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梓「私、結婚しますから」#7 【恋愛】


SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)@VIPServiseより

http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1330186585/l50
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1330273140/

梓「私、結婚しますから」#index


389 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 05:49:36.47 ID:1FD7vy2wo

「ありがとうございましたー」

そんな声を背に、私達は店を出ました

五月の日曜日、午前十時

駅前は多くの人で賑わっていて、気持ち明るめの服装が目に付きました

唯「はぐれちゃうから、手を繋ごうか」

梓「はい」

あずにゃんの小さい手を握ると、あずにゃんが少し微笑んで

私も微笑んで、二人で歩き出します

空を見上げると真っ青で、太陽の光も暖かくて

そんなゆったりとした日曜日でした

唯「ついに買っちゃったねー」

繋いでない方の手に下げている紙袋に目をやります

梓「やっぱり、少し緊張しましたけどね……」

同じ柄の紙袋を持つあずにゃんも、それを前に掲げながら言いました

梓「でも、無事に買えてよかったです」



390 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 05:50:03.51 ID:1FD7vy2wo

唯「通話専用の携帯電話!カップル専用だから、通話も定額だもんね」

梓「唯先輩が料金気にせず長電話するから……」

ため息をつくあずにゃん

まあ、確かにちょっと長電話し過ぎたかもね

憂にも怒られちゃったし

唯「仕方ないじゃんー。やっぱりあずにゃんとお話したいわけだしー」

梓「それは私だってそうですけど。でも基本メールとか、そういうのでも」

唯「だめー!あずにゃんの声が聞きたいのー!」

梓「……まあ、私も通話料凄いことになりましたから人のこと言えないんですけどね」

こうやって、休日にしか会えないんだから

だからせめて、声だけでも聞きたいんです

梓「それで。――どうですか、大学生活の方は」

唯「うん。やっと落ち着いたよ。まあ、基本的に高校の時と変わらないかなぁ」

授業に出て、終わったらみんなと部室に行ってお喋りして

学校の拘束時間が短くなった分、前よりものんびりはしてるかな?

唯「新しい場所でも、ちゃんとみんな練習してるよ。お茶もお喋りも今まで通りだけどね」

梓「みなさんらしいですね」

困った風に微笑むあずにゃん

そして、少し申し訳なさそうに

梓「あの……本当にすみません」



391 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 05:50:33.69 ID:1FD7vy2wo

唯「ん?何が?」

梓「放課後ティータイムのことです」

放課後ティータイム?

……ああ

唯「気にしないでよ。みんなで決めたんだから」

梓「でも……」

私達が進学するのと同時に、放課後ティータイムは一年間の活動停止になっています

誰が言い出したのかは覚えていません

だけど、たぶん

みんなが各々、思っていたことだと思っています

唯「やっぱりあずにゃんが居ないと、放課後ティータイムじゃないからね」

実際、四人で放課後ティータイムの曲を演奏しても違和感というか

どうしても足りない音が気になってしまっていました

だったら、いっそ一年間はあずにゃんを待とうと

そういう話し合いを、四人でしました

唯「澪ちゃんもむぎちゃんも、作詞作曲を作り貯めるって張り切ってたし」

唯「私やりっちゃんだって、これを機にスキルアップを図るつもりなんだよ!」

梓「でも、学祭でライブとか出来ないんですよ?」

唯「あずにゃんが居なきゃ、ライブなんてしないよ」



392 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 05:51:04.61 ID:1FD7vy2wo

本当、あずにゃんが入るまでは四人で演奏してたのが信じられないくらいです

あの時も、とても楽しかったのは覚えているのですが

それでも、やっぱり今ではみんな――

唯「だから、気にしないでよ。ちゃんと練習は続けるからさ」

ね?と言うと、しばらく逡巡した後で、あずにゃんは頷きました

梓「ありがとうございます……私、絶対に来年は皆さんと同じ大学に行きますから」

唯「うん。待ってる」

個人的には、あまり無理をして欲しくは無いんだけどね

受験勉強の他にも、軽音部のことも全部やってるんだし

梓「他の皆さんも元気そうですね」

唯「うん。相変わらず、りっちゃんは澪ちゃんとイチャイチャしてるよ」

私達四人は寮に入ったのですが、澪ちゃんとりっちゃんが同室で

ちょっとした同棲状態になっています

まあ、あの二人を見てるとやっぱり、あずにゃんが恋しくなっちゃうこともありますけどね

唯「むぎちゃんも、さわちゃんと順調みたいだしね」

梓「そうなんですか。そう言えば最近、さわ子先生の肌がツヤツヤしてますね」

唯「毎週末はさわちゃんのアパートに通い妻だよー。お料理作ったり、家事したりしてるんだってさ」



393 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 05:51:34.55 ID:1FD7vy2wo

梓「なんだかむぎ先輩らしいですね」

あずにゃんはそうやって笑うけど

……むぎちゃんって結構お嬢様なんだよね

通い妻なんてさせてることバレたら、さわちゃんどうするんだろう

唯「あ、そういえば。軽音部の方はどう?」

新入生も入ってきたんだっけ

確かあずにゃんがやってるバンド名が……わかばガールズ?

