き合ってる時に、
唯も別の方法で梓の悩みに向き合おうとしてた。
目指した場所は一緒だけど、二人の選んだ道は別々で、
しかも、ほんの少しのタイミングの問題で、
私の選んだ道が梓の悩みを晴らしてあげられる結果になった。
梓が形の無い絆を信じてくれる結果になった。

唯の選んだ道も間違っていないのに、
結果的には唯の選んだ方法は私と正反対になってしまっていたんだ。
だから、唯はほんの少し寂しそうなのかもしれない。
私を羨ましく思ってしまうのかもしれない。

でも、羨ましいと思ってしまうのは、私も一緒だ。
私は手を伸ばして、唯の頬を軽く撫でる。

「何言ってんだよ、唯。
 思い出の品が必要なくなっちゃうなんて、そりゃ極論だろ。
 形の無いものを信じるのは大切な事だけどさ、形があるものだって大事だよ。

 何のためにお土産があるんだ。何のために世界遺産は残ってるんだ。
 自分達のしてきた事を形として残したいからじゃんか。
 自分達の思い出を目に見える形にしておきたいからじゃんか。

 私達だって、旅行先だけじゃなく、
 撮る必要がほとんど無い時でもたくさん写真を撮ってたのは、
 思い出を形にしておきたかったからだろ?
 色んな事を忘れたくなかったからだろ?

 だからさ、おまえの作った写真は無駄にはなんないよ。
 梓もきっと喜ぶ。
 キーホルダーの代わりってわけにはいかないだろうけど、
 新しいおまえとの絆として大切にしてくれるよ」

「でも……、ううん、そうだよね……。
 あずにゃん、喜んでくれるよね……。

 ごめんね。私、りっちゃんの事が羨ましかったんだ。
 私が考えてたのより、ずっと素敵な方法であずにゃんを支えてあげられるなんて、
 すっごく羨ましくて、ちょっと悔しかったんだ……。

 あずにゃんの事、ずっと見て来たつもりだったのに、
 あずにゃんの事でりっちゃんに先を越されちゃったから……。
 それが悔しくて、それを悔しがっちゃう自分が、何だか一番悔しかったんだよね……。
 ごめんね、りっちゃん……」

「馬鹿、私だっておまえの事が羨ましかったよ、唯」

「私の事が……?」

うん、と私は唯の言葉に頷く。
選んだ道は違うけど、違うからこそ羨ましかった。
私には唯とは違う方法で梓を支える事ができた。
でも、唯は私とは違う、私には思いも寄らない方法で梓を支えようとしてた。
それが羨ましくて、ちょっと悔しくて、とても嬉しい。



524 名前:にゃんこ:2011/09/05(月) 21:59:26.73 ID:x5w3qp9J0

「特に何だよ、おまえ。
 こんな写真作っちゃってさ……、カッコいいじゃんかよ。
 何、カッコいい事やってんだよ、唯。

 ホント言うとさ、私なんか、梓の前でオロオロしてただけだったんだぜ?
 梓の悩みが何か分からなくて、梓の悩みを探る事ばかり考えてた。

 でも、違ったんだな。他の方法もたくさんあったんだよな。
 梓の悩みが何なのか分からなくても、
 おまえみたいな方法で支えてやる事だってできたんだ。
 新しい思い出で、悩みを一緒に抱えてやる事だって……。
 私はそれを思い付かなかった自分が悔しいし、それを思い付けたおまえが羨ましいよ。

 だから、お相子だな。
 私もおまえも、自分にできない事をしたお互いが羨ましいんだ。
 悔しい事は悔しいけどさ、今はそれを嬉しく思おうぜ。
 二人とも梓の事を真剣に考えて、別々の解決策を見つけられたんだからな。
 それってすごい事じゃないか?」

「すごい……かな。
 ううん、すごいよね。
 後輩を助けてあげられる方法を先輩が別々に二つも思い付くなんて、
 そんなに大切に思われてるなんて……、あずにゃんの人徳ってすごいよね!」

「そっちかよ。
 ……でも、確かにそうだな。
 生意気だけどさ、そんなあいつが大切だから、私達も一生懸命になれたんだよな。
 あいつが居なきゃ、私も私でいい部長を目指せなかったかもしれない。
 その意味では梓に感謝しなきゃな」

「りっちゃんは最初から私達の素敵な部長だよ。
 勿論、澪ちゃんやムギちゃんも素敵な仲間だもん。
 やっぱり軽音部のメンバーは誰一人欠けちゃいけない素敵な仲間達だよね」

「あんがとさん。
 おまえこそ、素敵な部員だよ、唯。
 そもそもおまえが居ないと軽音部は廃部になってたわけだしな。
 そういう世知辛い意味でも、私達は誰一人欠けちゃいけない仲間だ」