梓「あ、はい。力及ばずながらも頑張ってますよ!」

いい笑顔でそういうあずにゃん

うわー、眩しいなぁ

本気で可愛いや

梓「新入部員も入ってきて、廃部も回避しましたし」

唯「頑張ったねー、あずにゃん部長」

梓「あとは初ライブに向けて、練習あるのみですから!」

唯「みんなで見に行くからね。文化祭」

梓「はい。……今度は、唯先輩がライブしてる私に惚れる番ですからね」

唯「もう惚れてるよー」

そういえば、あずにゃんが私を好きになったのって新歓ライブの時だって言ってたっけ

えへへ、私が惚れる番、だって

そこでふと、心配になってきました



394 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 05:52:07.46 ID:1FD7vy2wo

唯「あ、あの……あずにゃん?」

梓「はい?」

唯「わ、わかばガールズの方が楽しくなっちゃったりしたら……もしかしてHTTは」

梓「そ、それはないですよ!」

わたわたと、あずにゃんが首を振ります

梓「確かに楽しいですけど、私はあくまで放課後ティータイム所属でして!」

梓「みんなにもちゃんと、放課後ティータイムに戻るってことは最初から伝えてますから!」

唯「そっか。……えへへ、ちょっと不安になっちゃって」

梓「それに……」

唯「ん?」

あずにゃんが上目遣いで私を見て

梓「唯先輩の隣で、ギター弾きたいんで」

顔を真っ赤にしながらもそう言ってくれて、私まで顔が熱くなっちゃって

唯「あずにゃーん……」

梓「ちょ、唯先輩、こんな公共の場で!」

思わず抱きしめちゃいます

時折あずにゃんが見せるこのカウンターパンチに、私は今でも慣れることが出来ません

あーもう、大好きだよあずにゃん



395 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 05:52:29.78 ID:1FD7vy2wo

梓「と、とにかく!」

私を押しのけて、あずにゃんは言いました

梓「そういうことですので、心配しないでください」

唯「うん。わかった」

自然に手を繋ぎ直して、歩き出します

その手の暖かさを感じながら

少し、勇気を出さないといけません

深呼吸して、冷静になって

唯「あずにゃん」

梓「なんですか?」

唯「あのね。放課後ティータイム、活動休止してるじゃん」

梓「はい」

唯「だからね。その空いた時間を使って、バイトしようかなって思ってるんだ」

梓「バ、バイトですか!?」

バッと私を見るあずにゃん

梓「バイト……悪質なクレーマー、唯先輩に言い寄る男女……ストーカー!?」

唯「あずにゃん落ち着いて」

飛躍し過ぎだよ



396 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 05:52:55.40 ID:1FD7vy2wo

唯「その……三年の時に、
  むぎちゃんのお父さんの会社がやってる喫茶店で少し働かせてもらったじゃない?」

唯「そこで四人でバイトしようってことになって。勿論、一年間だけだけどさ」

梓「ああ、あの高級喫茶店ですか。……それなら安心ですね。澪先輩達も居ますし」

梓「でも、どうしていきなり?買いたいものでも?」

唯「ううん。買いたいものも……あるけど。それはね」

言うんだ

言うんだ私

勇気を出して

あの時の勇気を思い出せ

一緒に居たければ、前に進まないと

それだけの努力をしないと

唯「あ、あずにゃん。あのね!」

梓「ど、どうしたんですか。そんな改まって」

唯「あずにゃんが大学に受かったらね。その」

梓「はい……」

唯「わ、私と一緒に暮らさない?」

梓「……え?」



397 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 05:53:22.07 ID:1FD7vy2wo

唯「私、寮出るから!一年間バイトして貯金して、お金貯めるから!」

唯「家具代とか部屋の敷金礼金くらいは貯金で何とかなると思う。生活費も、仕送り頼むし」

唯「だから、その……」

梓「ちょ、ちょっと待ってください」

立ち止まって、あずにゃんと向き合います

梓「その……それってつまり……同棲しようってことですか?」

唯「う、うん」

だ、だめかな

早すぎた?

いやでも、もう付き合って二年目になるんだし

あれ、二年じゃ早すぎるのかな?

ど、どうなんだろう

唯「……同棲したいなって思うんだけど」

梓「は、はい。も、もちろんです」

唯「本当に!?」

梓「だ、だめなわけないじゃないですか」

唯「やったー!」

あずにゃんに抱きつきます

良かった!

同棲してくれるって!



398 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 05:53:53.31 ID:1FD7vy2wo

唯「私、頑張るからねあずにゃん!」

梓「む、無理しないでくださいよ?同棲する以上、私も協力させてもらいますので」

唯「うん!心配かけないようにする!」

梓「……とりあえず、澪先輩に気をつけて見て貰えるように電話しときますか」

唯「大丈夫だよー?」

梓「なんか心配なんで」

唯「ぶー」

梓「……そうなると」

ふと、紙袋を見ながらあずにゃんが言いました

梓「この携帯、一年しか使わないんですね」

唯「……そうなるね」

二人して、えへへと笑い合います

唯「もったいないから、いっぱいお話しようね」

梓「私受験生なんで。影響が出ない程度にお願いしますね」

唯「いけずー。……でもまあ、そうだよね」

梓「一日一時間ですね」

唯「え、そんなにお話してくれるの?」

梓「……私だって寂しいんですからね。夜くらい構ってください」

拗ねたように言うあずにゃん



399 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 05:54:19.77 ID:1FD7vy2wo

唯「んふふ。構いまくるよー?」

梓「まあ、一日頑張ったご褒美ってことでお願いします」

唯「うん!」

梓「じゃあ、帰りましょうか」

って、え?

唯「もう帰るの!?」

梓「だってもう用事ないでしょ?」

そんな……

せっかくのデートなのに!

しかもこんなお天気の良い日に……

唯「なんか食べに行ったりさぁ……」

梓「私の家で作ってあげます」

唯「え、本当に?」

っていうか、とあずにゃんが腕を組んできました

梓「ひ、久しぶりに一緒に居るわけですし。その……あずにゃん分補給してあげます」

唯「……えへへ。唯先輩分もいっぱい補給してあげるね」



400 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 05:54:46.14 ID:1FD7vy2wo

梓「お、お願いします」

唯「じゃあ急いで帰ろうか。どうする?私の家?」

梓「憂と和先輩が居るんじゃないですか?今日は」

唯「あ、そっか。来るって言ってたっけ」

今頃は二人とも、家でいちゃいちゃしてるのかな

それじゃあ、邪魔するわけにはいかないね

憂と和ちゃんも、久しぶりに二人の時間なんだもん

梓「今日は私の家で。誰も居ないので」

唯「ゆっくり、いちゃいちゃ出来るねぇ」

じゃあ行こう、とあずにゃんの手をとって走り出します

梓「ちょ、ちょっと唯先輩!別に走らなくても!」

唯「時間が勿体ないよ。早く帰れば長くいちゃいちゃ出来るよ。あ、ほら!ちょうどバスが来てる」

バス停に向かって走ります

それでも、あずにゃんが転ばないようにちゃんと気をつけて

梓「もう……唯先輩ったら」

微笑むあずにゃん

その笑顔が大好きで

これからもずっと隣で見ていたくて

唯「大好きだよ、あずにゃん」

バスに乗り込む前に、あずにゃんの耳元で囁きました


終わり



402 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 05:57:15.92 ID:1FD7vy2wo

本編終わりです
支援本当にありがとうございました
唯視点の他に、梓視点と和視点と律視点でそれぞれ計画してたのですが、長すぎたので一つにまとめました
そのため、あちこちで意味わからないところがあると思いますので、疑問点があれば答えます




401 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県):2012/02/27(月) 05:57:11.38 ID:CZ8Ioglho

ミラクル乙
8時半起きだけどもうなんかいいや
後悔はしてない



403 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県):2012/02/27(月) 05:57:48.33 ID:tQT0bhTDo

お疲れ様

憂和の補完みたいなのってないのかな?
このままだと和がただのムッツリスケベになってなんか…



404 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/02/27(月) 05:59:18.90 ID:rq91C+Avo

乙!

もっかい読み直すぜ





405 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:04:48.03 ID:1FD7vy2wo

>>403
補完は考えてないです。ごめんなさい
和は「自分の思い通りに行動した場合の唯」って対比対象で書いてたので
ただムッツリだけじゃなくて、本気で憂のことは愛してます




413 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/02/27(月) 06:08:55.66 ID:cls21YI5o

2日連続で乙!
素晴らしかった
疑問と言うか、本物のカップルの結婚式と3年になってからの結婚式はどうなったの?そこは別視点だったからカット?





415 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:11:02.81 ID:1FD7vy2wo

>>413
両方とも四組全員でちゃんと挙げました
二年連続なんで、学校で噂は立ってしまったようですが暖かく見守れました




416 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県):2012/02/27(月) 06:11:17.14 ID:tQT0bhTDo

>>405
そっか
いや、愛してるのは分かるけど最後の出番が憂に詰め寄られるところだったからそう見えちゃったんだよね
せめてかっこいいところを見せてほしかったなって思ったんだ





418 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:12:20.26 ID:1FD7vy2wo

>>416
ですよね。少し軽率でした
唯と梓の描写で精一杯で……



427 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/02/27(月) 06:16:37.95 ID:cls21YI5o

>>415
それはよかった
ただ唯が告白した時はあずにゃん不機嫌で、唯自身も両思いだと知らないのに
本物のカップルとして結婚式を挙げるってのは唯はどう捉えていたのかな





429 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:19:36.09 ID:1FD7vy2wo

>>427
その時は、唯は結婚式を台無しにしちゃったせいだと思ってました
罰的な式というか
梓の方は、始めからこれに近いことは考えていたのですが、不本意な告白の後なので嬉しかったり微妙だったりでした




439 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/02/27(月) 06:25:50.76 ID:cls21YI5o

>>429
なるほど、捕捉サンクス
2年の時の方はあくまで形式的で微妙な空気の中でって感じだったのね





440 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:27:17.54 ID:1FD7vy2wo

>>439
はい。そうです




406 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:05:58.23 ID:1FD7vy2wo

じゃあ、後日談行きます
蛇足ですが



407 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:06:24.29 ID:1FD7vy2wo

後日談

三月

土曜日の午前十時

商店街のアーケード内を、私とあずにゃんは歩いていました

唯「土手の桜並木、綺麗だったねー」

梓「毎年本当に綺麗ですよね。何気に楽しみです」

ポケットに手を入れて

唯「えへへ。これをあげよう」

梓「これって……もう」

微笑んで、あずにゃんは桜の花を受け取ってくれました

唯「落ちてたの、拾ってきちゃった」

梓「二本目ですね、唯先輩から桜の花を貰うの」

唯「あずにゃんの合格祝いだよ。本当に頑張ったね、あずにゃん」

梓「えへへ」

くすぐったそうに微笑むあずにゃんの頭を撫でます

そうです。あずにゃんは私と同じ大学に合格しました

部活もライブも受験勉強も、そして私とのお付き合いも

全てに手を抜くことなく、あずにゃんは一年間やり通しました

それは凄いことだと私は思います

まあ、あずにゃんは『当然のことです』と不敵に微笑みますけど

それでも約束通り、あずにゃんは私を追いかけて来てくれました



408 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:06:57.17 ID:1FD7vy2wo

梓「唯先輩も、色々とありがとうございました。後半からは、会う時間が少なくなっちゃったのに」

唯「あずにゃんの応援をするのは当然だよ。私、あずにゃんの彼女だよ?」

梓「そうですね。えへへ」

確かに、あずにゃんに会えない日々は少し辛かったのですが

それはあずにゃんも同じく思っていてくれて、だったら私も我慢しなきゃって

だから、当たり前のことです

唯「新しい生活が始まるね。四月から」

梓「そうですね。学校も、バンドも――同棲まで、始まりますから」

唯「……顔がニヤけてきちゃう」

梓「私だって我慢してるんだから唯先輩も我慢してください」

そう言って、あずにゃんはトートバッグから手帳を取り出しました

梓「とりあえず、部屋を決めないといけませんからね」

唯「そうだねー。……お義父さんとお義母さんは何か言ってた?」

梓「出来れば実家に近いと安心かなって言ってましたけど……」

唯「どうしたの、あずにゃん?」

梓「いや……お義父さんとお義母さんって」

唯「……ちょ、ちょっとあずにゃん」

梓「だ、だめだ顔がニヤけてきます!」

両手でほっぺたを覆って笑うあずにゃんに、私も顔が熱くなるのがわかります



409 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:07:25.46 ID:1FD7vy2wo

唯「だ、だってそう呼んでって言われたんだから!」

梓「そうなんですけど、でも……ダメだ顔が赤くなってる」

わ、私だって自然な流れで呼んだのに!