「それを言っちゃおしまいだよ、りっちゃん……」

笑いながら「まあな」と言って、唯に手渡された写真にまた目を下ろす。
いつ撮った写真かは思い出せないけど、若干写真の中の私達の姿が今よりも若く見えた。

大体、梓抜きで集合写真を撮る事なんて、
二年生になってからはほとんどなかったはずだから、
この写真は私達が一年生の頃に撮った写真なんだろう。
合成された梓の写真も多分梓が一年生の頃の写真に違いない。
いや、梓の写真の方は自信が無いけど。
梓ってば、中身はともかく、外見が全然変わってないからなあ……。

しかし、それより気になるのは写真の中の私の姿だ。
唯達は並んで仲睦まじそうに写ってるのに、何故だか私だけおでこしか写っていない。
いや、前に出過ぎた私が悪いのは分かってるけど、何となく納得がいかなかった。
私は腕を組み、頬を膨らませながら唯に文句を言ってみる。



525 名前:にゃんこ:2011/09/05(月) 21:59:59.94 ID:x5w3qp9J0

「ところで唯ちゅわん。
 どうして私だけ顔も写ってないこんな写真を選んだのかしらん?
 もっと他にいい写真があったんじゃないのかしらん?」

「えー、いいじゃん。
 だって、この写真が一番私達らしいって思ったんだもん。
 りっちゃんだって、一番りっちゃんらしく写ってるよ?」

「私らしい……か?」

「うん!」

自信満々に唯が頷く。
その様子を見る限り、少なくとも冗談でこの写真を選んだわけじゃなさそうだ。
「りっちゃんらしい」って、そう言われちゃ私の方としても何も言えなくなる。
恥ずかしながら、確かに私らしいとは自分で思わなくもないし……。

仕方が無い。
唯だって真剣にこの写真を選んだんだろう。
納得はいかんが、これが私達らしい姿だってんなら、私もそれをそのまま受け入れよう。
でも、まだ納得できない……と言うより、もう一つだけ分からない疑問が残っていた。

「それで、唯?
 何でこの写真は私達が一年生の頃の写真なんだ?
 梓の写真はいいとして、私達が一年の頃の写真じゃなくても他に色々あっただろ?」

「分かってないね、りっちゃん。
 これはね、私達とあずにゃんが違う学年で産まれて来ちゃって、
 学校で同じ行事を過ごす事はできなかったし、私達が先に卒業もしちゃうけど……。

 だけど、学年は違っても、
 この写真みたいに心は一緒に居る事ができるからって、
 いつまでも仲間だからって、そういう意味を込めて作った写真なんだよ」

「おー、すげー……」

「……って、憂が言ってました!」

「私の言ったすげーを返せ!」

声を張り上げながら、私は妙に納得もしていた。
考えてみれば、憂ちゃんも梓と同じく後に残される立場だ。
妹だから当たり前だけど、憂ちゃんは梓以上に何回も唯に取り残されてきたんだ。
その寂しさを知ってる憂ちゃんだからこそ、
梓の事を心配できたし、梓が一番喜ぶだろう写真の選択もできたんだろうな。

まったく……、梓の奴が何だか羨ましいな。
憂ちゃんにも純ちゃんにも心配されて、
軽音部の皆から気に掛けられて……、それだけ誰からも大切にされてるって事なんだろうな。
私は少しだけ苦笑して、手に持っていた写真を唯に返す。

「さ、そろそろ本当に帰ろうぜ。
 その写真、早く梓に渡してやれ。きっと喜ぶぞ。
 憂ちゃんが言ってた云々は……、まあ、おまえが言いたければ言えばいいんじゃないか。
 色々と台無しな気もするが、それはそれで唯らしいしな」



526 名前:にゃんこ:2011/09/05(月) 22:00:29.42 ID:x5w3qp9J0

言ってから、私は和の席から立ち上がろうとして……、
急に唯に制服の袖を引かれた。
何かと思って目をやると、
「ほい」と言いながら唯が写真を私にまた渡そうとしていた。

「何だよ、私にその写真を梓に渡させる気か?
 そんなの駄目だよ。
 おまえ自身が梓に手渡す事に意味があるんだからさ」

諭すみたいに私が言うと、急に真剣な表情になった唯が頭を横に振った。
その唯の表情はこれまでのどの表情よりも寂しそうに見えた。

「違うよ、りっちゃん。
 あずにゃんに渡す写真はちゃんとあるから大丈夫。
 憂がパソコンで何枚も作ってくれたから、あずにゃんにはそっちを渡すよ。
 だからね、その写真はね……、りっちゃんのなんだよ?」