恥ずかしいんだからね私だって!

梓「……取り乱してすみませんでした」

唯「……あずにゃんだってうちの親に同じ事言われたんだからね。絶対に通る道だからねこれ」

梓「わ、わかってますよ。でも絶対に私が言ったら唯先輩もニヤけると思いますよ」

唯「私はちゃんと我慢するもんー」

梓「出来るもんならしてみてくださいよ」

一週間前にあずにゃんの合格発表があって

合格を確認したその翌日に、お互いの両親に挨拶に行きました

付き合っていること

遊びでは無くて、一生を共にする覚悟でいること

同棲したいと考えていること

ざっとこういう事を伝えるためでした

唯「まあ本当に、理解のある両親で良かったね、お互い」

梓「そうですね。そこだけは本当に助かりました」

正直、私達は反対される覚悟で行ったのですが

拍子抜けするくらいに理解してくれて

唯「……でもまさか、挨拶の席でギターを弾かされるとは思ってもみなかったよ」

梓「私が高校入ってずっと話してましたからね、唯先輩のこと。すごく興味を持ってたみたいで」

プロ二人を前に演奏なんて、もの凄く緊張したっけ



410 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:07:51.18 ID:1FD7vy2wo

唯「私、ちゃんと弾けてた?」

梓「はい、最高でしたよ。うちの両親も感心してました」

それは良かったです

安心しました

梓「憂も和先輩と一緒に挨拶に行ったみたいですね」

唯「うん。憂も和ちゃんも、付き合ってるってのはあらかじめ自分の両親に言ってたみたいだから」

だから、それはスムーズに進んだみたいです

まあ、うちの両親は小さい頃からわかってたみたいですけどね

梓「憂の嬉しそうな顔が目に浮かびます」

唯「和ちゃんなんてはしゃいでたからね」

たぶん和ちゃんの両親も、昔からわかってたんじゃないかな

唯「だからあとは、私達の部屋を決めるだけだね」

梓「はい。一応不動産屋さんはいくつか回ってみましょうか」

唯「今日で良い部屋が見つかるといいね」

梓「そうですね。とりあえず、希望の条件をいくつか簡単にまとめておきましょうか」

唯「うん。あ、あそこにベンチがあるから、あそこで話そうか」



411 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:08:18.52 ID:1FD7vy2wo

梓「で、希望の条件ですけど」

ベンチに座ると、あずにゃんは手帳を開いてペンを取りました

唯「んー。部屋の数はどうする?」

梓「1DKくらいでいいんじゃないですか?」

唯「あずにゃん、自分のお部屋とか欲しい?」

梓「いえ、せっかく同棲するんですから一緒に居ましょうよ」

唯「そ、そうだね」

相変わらず、あずにゃんのカウンターパンチの切れ味は凄まじいです

唯「じゃあ1DKで」

梓「はい。トイレとお風呂が別なのは必須ですよね」

唯「あ、お風呂は二人で入れるサイズで!」

梓「それ恥ずかしいから不動産屋さんで言わないでくださいよ?……まあ、それも必須で」

大きめのバスタブ、と手帳に箇条書きするあずにゃん

梓「あ、あと防音も欲しいですね」

唯「あずにゃん、けっこう大きい声出すからね」

梓「ち、違います!ギターの練習するでしょ!」

あ、そっか

梓「……第一、唯先輩だって結構大きいですよ」

唯「え、そうなの?」

梓「だから両親が居る時はできなかったんですよ」

……何回かやったような気がするけど

もしかしてその時から、お互いの両親にはバレてたのかな

唯「ま、まあそうだね。防音も欲しいね」



412 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:08:47.09 ID:1FD7vy2wo

梓「あとは……治安ですかね」

唯「お隣さんが怖くないとか、周りの道が夜でも明るいとか」

梓「交番が近いとか、パトロールの巡回があるとかですね」

治安、とあずにゃんが手帳に付け加えます

唯「あと幽霊とか出ないとこ」

梓「まあ、異常に安いとこを避ければ大丈夫ですよね」

唯「こんなとこかな」

梓「ですね。あとは、気づいたら付け加えていけばいいし」

唯「いくらくらいなんだろうね」

梓「ちょっと相場がわかりませんよね。
  まあ、お互いの両親から仕送り来ますから、そこそこのとこには」

首を傾げて考え込むあずにゃん

あ、そうだ

唯「ねえ、あずにゃん」

梓「はい?」

唯「どっちの籍に入るか、考えてくれた?」

梓「はい!?」

顔を真っ赤にして私を見るあずにゃん

梓「い、いきなり何を!?」

唯「え、だってほら、どっちの家にも『大学卒業したら籍入れていいよ』って言われてるじゃん」

だから、もう決めたかなって

梓「ま、まだ四年も先の話ですよ!?」

唯「でもほら、同棲するんなら表札作らないと」

梓「今は名字を揃える必要ありません!」

まったく……とあずにゃんがため息をつきます



414 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:09:13.24 ID:1FD7vy2wo

梓「……中野唯も平沢梓も魅力的なんで、四年間じっくり考えさせてください」

唯「ちぇー、表札見てニヤニヤしたかったのにー」

まあ、待ってと言われてるんだから待ちますけど

どっちだろうなー

四年後にはわかるのかー

梓「……ゆ、唯先輩はどっちがいいですか?」

上目遣いでこちらをみるあずにゃん

唯「んー?そうだなぁ」

中野唯も捨てがたいけど……

唯「やっぱり平沢梓かなぁ。なんか、あずにゃんが私の物になった!って気がするよ」

梓「そ、そうですか。……やっぱり鉄板は平沢梓かな」

唯「ん?なんか言った?」

梓「い、いえ!別になにも」

まあ、とりあえずは同棲のことだよね

唯「そろそろ行こうか、あずにゃん」

梓「そうですね」

あずにゃんが手帳を閉じて、立ち上がります

唯「ある程度は条件が絞り込めたから、きっと見つかるよ」

梓「だといいですけどね。まあこういうのはじっくりと考えないといけませんけど」

そんな話をしながら、私達は歩き出します

とりあえずは、不動産屋さんで見てみないことには話になりませんから



417 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:11:32.50 ID:1FD7vy2wo

お昼です

日当たりの良い屋外カフェテラスのテーブル

オレンジジュースを飲んでから、あずにゃんはため息をつきました

梓「なかなか見つかりませんね」

唯「だね……」

テーブルに突っ伏しながら、私も呻きます

あれから三件の不動産屋さんを回ってみました

こちらの条件も話して、色々と紹介されたのですが

梓「値段だったり広さだったり防音だったり、ちょうどいいのはありませんでしたね」

唯「やっぱりちょっと甘かったかなぁ」

同棲ということで、少し浮かれていたのかもしれません

考えてみれば良い部屋なんてそれなりの値段になるのは当たり前ですし

財布と相談した結果なら、必然と広さや環境も限られてしまう

防音だなんて、昨今の住宅事情では難しいのかもしれませんし

ため息をつくと、頭にふわっとした感触

梓「そう簡単には決まりませんよ」

唯「あずにゃん……」

梓「お昼食べたら、また頑張りましょうよ。きっといい部屋見つかりますから」

梓「こういうのも、恋人の共同作業の一つですから。だからそんな顔しないでください」

唯「うん……ごめんね」

頭をなでなでされながら、私は謝ります

そうだ

ここで私がしっかりしないと

これくらいで諦めちゃダメだ



419 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:13:12.57 ID:1FD7vy2wo

唯「同棲したいもんね。ここで頑張らないと」

梓「はい。頑張りましょうね」

えへへ、と笑い合います

梓「まあ、デートだと思えば楽しいですよ」

唯「そうだね。あまり気負わない方がいいかも」

さすがはあずにゃんです

ここぞと言う時に私をフォローしてくれるし

私も同じように、あずにゃんを支えられるようになりたいです

唯「っと、そうだ」

梓「どうしたんですか?」

自分のトートバッグの中を探って、お目当ての物を見つけます

唯「これ」

私がテーブルの上に置いたのは

梓「手紙?」

唯「うん。すっかり忘れてたよ。これ、むぎちゃんから貰ったの」

梓「むぎ先輩からですか」

オレンジジュースを飲みながら、テーブルの上の手紙を見るあずにゃん

唯「こないだね、寮の部屋でゴロゴロしてたらねー」



420 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:13:38.59 ID:1FD7vy2wo

回想始め

唯「早くあずにゃんに会いたいなー」

紬「唯ちゃん。ちょっといい?」

唯「あ、むぎちゃん。いいよー。どうしたの?」

紬「明日、実家に帰るんでしょう?」

唯「うん。四月から住む部屋を、あずにゃんと探しに行こうと思ってね」

紬「そう。お部屋、何か目星は付いてるの?」

唯「ううん。全然。あずにゃんともまだ相談してないしね」

紬「へぇ。……あのね、もし、良いお部屋が見つからなくて困っちゃったら」

唯「あ、何これ。手紙?」

紬「うん。この手紙を読んでね」

唯「今見ちゃだめなの?」

紬「出来れば、二人でお部屋を探した上で、改めて二人で読んで欲しいの」

唯「うん、わかった。困ったら、あずにゃんと二人で読むね」

回想終わり



422 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:14:04.69 ID:1FD7vy2wo

唯「ってことがあってね」

梓「私と二人で、ですか」

ふーむ、とあずにゃんが手紙を手に取ります

梓「そう言えば。手紙、憂も貰ったって言ってましたよ」

唯「え、憂も?」

梓「ええ。紬先輩からって言ってました」

私達だけじゃなかったんだ

となるとこの手紙、一体何が書いてるんだろう

唯「読んでみようか」

梓「はい」

テーブルの上で手紙を広げます

あずにゃんも身を乗り出して手紙を覗き込んで

唯「……住所?」

そこに書かれていたのは、二行ほどの住所でした

梓「これ、駅前周辺の住所ですね」

唯「駅の方なの?」

梓「はい。ここからだと、バス使わないとですけど」

どうします、とあずにゃんが目で窺います

唯「行ってみようか。気分転換にもなるよ」

梓「そうですね。じゃ、行ってみましょうか」

そこに何があるんだろう

住所だけが書かれた手紙には、他に何も書いてありませんでした

梓「まあ、二人で読んでと言われた手紙ですからね。私達に関係のある場所じゃないですか」

もしくは、関係があると思われる場所か

唯「とりあえず、行こうか。足は大丈夫?」

梓「はい。元々受験勉強で運動不足でしたから、ちょうどいいですよ」



424 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:15:37.26 ID:1FD7vy2wo

バスに乗って駅前まで

そこから徒歩で手紙の住所に向かいます

あずにゃんと二人、手をつないで歩いた先は

唯「……ここ?」

あずにゃんが手紙を読んで、そして頷きます

梓「ここですね。間違いないです」

唯「そっか」

二人で、そのビルを見上げます

唯「不動産屋さんだね」

梓「そうですね」