「私……の……?」

「りっちゃんも私達の仲間でしょ?
 それとも……、私達といつまでも仲間で居たくない?
 高校生活が終わったら……、
 ううん、おしまいの日が来たら、私達の仲間関係はおしまいになっちゃうの?」

「そんな事……、あるわけないだろ……?
 私達はいつまでも仲間だよ、唯……」

「……だよね?
 だから、私はりっちゃんにもこの写真を持ってて欲しいんだ。
 実はね、この写真、あずにゃんのためだけじゃなくて、
 りっちゃんにも渡したくて作ったんだよ?」

予想外の唯の言葉に、私は何も言えなくなる。
これまで考えてもなかった展開に、自分の胸の音が大きくなっていくのを感じる。
唯は寂しそうに微笑んだまま、続ける。

「りっちゃんさ……、最近、すっごく悩んでたでしょ?
 あずにゃんの事もだけど、他にも多分色んな事で……。
 分かるよ。最近のりっちゃん、すごく辛そうだったもん。
 勿論、あずにゃんの事は心配だったけど、私はりっちゃんの事も心配だったんだ。
 あずにゃんと同じくらい、りっちゃんの事も大切だから……」



527 名前:にゃんこ:2011/09/05(月) 22:01:00.50 ID:x5w3qp9J0

別に嫌われてると思ってたわけじゃないけど、唯の発言は衝撃的だった。
唯は一緒に居ると楽しくて、すごく大切な友達だけど、
そんな風に考えていてくれるなんて思ってなかった。
私の事をそんなに見てくれてるなんて、考えてなかった。
考えるのが恐かった。

だって、そうだろ?
仲がいいと思ってる友達の中での自分の位置がどれくらいかなんて、恐くてとても考えられない。
だから、私はその辺について深く考えないようにしてた。
梓の件でだって、例え梓に嫌われてても、自分が梓を大切に思ってればそれでいいんだと思ってた。
私が誰かの大切な存在になれるだなんて、そう思うのは自意識過剰な気がしてできなかった。

でも、唯は私の事を、私が思う以上に見てくれていた。
私の事を大切だと言ってくれた。
それだけの事で、胸の高鳴りが止まらない。
言葉に詰まる。
泣いてしまいそうだ。
そうして何も言わない私を不安に思ったのか、唯が自信なさげに呟く。

「私、軽音部の部長でいてくれたりっちゃんにすごく感謝してるんだ。
 りっちゃんが居なきゃ音楽を始める事なんてなかったと思うし、
 澪ちゃんや、ムギちゃん、あずにゃんやギー太とだって会えてなかったと思う。
 私の高校生活、本当に楽しかったのはりっちゃんのおかげなんだ。

 だからね、私はりっちゃんの事が大好きだよ。
 大好きだから心配で……、とっても心配で……。
 でも、今日久し振りに元気そうなりっちゃんを見られて、すごく嬉しかった。
 りっちゃんは……、どう?
 私にこんな風に思われて、迷惑じゃない?」

迷惑なわけがない。
でも、口を開けば泣いてしまいそうで、言葉にできない。
写真を受け取ってから私は和の席にまた座り込んで、
今にも涙が流れそうになりながらも、それでも唯の瞳だけはまっすぐに見つめる。
これだけで唯に伝わるだろうか?
泣いてしまいそうなほど嬉しい私の想いを伝える事はできただろうか?

誰からも大切に思われてないって思ってたわけじゃない。
それほど悲観的な考え方はしてないつもりだ。
でも、暴走しがちで皆に迷惑ばかりかけてる私が、こんな私が大切に思われてるなんて……。
それが、こんなにも、嬉しい。

それを気付かせてくれたのは唯だ。
唯は単純で、正直で、普通なら照れて言い出せない事でも平然と言い放つ子で……。
そんなまっすぐに感情や想いを表現してくれる子だから、唯の言葉には何の嘘も無い事が分かる。
唯以外の皆も私の事を考えてくれてるって気付ける。
私達はいつまでも仲間なんだって、確信できる。

「迷惑じゃ……ない。あり……」

やっぱり言葉にならない。
自分の想いを言葉にして伝えられない。
でも……。
唯は嬉しそうにいつもの笑顔を浮かべて、私の右手を両手で包んでくれた。



528 名前:にゃんこ:2011/09/05(月) 22:03:30.76 ID:x5w3qp9J0



今夜はここまで。
とりあえず唯編はこれでおしまいです。
ちょくちょく出てくる予定ですが。

次の編で個別ルートは終わる予定です。
ようやく出てくるわけですね、ベースのラスボスが。




529 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/09/05(月) 22:26:01.42 ID:/1DXRfYO0


みんな仲間思いでいいなあ
そして、いよいよか






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