なんだってむぎちゃんは、私達を不動産屋さんなんかに……

唯「私、もっとラブラブ出来る場所かと思ってたよ……」

梓「真っ昼間からそんなところ行くわけないでしょ!?」

唯「え?喫茶店とか、さっき行ったじゃない」

梓「あ、喫茶店とかですか……」

唯「え、あずにゃんはどこに行くと思ってたの?」

梓「……お泊まりするところ」

唯「……えろにゃん」

梓「べ、べつにそんなんじゃありません!」

顔を真っ赤にしてそういうあずにゃんですけど

まあ、気持ちはわかります

受験終わったあとって、今まで我慢してきた分そういう気分になっちゃうよね

一年前は私もあずにゃんにお世話になったっけ

唯「今夜はいっぱい可愛がってあげるからねー。夜まで待ってね」

梓「からかわないでください!」



425 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:16:04.15 ID:1FD7vy2wo

行きますよ、とビルに向かうあずにゃん

言葉ではそう言っていますが

握る手の力が少し強くなったことには気づいてます

あずにゃんって結構むっつりだもんね

私以上かも

唯「ここで良い部屋が見つかるといいね」

梓「むぎ先輩の紹介ですから。ちょっと期待しちゃいますね」



426 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:16:30.52 ID:1FD7vy2wo

自動ドアを抜けると、普通の不動産屋さんでした

入ってきた私達を見て、カウンターの女性が笑いかけます

店員「いらっしゃいませ」

唯「あ、すみません。えっと、お部屋を探してるんですけど」

店員「はい。ではこちらにおかけください」

カウンター前の椅子に、二人並んで腰掛けます

店員「一人暮らしのお部屋をお探しですか?」

梓「いえ、二人です」

店員「あ、それは失礼いたしました」

ちらっと私達を窺う店員の女性

……まあ、無理もないよね

こんな未成年の女の子二人が一緒に暮らすなんてさ

そもそも、女の子二人が一緒に借りられる部屋すら少ないのに

店員「では同棲ですね」

唯「はい」

……ん?

同棲って

……まあ、一緒に暮らすことを同棲って言うんだよね

言葉の使い方としては間違ってないよね



428 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:17:05.53 ID:1FD7vy2wo

店員「お二人とも、学生さんですか?」

唯「あ、はい。だから、大学に近いお部屋でいい条件なのが無いかなって」

店員「学校はどちらに?」

梓「○○女子大学です」

店員「ああ、それじゃあここからも近いですね」

そう言うと、何やら分厚いファイルを取って開く店員さん

店員「御希望の条件はありますか?」

唯「えっと」

先ほど、あずにゃんと話し合った条件を伝えます

店員「1DKだと少し狭いと思いますけど……」

唯「あ、そうですかね」

梓「でもあまりお金もかけられないんですよ。だから、それくらいがちょうどいいかなって」

店員「ああ、それだったら」

ファイルのページを繰る店員さん

その指先は、何か最初から決めていたみたいに正確な動きでした

店員「2LDKでこういう物件があるんですよ」

ページを開いたまま、ファイルを私達に差し出します



430 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:20:02.75 ID:1FD7vy2wo

唯「うわ、すごく綺麗……」

梓「本当ですね……」

モデルルームの写真だから、既に品の良い家具も設置されていますが

綺麗だし広いし、日当たりも良くて部屋全体が明るい

四階くらいの部屋かな?ベランダからの眺めも最高で

まるでドラマに出てくるお部屋みたい

唯「って、私達にはちょっと高級過ぎますよー」

そりゃ、いつかはあずにゃんとこういうお部屋に住みたいなとは思いますけど

でも、今はまだ学生です

こんなお部屋の家賃なんか、とても払えません

予算よりも一桁多いんじゃないでしょうか

店員「家賃が一ヶ月二万円ですね」

唯「は!?」

梓「二万円!?」

この部屋が!?

唯「ちょ、ちょっとあずにゃん……」

梓「はい……話がうますぎますね……」

コソコソとプチ会議です

唯「なんか絶対に裏があるよね」

梓「ええ。たぶん幽霊とか……」

二人そろって、店員さんを窺います

すると、彼女は笑顔で

店員「いえ。新築ですから幽霊は出ませんよ」



431 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:20:42.67 ID:1FD7vy2wo

新築なら、尚更高いはずじゃん……

梓「あの……さすがに少し、条件が良すぎて怖いんですけど……」

おそるおそるあずにゃんが言います

そりゃそうです。私も怖いです

店員「ああ。ここは女子専用マンションなんですよ。カップル限定で」

唯「へー」

店員「そういった条件なので、ご案内出来る方々も限られておりまして」

今、カップルって言ったよね

私達、付き合ってるとか一言も言ってないよね

店員「そういった限られた物件ですから、お家賃もこれくらいで用意させて頂いてます」

梓「そういうことですか」

頷いてるけどあずにゃん

この店員さん、何かおかしいよ?

何でバレてるの?

店員「ほら、バスタブも二人で入れる大きさですし」

店員「日当たりも良好で、小さいながらもベランダも付いてます。眺めも最高です」

店員「もちろん防音も完備です。アンプ繋いでギターを弾いても音は漏れませんよ」

梓「それはいいですね。ほほう……」

だから何で私達がギター弾くの知ってるの?

防音って条件だけだよね、伝えたの?



432 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:21:06.21 ID:1FD7vy2wo

店員「安全も万全です。一階ロビーには女性警備員が常駐していますし、
   近くにはスーパーもあるから買い出しも楽ですよ」

梓「交通手段とかはどうですかね」

店員「三分ほど歩くとバス停があります。
   そこから学校まで直通のバスも出てますよ。夜でも明るいので、安全です」

梓「これは完璧ですね」

店員「部屋の家具などは付きませんが、この物件は自信を持ってお勧めしますよ」

だから都合が良すぎるんだって……

何その私達のためだけのお部屋……

唯「あの……どこかでお会いしました?」

それとなく聞いてみます

すると店員さんは

店員「お目にかかったことは無いと思いますよ。
   平沢様みたいな可愛い人なら忘れるわけはありませんから」

唯「そうですか。すみません、変なこと聞いて。えへへ」

名前までバレてるとか

ここに入ってから名字なんて言ってないよ

梓「良かったですねー、唯先輩。可愛いって。綺麗な人に言われちゃいましたねー」

あずにゃんはあずにゃんで何か拗ねてるし

違うよ勘違いしないでよ

私が好きなのはあずにゃんだけだから、妬かないでよ

っていうか少し冷静になってよ



433 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:21:33.48 ID:1FD7vy2wo

店員「それに、マンションの二階は談話室もありまして。住人同士の憩いの場としても利用出来ますよ」

何だか店員さんが猛プッシュしてくるこのお部屋

……なんだろう、何故そんなに必死なんだろう

……むぎちゃんの紹介、か

となると、私達だけじゃなくて――

唯「ちなみにこのマンション、何組募集してるんですか?」

店員「四組ですね。五階立ての五部屋で、一部屋は談話室になっております」

唯「あ、そうですか」

あー、わかった

そういうことか

梓「そういえば、ご近所付き合いもこなさないといけないんですよね」

ふむ、と考え込むあずにゃん

店員「大丈夫ですよ。皆さんいい人ですから」

唯「っていうか友達だからね。ご近所さん」

私が呟いた瞬間、店員さんの肩がびくっと震えました

梓「え?」

私を見るあずにゃん

店員「……バレてます?」

唯「そうですね」

瞬間、店員さんが破顔しました

店員「すみません。お嬢様が是非と」

唯「やっぱり……」



434 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:22:01.53 ID:1FD7vy2wo

通りで話がうますぎると思いました

梓「お嬢様……?」

失礼しますね、と言って店員さんは側の電話に向かい、何かを話していました

しばらくして、受話器を片手に

店員「お嬢様からです」

受話器を受け取って

紬『あ、唯ちゃん?』

唯「むぎちゃん。こんにちわー」

あずにゃんに口元だけで「むぎちゃんから」と伝えます

紬『ごめんなさいね。驚いた?』

唯「驚いたよー。これ、むぎちゃんが?」

紬『うん。唯ちゃん達がお部屋探ししてたから、私もちょっと色々動いてみたの』

唯「それは助かるけど。でもいいの?二万円とか……」

紬『ああ、それはいいわよ。管理人は私だもの』

唯「へ?」

紬『父に相談したの。友達が部屋を探してるから、何か安いとこないかって』

唯「うん」

紬『そうしたら、女性向けのマンション始めるから、そこを管理してみなさいって言われて』

唯「スケール大きいね……」

紬『勉強になるからってね。家賃とかも父の了解済みだから心配しないで』

唯「そっか。ありがとうね」

紬『ううん。――それに、父もありがとうと言ってたわ』



435 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:22:43.46 ID:1FD7vy2wo

唯「へ?何かしたっけ」

紬『軽音部に誘ってくれて。それで、大学まで同じにしてくれて。友達になってくれてありがとうって』

唯「な、なんか照れるね!改まって言われると」

紬『本当に嬉しかったのよ。同じ大学に行こうってみんなが言ってくれて。だから、これは恩返しかな』

唯「恩返しなんて、そんな。私達は、みんな一緒に居たいもん」

紬『気に入ってくれた?お部屋』

唯「うん。最高だったよ」

紬『そ、それじゃ……!』

唯「うん。ここに決める。あずにゃんも」

ちらっとあずにゃんに目を向けます

あずにゃんは口元だけで「おっけーです」と言っていました

唯「あずにゃんも、ここがいいって」

紬『良かった。恋人同士のお部屋探しだから、少し遠慮してたの。自分達で色々決めたいだろうし……』

唯「二人で色々探し回ったんだけど、なかなか見つからなくて。だから、助かったよ」

紬『本当に良かった……』

唯「憂と和ちゃんもここにするんでしょ?」

紬『うん。二人はもう昨日、ここに決めたって』

唯「むぎちゃんも一緒だよね?」

紬『うん。その……同棲するって言うために、今さわちゃんと私の実家に居るの』

唯「え!?あ、ごめん、邪魔しちゃった!?」

紬『ううん。大丈夫よ。今はもう私もさわちゃんも私の部屋に上がっちゃったし』

唯「ど、どうだった?オッケーしてくれた……?」



436 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:23:07.08 ID:1FD7vy2wo

紬『元々知ってたらしいの。だから、順調だったわ。……さわちゃんは、なんか緊張し過ぎたらしくて』

唯「……」

紬『私のベッドで寝てる』

ほっとしました

どうやら、むぎちゃんも両親の了解が取れたようです

唯「良かったね。おめでとう、むぎちゃん!」

紬『ありがとう、唯ちゃん。――で、お部屋はどうする?明日にでも入れるけど』

唯「んー。家具も選ばなきゃいけないし、三日後くらいじゃないかな」

紬『わかったわ。じゃあ一応、お部屋だけは見ておいてね。頼んでおくから』

唯「うん。わかった」

紬『澪ちゃん達も今そっちに向かってるみたいだから』

唯「あ、そうなの?」

やっぱり澪ちゃん達も良い部屋見つからなかったんだ

唯「じゃあ、澪ちゃん達もここに決めると思うから。だから、四人でお部屋見に行くよ」

紬『……いいなぁ。私も行きたい』

唯「待ってようか?」

紬『……さわちゃんが寝てるから、やっぱり遠慮するわ』

柔らかく微笑むむぎちゃんの顔が目に浮かびました

紬『じゃあ、細かいことは店員さんに聞いてね。――あ、それとね』

唯「ん?」

紬『唯ちゃん達を対応したそのお姉さん。桜高のOGよ。――そこで結婚式も挙げてる』

唯「え、それじゃ」

紬『あれからずっと幸せだって。本当みたいね、伝説』

唯「えへへ」

じゃあまたね、と言って電話は切れました



437 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:23:41.82 ID:1FD7vy2wo

受話器を店員さんに返して、あずにゃんの隣に戻ります

梓「むぎ先輩のおかげですか?」

唯「うん。手配してくれたみたい」

梓「ありがたいですね」

唯「むぎちゃんも、ありがとうって言ってたよ」

梓「え?」

あずにゃんも同じ大学ってこと、むぎちゃんも嬉しいんだよ

店員「で、どうされますか?」

笑顔で聞いてくる先輩

あずにゃんを見て、あずにゃんが頷いて

唯「はい。ここにします!」



438 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:24:08.05 ID:1FD7vy2wo

書類を受け取って席を立つと同時に、自動ドアが開きました

澪「あれ?」

律「唯と梓じゃん」

入ってきたのは澪ちゃんとりっちゃん

澪ちゃんの手には、私達がもらったのと同じ柄の手紙

梓「こんにちわ」

唯「ラブラブだねー、二人とも」

ぱっと、繋いでいた手を離す二人

もう、遠慮しなくていいのに

澪「それよりも、どうしてここに?」

唯「ここでお部屋決めたんだよ」

梓「はい。良いお部屋が見つかりまして」

律「え、もしかして私達、間に合わなかった?」

残念そうに言うりっちゃん

大丈夫だよ。もう二人は予約済みだし

唯「店員さん。私達、二人と一緒にお部屋を見に行きますから待っててもいいですか?」

店員「はい。ではそこのテーブル席でお待ちください。今お茶を煎れますね」

澪「え?どういうこと?」

律「え?」

唯「たぶんここで決まるよ。待ってるからね」

梓「最高のお部屋ですよ」

私達と入れ替わりにカウンター席に座る二人

テーブル席に腰掛けた私達は、そんな二人の背中を眺めながらお茶を飲みます

唯「ねえ、あずにゃん」



441 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:27:43.86 ID:1FD7vy2wo

梓「はい?」

唯「お部屋の下見終わったらさ。そのまま家具を買いに行かない?」

梓「いいですけど……でも唯先輩疲れてるんじゃないですか?」

歩き回ってたし、と私の顔を覗き込むあずにゃん

唯「大丈夫だよ。お部屋は明日にでも入れるっていうから。早くあずにゃんと暮らしたい」

梓「そ、そういうことなら。そうですね。家具、買いに行きましょうか」

唯「えへへ。お金、一年バイトして結構貯まったんだよ?」

梓「あ、そのことなんですけど。
  私の親もお金出すって言ってますし、私も今までのお年玉貯金がありますから」

唯「いいよいいよ。この日のために頑張って貯めたんだからさ」

でも、と不満気なあずにゃん

勿体ないよ。あずにゃんのお年玉貯金なんて

家具代まで、お義父さんにまで頼るわけにもいかないし

唯「あずにゃんは、お部屋に合いそうな家具を選んでよ。私、そういうセンス無いしさ」

梓「……まあ、そこら辺はお店に行ってから考えましょうか」

微笑むあずにゃんに、どこかくすぐったくなります

お部屋も決まって、家具を買いに行って

新しい生活がどんどん形になっていきます

目の前で、柔らかく微笑む女の子と

大好きな女の子と共に歩く、最初の一歩

唯「幸せにするからね、あずにゃん」

梓「私だって、唯先輩を幸せにしてみせます」

えへへ、と二人で笑います

あ、そうだ、と

あずにゃんが呟いて、私にこっそり耳打ちしました

唯「どうしたの?」

梓「家具買いに行ったら、写真立て買いましょうよ」

少しだけ考えて、その意味もわかって

唯「そうだね。えへへ」

梓「はい」

唯「どっちも大事な思い出だから」

だから、写真立てを二つ、あずにゃんと選ぼう


終わり




443 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/02/27(月) 06:30:54.45 ID:IAPE6psb0

乙。よかったわ
いきなり進学後に飛んだりしてどうなんだそことも思ったが
特に問題ないのかな



444 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/02/27(月) 06:34:21.27 ID:cls21YI5o

乙!
各々で同棲しつつ、一つ屋根の下でみんなで暮らすっていいな
幸せで楽しい生活が目に浮かぶわ





445 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2012/02/27(月) 06:35:24.76 ID:1FD7vy2wo

>>443
エピローグってサブタイトルを付ければ良かったと思いました
確かにわかりづらいです
すみません




446 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県):2012/02/27(月) 06:36:09.70 ID:tQT0bhTDo

改めてお疲れ様でした



462 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/02/27(月) 06:54:34.07 ID:0YpVVeEj0

お疲れ様でしたノシ



463 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2012/02/27(月) 06:54:36.35 ID:cls21YI5o

最後に乙!
俺も睡魔が限界だ・・・おやすみなさい



465 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/02/27(月) 08:10:35.62 ID:d8IR6RmIO

いちょつ!
久々にいいもん読ませてもらいました
胃がキリキリして壁の穴が増えまくったけど後悔はしてない
次回作にも超期待



466 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方):2012/02/27(月) 08:27:35.85 ID:4WtPJDKu0

偶然ゆいあずを見つけてしまうとは
これもまた運命か1乙



468 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/02/27(月) 08:43:02.79 ID:JjNPVCa10

1乙!
昨日のVIPからずっと見てたよ
久々にssで涙が止まらなかったよ いい出会いをありがとう
俺は紬さわ主観を期待してるよ 時間かかっても気長に待ってるからなぁ



471 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/02/27(月) 19:38:16.48 ID:gsc78pxDo

お疲れ様!
普通に楽しかった!



472 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2012/02/27(月) 23:04:51.78 ID:JzaUkk6vo

乙です!



477 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/02/28(火) 02:38:40.37 ID:F7kRiAQto

VIPから楽しみにしてたぜ
色々あっても各々幸せENDで良かった~
いいものを読ませてもらったよ
乙!!!



479 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東):2012/02/28(火) 04:01:40.09 ID:FU56EuuAO

おおお、無事に完結したのか!
大作乙です。



480 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県):2012/02/29(水) 09:22:34.30 ID:MrCX2faho

乙。これは良かった






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タイトル:
NO:6238 [ 2012/04/08 17:29 ] [ 編集 ]

お疲れ様です
すごい良かった
やっぱゆいあずは最高

タイトル:
NO:6240 [ 2012/04/09 02:20 ] [ 編集 ]

良いssだ

タイトル:
NO:6481 [ 2012/05/11 08:11 ] [ 編集 ]

幸せにしてくれてありがとう!
本当に乙!超乙!
神SSだったよ(・ω・´)

タイトル:承認待ちコメント
NO:6640 [ 2012/06/30 03:19 ] [ 編集 ]

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